2005年 03月 11日
◆文芸春秋刊 池田真紀子訳。全身麻痺の車椅子探偵リンカーン・ライムシリーズの第四作目、中国人蛇頭“ゴースト”との闘いを描く。 これまでジェットコースター・ノヴェルと評されるディーヴァー作品、本作では若干趣向を変えたようで、おなじみのどんでんがえしも少なく、その分落ち着いて読める。 ただし、“ディーヴァーの法則”は本作でも健在であって、もはやこの作家に本当の意味の意外性を求めても無理な気がせぬでもない(笑)。 法則その1 怪しくみえる奴はたいてい善玉(ナイスガイ)である。 法則その2 いちばん無害にみえる人物が、実は悪い奴(犯人)である。 法則その3 探偵は土壇場ぎりぎりになってやっと啓示を得る(もっと早く気づけよ)。 したがって、小説の興趣は、登場人物のキャラ等サイド・ストーリー如何、本作では文化大革命の落とし子といえる蛇頭、天安門事件で大学の職場をおわれた父親と現代的な息子の確執、アメリカ流拝金主義に染まった事業家、ウィグル人の殺し屋などさまざまな中国人が登場する。中国の故事、風水、囲碁なども取り上げており、なかなかよく調べている。 なかでも、単身蛇頭を追って、密航船に乗り込む中国人刑事のソニー・リーが出色のキャラクターである(これほど仕事熱心な警察官が中国にいるのかなという疑問は棚上げする)。ライムの鑑識捜査とは対照的な中国流捜査でゴーストに迫っていき、事実先に辿りつくのである~以下略。 気難しいところのあるライムとも打ち解けて、囲碁を教えるほどになる。本作における実質主人公かもしれない。 ◆原題はザ・ストーン・モンキー、孫悟空のことである。作中で前記のリー刑事がライムのことを孫悟空に喩えている。 「あんたがこうなったのは運命だよ。何かの目的があってこうなったんだ。こうなったおかげで刑事の才能が最高に引き出されてるのかもしれない。あんたの人生はいまのままでバランスがとれてるんだよ」
by chaotzu
| 2005-03-11 21:24
| 読書
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