マイ・ラスト・ソング

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2005年 04月 25日

【NHK・BS】「この素晴らしき世界」 生存のための究極の選択

◆2000年チェコ映画、チェコの映画はこれでふたつめ。「コーリャ愛のプラハ」以来である。ふだん馴染みの薄い国の映画はハズレが少ないという。それだけ高いハードルを越えて日本にやってきたということだろうが、本作もなかなかの傑作であった。
b0036803_21103125.jpg◆ナチス占領下で、強制収容所脱走のユダヤ人をかくまった夫婦とその周囲の人々のドラマ。もし露見すれば、破滅必至であるので、中盤はハラハラどきどきの連続。同じチェコ人にも秘密は明かせない。主人公ではないが「もうやってられんよ」という緊迫場面が何度もある。そして、いよいよ危ないというとき、生きのびるためのつらい選択をする。
◆この映画のいいところは、チェコ人のかっこ悪いところもきちんと描いていることだ。かつて隣人であったユダヤ人「ダビド」が助けを求めているのに、保身のため大声で暴露しようとするチェコ人、それが解放後はレジスタンスの幹部(?)におさまっている。もっとも、根は善人のようで当のユダヤ人と再会したとたんに、きまり悪そうに悄然としている。主人公「ヨゼフ」もヒーロー・タイプではなく、この映画で終始一貫善人といえるのは、主人公の妻「マリエ」ぐらいである。
また、ドイツ人も単純な悪玉には描いていない。とくにチェコ生まれのドイツ人「ホルスト」の屈折にはもの哀しいものがある。後から見直すと、冒頭の短い挿話で手際よく登場人物の事情背景を伝えている。
◆これまで、ユダヤ人ホロコーストはもっぱらナチス・ドイツの罪とされてきた。実際のところ、東欧でナチスに支配された国の人たちはこれにどう関与していたのだろう。現実にアウシュビッツやトレブリンカなど著名なユダヤ人収容所はポーランドにある。ポーランド人のみんながナチスに脅かされていやいや「協力」したのか、はたして悪者はナチスだけだったのかという疑問である。
正直云って、被占領国民の一部に、ユダヤ人への人種差別意識あるいは嫉妬心があればこそ、これだけ悲惨なホロコーストになったのではないかという疑念をどうしても拭えない。程度の差こそあれ、チェコ人でも同じであろう。ただ、この映画ではそれを糾弾しているのではない。
◆ラスト、生まれてきた赤ん坊にチェコ人、ドイツ人、ユダヤ人、ロシア人がそろってほほえみかけるシーンこそ、映画がいちばん訴えたいことだろう。
 過去の歴史に学びそれを直視しなければならない。そして民族の確執や葛藤は、それを乗り越えていかねばならない、生まれ出ずる赤ん坊のために。
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by chaotzu | 2005-04-25 21:13 | 外国映画


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