2005年 05月 14日

【DVD】「グッバイ、レーニン」 東西ドイツ統一の光と影

◆2003年製作、ドイツの映画となるとあまり記憶にない。封切時から前評判が高く、かねて観たかった映画である。
 1989年11月のベルリンの壁崩壊、群衆の歓呼が沸きかえるブランデンブルグ門の映像を衛星中継で目の当たりにして、かなりハイな気分になった。日本人でさえそうだから、当事者たるドイツ人は東西問わずもっと高揚したはずである。だけど、その幸せムードもあまり長続きしない。b0036803_23182671.jpg
 主人公の東ベルリン青年、壁崩壊前はデモに参加するような非共産青年であったが、東西統一をひかえて急速に浸透する資本主義に馴染めぬものを感じる一方である。人をかりたてる競争主義、そして物質万能主義、もっとゆったりしたテンポの社会であってもいいのではないか。そんな気持ちが母親に対する献身的な介護に向かわせる。東独のピクルス瓶を探す姿に思わず目頭が熱くなる。
◆1990年10月の東西ドイツ統合、いま現在に至って、おそらく多くのドイツ人が統一の大義こそ否定しないものの、それで得た果実については釈然としないものを感じているはずだ。主人公とその友人(映画狂の西ドイツ青年!)が母親のため偽のTVニュースまででっちあげる。やがて、つじつまあわせのため、どんどん現実と乖離してとんでもない展開になっていく。西と東あべこべになったブラック・ユーモアが、ドイツ国内で大受けするが、これはドイツ人の諧謔なのだろうか。
◆ただし、物語はコメデイにとどまらない。そこからセカンド・ストーリーさらにサード・ストーリーが派生する。はたして母親は息子の偽計を知っていたのか。そこは観た人の想像に委ねられる。また、母親がずっと別れていた夫と再会するシーン、2人の間にどんな会話が交わされたのか。それはまた別の話ということで省略される。これも観た人それぞれのドラマになるだろう。
さらに、永年にわたる東西ドイツ分断の悲劇そして統合の労苦など、ドイツ人がずっと背負い続けている負担のたいへんさ。物語の奥行きの深さを意識させられる。
◆名シーン、まずヘリコプターで運び去られる巨大なレーニン像。本作の象徴的なシーンであって、フェリーニ映画のキリスト像運搬シーンを思わず連想する。意識していること間違いない。そして、真っ赤なコカコーラの広告幕、共産主義がなくなっても赤い旗が依然君臨するという皮肉。
[PR]

by chaotzu | 2005-05-14 23:35 | 外国映画


<< お金が大事だよ~がん患者の本音      【DVD】 「人生は、ときどき... >>