マイ・ラスト・ソング

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2005年 04月 30日

【映画】 「海を飛ぶ夢」 生きることは権利か義務か

◆2004年スペイン=フランス合作。
 恥ずかしながら、シネコンなるものに生れて初めて行った。座席の座り心地もいい、前列の観客が気にならない勾配なので、たっぷりのワイド・スクリーンという家庭では絶対に不可能なぜいたくを堪能する。近場では若い女性がビールとポテトチップを持ち込んで臨戦態勢である。ものすごくうらやましい。けど、GWに若い人が独りでこの手の映画を観るってのもな……、いやはや大きなお世話というもの、そういう自分はどうなんだ(汗)。b0036803_22134466.jpg
◆さて、尊厳死がテーマの映画である。この数年来、自分も考え続けてきたことである。ずっと昔、錯乱状態のまま逝った父親のことも思いだす。自力生活ができなくなり苦痛が増すのみとなれば、もはや死せる魂であり、人間の尊厳もなにもない。ただ思索はそこから無限ループに入ってしまい、なかなか結論がでない。なぜかというと、尊厳死はひとに手伝ってもらわねばならないからだ。それが重石になる。それで、この映画も観るか観まいか迷ったところで、あんまり悲惨だったらかえって落ち込んでしまう。まあいいや、みんないつかは死ぬんだと割り切ってみた。センチメンタルなお涙頂戴映画の心配は杞憂でした。
◆26年間以上寝たきりで尊厳死を決意した主人公、世話になりつづけで涙の隠し方は上手になったと述懐する。だけど家族はみんな献身的に世話している。近所の友人も見舞ってくれる、人権団体の女性(太目の久本雅美風)も支援する、重病を抱えた女性弁護士(倍賞美津子似)は詩集の出版に尽力する、見知らぬシングル・マザー(誰かに似てるんだが)が心を寄せてくる、など、“スーパー介護チーム”に囲まれた主人公の身辺はけっこうにぎわっている。はっきりいってモテ男なのである。
 だけど、そんな設定じゃないと映画にならないのだろう。ただでさえ深刻度へヴィー級のテーマである。邪慳な家族がいたり、実際の細々した介護の現実に焦点をあてれば、それこそ尊厳死の是非や心の交流どころではなくなってしまう。
もっとも、この映画では下の世話とか床ずれ防止、入浴の介助など日常介護の一端もさりげなく挿入しているし、ただ自己満足したいがための見舞いもとりあげている。万事抜かりなく、よくできた映画に仕上げているのだ。そしてなにより「海を飛ぶ夢」の鳥瞰シーンが素晴らしい。
 この監督さんはまだ若いそうだが、舌をまくほど計算づくで達者である(悪口ではない、為念)。
 そしてラストは(以下ネタバレ注)








ビデオ・カメラをセットして、青酸カリ入りの水をストローで飲み干すという“リアル自殺”シーンである。「共犯問題」をクリアするためのやり方とはいえ、ここはちょっとやり過ぎかも知れない。ただ、俳優の演技は、もしかすると現実の映像を観たかもしれないと思わせるほどの迫真さである。
◆あと、自殺を禁止しているカトリックに対する批判も痛烈である。ふだん無口な義姉が車椅子の「偽善」神父を面罵するシーン、ある意味でスペイン社会の成熟度を示しているのかもしれません。
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by chaotzu | 2005-04-30 22:18 | 外国映画


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