2005年 05月 26日
◆講談社文庫、単行本初刊は1991年3月。 題名からグッドテイストな都会小説集かと思っていたが、とんでもない。壮絶なアル中オトコのはなしだった(苦笑)。 おそらく作者自身の体験が投影されているのだろう。連日9時間もの飲酒、黄疸症状で入院前の半月に摂取したのはウイスキーとはちみつとミルクの「流動食」だけ、固形物は喉をとおらない。それでも入院当日にワンカップ2杯ひっかける。おしっこの色はもうコーラ色といった惨状である。よほどもともとの内臓が頑丈だったんだろう、たいていの人間ならば、とっくにパンクしている。 あの「明るい悩み相談室」の室長さん、実際は地獄絵図だったんだな。 ◆それでも、この人の真骨頂は過剰なまでのサービス精神だろう。どんな悲惨な状態になってもギャグを繰り出さずにはいられない。トイレの蓄尿袋に水道水を流し込んでおしっこのみかけをごまかす、体温計を炙って 41度の体温で看護婦を驚かせる。いちおう小説であるが、この作者の場合、ほんとうにやりかねないなと思わせるものがある。だけど結局は、その過剰なサービス精神ゆえにアル中になって、あげく寿命を縮めてしまったんだろうな(涙)。 ◆らもギャグ 「小学生のとき給食のおばさんがおれに嘘を教えたんだ。白い牛は白いミルクを出す、黒牛はコーヒーを出す、まだらの牛が出すのがコーヒー牛乳だってな。じゃあフルーツ牛乳はどんな牛が出してるんだ。」 ◆オススメは巻末の山田風太郎との対談。「荒唐無稽に命かけます!」 元祖アル中ハイマーとその後継者の対談であるが、そのご両名、いまは故人である、合掌。
by chaotzu
| 2005-05-26 23:59
| 読書
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