2005年 02月 27日
◆新潮文庫、中川聖訳。かつて白帯文庫の栄光いまいずこの惨状がつづく新潮海外文庫において希少価値の掘り出し作家、ダグラス・ケネデイの二作目。それにしてもすごい題名だ。 700ベージの大部だが一気に読ませる。スティーヴン・ハンターの企業戦士版とみればよいかもしれない。戦場はホット・スブリングズやミシシッピではなく、ニューヨーク・マンハッタン、武器はウィンチェスターやスミス&ウェッソンじゃなくもっぱら弁舌と計略である。出版業界における広告取りの内幕話や再就職支援会社の様子も興味深い。 日本においてこの手の小説があってもおかしくはないと思う、事実かつての森村誠一が手がけていた分野であるが、もう洒落にならないのかもしれない。 ◆それにしても、ニューヨークでホワイト・カラーを勤めるというのはたいへんなことだ。高給を得るチャンスがあるといっても、ブレイクファストやランチの時間までも仕事に充て、常にインサイダーや抜け駆けに用心しなければならない。片時も気が抜けない、その割りに生産的なところがない。どこか狂っており、作者もそれを十分承知しているのだろう。 万事アメリカ式のやり方が最新で合理的との思い込み(あるいは錯覚)があるが、実は大間違いであることを教えてくれる小説でもある。
by chaotzu
| 2005-02-27 23:59
| 読書
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