2005年 01月 18日
◆越前敏弥訳 創元推理文庫 久々の読書。前評判はあまりよくなかったが意外と面白かった。過去の一族の謎に加えて歴史上の謎と物語に二重底の仕掛けをしており、作者が新機軸を図ったようだ(続編も可能なようにしているのであるいは三番底もありうるかもしれない)。最初の謎は上巻で種明かしされてしまうが、そこから登場人物の本性がむき出しになって俄然面白くなる。ラストも勧善懲悪の観点からは物足りぬかもしれぬが、一応はハッピーエンドで締めている。 ◆しかし、ヒーロー、ヒロインは相変わらずお人よしというかアホ丸出しであって、これはもうゴダードならではとしかいいようがない(笑)。なにせヒロインは悪玉までも好印象を抱くぐらい「どこまでも人を信用してしまう」といった性格設定なのである。ヒーローも不肖の兄貴に尽くすとことんお人よしである。主人公の性格描写に深みがないということなのだろうが、甘い云い方をすれば、表向きの主役は物語を動かすために必要な狂言回しであって、実際の主役は別の登場人物と理解したほうが分かりやすいかも知れない。本作の場合は、ヒロインの義理の伯母とその旧友である元スペイン戦争義勇兵の2人である。とにかく読んでいて、あ~あ、引っ掛かるぞと思えば期待たがわずその通りになる、そしてそれを助けるのは前述した真の主役あるい偶然といったみえみえの展開が随所にみられる。これはもうゴダード節というか、ミステリ界のハーレクイン・ロマンスといってもいいかもしれない。だからやめられないのかな(苦笑)。
by chaotzu
| 2005-01-18 23:59
| 読書
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