2005年 06月 19日

【DVD】 「警察日記」 かくて人生はつづく……

◆1955年日活映画。日活といえは、裕次郎に無国籍アクション、石坂洋二郎の青春モノ、そして日活ロマンポルノを想起するが、この映画は戦後の日活が映画制作を再開した初期の作品である。はじめてみたが、日活がかつてこんな映画もつくっていたのかという新鮮な驚きがあった。
b0036803_2126167.jpg◆会津磐梯山のふもとにある田舎町の警察署を舞台にした人間模様である。
昭和29年頃の製作だから、人々のまだ貧しいこと。それでも生き方はどこか大らかである。役人風をふかす小役人はいても、根っからの悪人はだれ一人出てこない。
いろんなエピソードをつなぐ点描スタイルの映画であるが、この前にみた「茶の味」よりははるかに訴求力がある。

◆冒頭から花嫁を乗せた乗合バスの運転手に、新婦の縁者が酒を勧めている、運転手も呑んで運転している。警察官を描いた映画であるというのに、なんという大らかさだろう(笑)。
 町出身の通産大臣が来るというので、役場や警察の署長はそのお迎えに大騒ぎであるが、森繁久弥たち警察官の職場では、戦後の貧困ゆえの事件が次々と押し寄せる。幼い姉弟2人の捨て子を抱えて森繁巡査が児童相談所等を奔走するが、どこも引き受けてくれず、たらい回しにされる。やむなく姉(二木てるみ)は自宅で面倒をみる。“なあに、子供がひとりぐらい増えたっておなじだ”
 三国巡査は困窮のさなかにある農村子女の境遇に心を痛めている、というか、女工として周旋屋に身売りされる女の子が気になってならない。
万引きや無銭飲食でつかまった母子がくる。殿山巡査が取調べする。
“ぼうずはなに食べたんだ、怒らないから云ってごらん”
”カレーライス“
”うまかったか”
“うん”
“それから、それだけか”
“ラムネ……”
(母親に)“おっかちゃんは何を食べたんだ”
“………”
“母親のほうはお茶を呑んだきりだそうです”
この母子、引揚者一家であるが、父親がずっと行方不明で困窮のきわみにあった。まだ、節度があった時代だったのである。そして母子と父親の再会場面は感動的である。
◆俳優メモ
・伊東雄之助;農村純情青年、後年の怪優ぶりがみじんもうかがえない純情演技がみもの。
・東野英次郎;息子5人を戦争で亡くして気がふれた元学校長、いつも軍服姿で万歳の連呼をしている。どこかモノ悲しいが、町の人の視線は暖かい。
・殿山泰司;あら珍しや、泰ちゃんの警官である。もうこの時分からふけている。
・宍戸錠;新人時代か、豊頬する前だから、誰かわからないぐらい別人である。
・杉村春子;周旋屋で登場、警察で取調べされてもけろっとしている。堂々たる貫禄芸。
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by chaotzu | 2005-06-19 21:27 | 日本映画


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