2005年 07月 01日
◆中公文庫、単行本初刊は2000年7月(Ⅰ・Ⅱ)及び2002年7月(Ⅲ)。ガンを取り扱った著名なノンフィクション。それにしても中公文庫は高い(泣)。 著者は1997年に卵管ガンを告知され、胸水、腹水が溜まったあげく手術と抗がん剤治療、6年後に再発し再び抗がん剤投与と手術を受けている。いわゆる末期状態からの生還者である。 ◆ガンという“病気”、日本人の死亡原因第1位であるが、いまだによく分からない、実にけったいな病気である。 医者が余命宣告するが、たいていの患者はその期間より長生きする。たぶんお医者さんが少なめというか慎重に査定するゆえなんだろう。実際の余命が長くなっても、文句は云うひとはいない。なかには、医者の見立てを大幅に超過してなお健在な患者もいる。 治療の手立てについて、“もうありません”という医者もおれば、“まだまだ打つ手はある”という医者もいる。外科医はとくに見切りがはやい、そういう訓練を受けているのだろうか。 抗がん剤を使ってはいけないというお医者さんもいれば、その逆もいる。その抗がん剤にしても、効くひと効かぬひとさまざまだ。副作用もその患者によりけりである(さらに国による治療格差もある)。 要するに、個人差がきわめて大きいのである。おそらく100人のガン患者がいれば、100通りのガンがある。苦痛に喘ぐ人もおれば、常人と変わらぬ元気さのガン患者もいる。だから、患者個人それぞれにカスタムメイドされた治療計画が理想であろうが、たいていは、病院の管理都合にあわせた均一的な治療が現実である。 もっとも、なにが最適の治療になるのか、医者も含めて誰にも分からないだろう。具合が悪くなったとしても、いくらでもイクスキューズができる“病気”である。逆に具合が良くなったとしても、いったいなにが奏功したのか誰にも分からない。 人脈を駆使し世界中から治療情報を集め、お金を費やして外国で最新の治療を受けても、力尽きる患者がいるいっぽう、とくに何もしなくても症状が落ち着いている患者もいる。 語弊をおそれずにいえば、ただ今のガン治療はヴードゥー教の呪術レベルに毛の生えた程度といったら云い過ぎだろうか。 ◆玄米菜食を徹底するひともいれば、肉食おかまいなしのひともいる。いろいろな代替治療にさまざまな健康食品。気孔に打ち込むひと、お笑い療法がいいというひともいる。 著者も「治す」ことよりは「癒す」ことを提唱している。たとえ治らなくても気持ちが癒されればいいのである。たしかに心の持ちようという言葉がある。しかし、健康なひとからそれを云われたらかなりムカツくことも事実だ(苦笑)。葛藤しまくったあげく、なんとか心の奥深くで折り合いをつけているのだから。 ◆この本では、さまざまなガン患者が登場する。生還したひと、旅立ったひと、いろいろなケースを取材し紹介している。だからあれこれ一喜一憂して読まなくてもいい。 読者はその都度、都合のいいところだけ取捨選択すればいいのだろう。
by chaotzu
| 2005-07-01 23:14
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