2005年 06月 17日

【ビデオ】 「OUT」 女性4人の人生再出発物語

◆2003年日本映画、原田美枝子&平山秀幸監督つながりでレンタル。
桐野夏生の原作は途中挫折していたので、映画のほうもパスしていた。ところがみてみると、全然別物である。原作はクライム・ノベルだが、映画のほうはコメデイ。それで正解なのだろう。だから、原作の残像をおっかけてみるとちと辛いかもしれない。b0036803_2227288.jpg
◆夜中にコンビニ等に出荷する弁当工場で働いている女4人の物語である。全員深刻な問題を抱えた境遇にあって、コメデイ仕立にでもしないとやっていけないだろうと思わせるほどである。深刻さも臨界点を突破するとかぎりなく喜劇に接近していくのだろうか。あるいは女性の「現実からの決別」という視点でみれば、「テルマ&ルイーズ」の4人版かもしれない。
・原田美枝子;元信用金庫職員のしっかり者で、仕事仲間に金貸し業もしている。だけど夫はリストラされて昼間はカプセルホテルで時間つぶし、ひとり息子は口もきかない。もう家庭崩壊状態だ。
・倍賞美津子;師匠と呼ばれてみんなから頼りにされている。エロばなしが大好き。だけど家では寝たきりの義母が待っており、その介護がたいへんである。当の義母は“クソーっ、長生きしてやるう”と云うだけで感謝のことばも吐かない。10円貯金で知床オーロラ旅行が夢。
・室井滋;唯一のひとりものであるが、ブランド中毒で中村うさぎのごとき買物病、借金の自転車操業状態でもう破産同然である。“あたしにはモノしかないのよお”
仕事ぶりもたるい。原田美枝子からバカバカと面罵されてばかりで、元ワセダ演劇部の才媛もかたなしである。だけど、そのパープリンぶりがあっているんだな。
・西田尚美;バクチ狂いかつDVという最悪夫、おなかの赤ちゃん承知で蹴ってくる夫に反撃するのが、はなしの発端。おとなしそうで意外とずぶとい性格であったりする。すぐに幼児ことばをつかう。
◆よくまあ、現在ニホンの暗いはなしばかり集めたものである。だけど、どんどん深刻になるはなしと反比例するようかのようにギャグが炸裂する。
夫を殺害した修羅場で、冷蔵庫内の賞味期限チェックをしている西田尚美、倍賞千恵子が死体をみて、“皮かぶっているねえ”“カツオのたたきだねぇ”、ブランド品を見せればすぐに転ぶ室井滋。
なかでも、4人組がカラオケ・ルームで鳩首相談するところが爆笑もので、いつの間にか歌謡ショーになっている。はじめ嫌がっていたはずの原田美枝子が“人生いろいろ”を熱唱している。西田尚美のマラカスはちゃんとガイコツ仕様である。
◆吉本の間寛平がカジノの用心棒役で登場、いつもは無口で文庫本をずっと読んでいるが、実は凶暴きわまりない。吉本でよいよいのじいさん役で売り出したのが信じられないくらいの変貌、そういえば、全部逆転の発想である。家庭のおとなしい主婦が死体解体業、DV夫に虐げられるが、その実したたかな妻、ひきこもり息子に決別する母親、そして、ラストに出てくるトラックの運ちゃんは女性でなんと吉田日出子が演じている。
◆脚本の鄭義信、シリアスからコメデイときわめて守備範囲のひろい作家であることにあらためて感心する。かなり社会の底辺をみてきたのではないか。姫路の出身であるとは、うかつにもこれまで知らなかった。
[PR]

by chaotzu | 2005-06-17 22:28 | 日本映画


<< 【DVD】 「日曜日には鼠を殺...      ノムさん流生き方 >>