マイ・ラスト・ソング

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2005年 06月 04日

【DVD】 「スパイ・ゾルゲ」 もともと地上には道はない

◆2003年日本映画、篠田正浩監督畢生の大作にして、最後の監督作品のふれこみ。
 もう亡くなられたが、尾崎秀樹という評論家がいて、大衆文芸の評論で一家をなしたひとだった。一時、エンターティメント系読み物の解説はこの人の寡占状態であり、いわば文庫本あとがきライター界の頂点をきわめたような存在だった。
この映画で本木雅弘演じる尾崎秀実はその実兄であるが、戦時中はスパイの肉親ということで相当嫌な目に遭ったようだ。だから戦後、評論のかたわら、ゾルゲ=尾崎事件の紹介にもまい進する。執念といっていい。ソルゲ事件が広く世上に知られているのはこの人の功績が大だろう。
 ということで、かねて観ようと思いつつ、3時間の長尺についつい敬遠していた映画であった。b0036803_8405534.jpg
◆実際に観たら、ゾルゲや尾崎秀実は狂言回し的な役どころであって、主役は「敗戦までの昭和史」そのものである。平成17年のただ今でも、「昭和史」は取扱注意の微妙なテーマである。観る人の立場によって、思い切り評価が分かれる作品になるだろうし、世代的要素もある。
しかし、興業的にはふるわなかったかもしれないが、真正面から昭和の前半史を取り上げたその勇気はおおいに賞賛したい。個人的には十分面白かった。
◆上海の日蓮宗僧侶殺害事件、盧溝橋事件、農村部の疲弊と2.26事件、近衛内閣、日独伊防共協定、仏印進駐、ABCD包囲網、真珠湾攻撃、……。ところどころに当時の記録フィルムも挿入される。天皇の登場するニュースは、大きな「脱帽」字幕つき、今ならば爆笑ものだろうが、当時は大真面目である。
あらためて見ると、日本があのバカげた戦争を回避できる節目がなんどかあったのである。僅か半年~2年の石油の備蓄量で宣戦する幼稚さ、あの戦艦大和や武蔵も巨大な盆栽同然になる。何も知らされない国民は悲惨なめにあい、夥しい犠牲者を生む。まさに昭和の暗黒史だ。
 もうひとつは空疎なイデオロギーなりスローガンに翻弄され斃れゆく人々の悲哀、2・26事件に激昂する昭和天皇そして「天皇陛下万歳」と叫んで銃殺される叛乱将校。ゾルゲの最後のことぱは「国際共産主義万歳」、だけどコミンテルンは冷酷さ、底知れない人間不信にあふれている。
◆本木雅弘、申しわけないがどうしても「しぶがき隊」のイメージが重なってしまう、寿司食いねぇである。アグネス・スメドレー女史もなんだか山田の邦ちゃんみたいだしな。いや、文句たれみたいだけど、ゾルゲ役のイギリス人俳優がなかなかきまっていたので、つい比べてしまうのだ。
◆後半は冗長かもしれない。とくにインターナショナルにベルリンの壁崩壊シーン、そしてイマジンとつづくラストは反則技である(笑)。とりわけイマジンは賛否両論あるだろう。だけどいい歌である。
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by chaotzu | 2005-06-04 23:59 | 日本映画


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