マイ・ラスト・ソング

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2005年 05月 21日

【DVD】 「みなさん、さようなら」 なんとも贅沢な死に方

◆2003年カナダ=フランス合作映画、カナダ・ケベック州のモントリオールが舞台である。フランス語のカナダ映画をみるのはおそらくはじめて。
原題は「蛮族の侵入」、なんともすごいタイトルだが、9.11.同時テロに見舞われたアメリカ「帝国」の行く末、そして歴史学教授を侵すガン細胞のダブル・ミーニングだろうか。
◆アカデミー外国語映画賞は、ここ2年連続で安楽死(尊厳死)を取り上げた作品が受賞している。直近の2004年度がスペインの「海を飛ぶ夢」、そして2003年が本作である。ただし、切り口はだいぶ違う。本作品のほう、あまり暗いイメージはない。それどころかコメデイに分類されるぐらいである。以下ネタバレ注
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◆不遜な表現だが、もうサイコーの死に方である。息子の金力で最上級の病室が用意される(患者が廊下にまで溢れているモントリオールの病院のひどさ!)。ヤミで入手したヘロインで末期ガンの痛みはない。そして献身的に尽くす本妻と息子のみならず、学者仲間の友人やかつての愛人2人まで、最期の日々を付き合ってくれるのだ。はっきり云ってオトコの本懐ではないか(汗)。
最期は湖畔の別荘でひとりづつお別れの言葉を交わす、遠く洋上の娘からもお別れのメッセージが届くといった具合である。もう女性といっぱい愛し合って、たくさんのワインを呑んで、そして好き放題なことを云って、「みなさん、さようなら」である。なんだかむかつくなあ、いやほんま(笑)。
 ボケ老人になって、妻や子の見分けがつかなくなる。排泄物はたれ流し、ちょっと目をはなすと近所を徘徊、それでも食欲だけは旺盛で、家族全員から疎まれている、とうとう奥さんが先に逝っちゃったなんて悲惨な生き方に比べると、よほど恵まれているのではなかろうか。
◆脚本も書いた監督さんの意図がよく分からない。9.11.同時テロ事件を踏まえた文明論もトッピングしたのが新味だったのだろうか。あるいはフランス人の視点によるアメリカ文明の批判なのか。だけど、病人の至れり尽くせりの終末をお膳立てしたのは息子の札束のおかげなのだ。このほかキリスト教との係りもあるが、宗教批判かどうかよく分からない。
 救いは息子に雇われて病人に付き添いする麻薬中毒の娘の存在。大量のヘロインを病人に投与する役回りになるが、ラストは人生の再生に向けて歩みはじめている。息子の婚約者よりはるかに魅力的な存在でありました。
◆印象に残るセリフ〰作中、病人の演説であるが、実はこれが云いたかったのかもしれない。
  「恐ろしいもんか、みんなが思うほど20世紀は血なまぐさくない。
  戦争で1億人死んだだけだ。
  ロシアの収容所で1000万人、中国の収容所ではおそらく2000万人。
  あわせて、わずか1億3000万人だ。
  16世紀のスペインとポルトガルは、ガス室も爆弾も使わずに
  1億5000万人の先住民を消滅させた
  1億5000万人をオノで叩き殺したんだ。
  教会が支援したとはいえ、よくやるもんだ。
  北米では、オランダ、イギリス、フランス、アメリカが
  それぞれ5000万人の先住民を殺している。合計で2億人だ。
  人類史上最大の殺戮がこの大陸で行われた。
  だが、ホロコースト記念館ひとつない。」
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by chaotzu | 2005-05-21 20:58 | 外国映画


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