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マイ・ラスト・ソング

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2004年 11月 16日

師父田中小実昌を偲ぶ

◆【読書】「田中小実昌エッセイ・コレクション」1及び3巻  筑摩文庫
 テーマ毎に6巻出ており、初単行本化である。風の吹くまま飄々と、あちこちに書いていたもので、生前の著者自身も忘れていたものじゃないか。単行本化など後の計算を考える人でもないし。ほっておけば散逸するものをよく掘り出したものだ。筑摩書房のいい仕事である、グッジョブ。そういえば大好きな殿山泰司の本も筑摩文庫に入っている。両氏とも、椎名誠に先立つ昭和軽薄体あるいは冗舌体の先駆者である。いやコミマサ氏は冗舌でもないか、なんと云えばいいのだろう。師父田中小実昌を偲ぶ_b0036803_22381391.jpg
 いちおう小説家兼翻訳者ということになっているが、ストリップ小屋やテキヤ見習い、米進駐軍勤務などの職業遍歴もあり、バス旅行者あるいはただの酔っ払いなどいろんな顔のある人だった。本質はシャイな教養人だったのではないか。私的にはハヤカワ・ミステリの軽ハードボイルドシリーズの翻訳で親しませていただいた。カーター・ブラウンの薄っぺらい、読めば直ぐ忘れてしまうような読み飛ばしミステリが懐かしい。一時はかなりの翻訳点数だったように覚えている。それがほとんど再刊されないものばかりというのも、いかにもこの人らしい。翻訳には定評があり、進駐軍に勤めた以外特別の英語歴がないので、よほど語学のセンスがあったのだろう。他人と障壁をつくらない人柄と外国語の習得才能は通じているかもしれない。
 以下は3巻映画編の見出し。
  ・岩下志麻のブラジャーの位置
  ・昼間は映画夜は酒ほかになにかすることがあるの
こんな題でエッセイ書くひとってそういない。B級道の達人という見方もあろうが、小生の心のうちではA級だ。小林秀雄と同格である。あと4冊ある。なかでもバスでふらふら旅して回るはなしが愉しみだ。

by chaotzu | 2004-11-16 22:46 | 読書


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