2005年 02月 09日
◆9作目となる本作は文春文庫。4社(扶桑社、創元推理、講談社、文春)から文庫が出ている海外作家は珍しく、一時の人気がうかがえる。 本作の主人公ハリー・バーネットは社会から落伍したダメ人間であって、ガソリンスタンドのしがないパート従業員であるが、人間的にはもっとも共感されるキャラクターであり、ゴダードが造形した作中人物では珍しい成功例だろう。そのせいか4作目「蒼穹のかなたへ」につづく再登場である。 それにしても、ゴダードの描く人物像はいつもチグハグである。社会的地位もあって常識もあるだろう人間がおよそ賢明とはいえないアホなことばかりしでかす一方で、ダメ男の烙印をつけられたハリーはというと、実にまっとうに行動する。突然存在を知らされた息子のために奮闘するハリーの姿には胸をうつものがあって、小説の興趣として途中までは上々だったが、惜しむらくは結末が弱い。SF趣向というか超能力の存在をほのめかしているものの、それがすっかり空回りして、なんのこっちゃという終わり方になってしまいまことに残念。
by chaotzu
| 2005-02-09 23:59
| 読書
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