2005年 04月 25日
◆朝日新聞社刊「あと千回の晩飯」(1997年) 1994年に朝日新聞に掲載(週一?)されたエッセーをまとめたもの。タイトルがとりわけすばらしい。あと3年ほどの余命見込みについて、これほど分かりやすい言い回しはなかなかない。現実は連載開始時から7年ばかり生きており、「あと二千回の晩飯」になったわけだが、これも作者らしい(笑)。 中島らもの「明るい悩み相談室」とならぶ朝日新聞の名連載であった(しかし、ご両人ともすでに故人である)。 ◆新聞でも読んでいたが、あらためて読むとやっぱり面白い。老人の大氾濫予防法や「アル中ハイマー」、武者小路実篤晩年の文章、尿瓶の黄金水をかかげて夜明けの乾杯シーンなど、人を喰った風太郎節にもう抱腹である。 もしかすると、朝日の文芸担当は作者独特の死生観がもう少し穏やかに展開されるものと期待していたのだろうか、間違っても風太郎大先生にそんな期待をすべきでないよ(笑)。最初の頃は話の逸走に嘆息して、はげしく後悔したかもしれないが、途中から、パーキンソン病や糖尿病の発覚により、病人もの主体に落ち着いたのでさぞやひと安心したのではないかといった内容である。 ◆角川春樹事務所「コレデオシマイ。」(1996年) エッセーではなくて、風太郎先生が自由にしゃべったものを編集したもの、タイトルは先生が絶賛する勝海舟の辞世のことばである。もう好き放題の語りであり、ここは章ごとのフレーズを紹介すれば十分だろう。 <酒もたばこもやめて長生きしても仕方ない。> <僕の小説にはすべて、女は美人しか登場しない。> <やりたくないことはやらないのが、僕の人生のモットーかな。> ◆別のはなし たいへんな事故がおきてしまった。JR福知山線尼崎駅近くの脱線事故、ショッキングな映像である。 山田風太郎曰く「人生の大事は、大半必然に来る。それなのに、人生の最大事たる死は、大半偶然に来る」 それであっても、突然の死はなんともいたましい。 犠牲者の方はほんとうにお気の毒である。当方はネットで囀り散らして、なお生きのびており、なんだか申しわけないことだ。謹んでご冥福をお祈りしたい。
by chaotzu
| 2005-04-25 21:30
| 読書
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