マイ・ラスト・ソング

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2005年 07月 15日

【DVD】 「TOMORROW明日」 人間は霧のごとくに……

◆あとひと月もせぬうちに、原爆投下から60年である。
ヒロシマが8月6日、ナガサキが8月9日、犠牲者はあわせて20万人を下らない。ナチスドイツのユダヤ人虐殺もひどいが、原爆もそれに劣らぬ人類の蛮行である。戦闘にかかわらない一般の市民が瞬時に殺害された。年寄りも子供もオトコもオンナも無差別に命を奪われた。生れたばかりの赤ん坊も例外ではない。
b0036803_22544749.jpg◆1988年日本映画(ライトヴィジョン他)黒木監督つながりでレンタル。
1945年8月9日午前11時02分長崎に原爆が投下された。その直前24時間における市民の暮らしを淡々と描く。原作は井上光晴の「明日」。
原爆の悲惨さを訴える映画ということになろうが、原爆反対の声高な訴えはないし、その悲惨さの説明もない。広島で新型爆弾をおとされたというはなしがちらっと語られるだけである。
まだ誰もその爆弾の怖ろしさを知らない。
まして、明日頭の上に落とされるなんて……

◆長崎に生きる三姉妹それぞれの出来事がメイン。みんな、明日のあることを信じている。
・桃井かおりの長女、夫が出征中で出産間近の大きなおなかをかかえている。妹の結婚式中に産気づき陣痛に耐えて、やっと男の子を出産する。
“立派な男の子ですたい、5時17分でした”
両親も妹弟も産婆さんも大家さんもみんな喜んでくれる。
・南果歩の二女:工員の佐野史郎と結婚式、初夜の晩、新郎があらたまった顔で、これまで隠していた母親の秘密を打ちあけようとするが、電報配達に邪魔されたりではじめられない。
“明日でもよかとですよ、まだ時間はいっぱいあるとでしょ“
“ほんなごつ、あしたでもあさってでもつづくったいね”
・仙道敦子の三女、赤紙がきた恋人に駆落ちをもちかけられるが、
“恥かしか、情けんなか、あんたそれでもオトコね、ニッポン男児ねちゅうとよ”と突っぱりつつ
“悲しゅうて泣いとるじゃなかけんね。英雄さんに召集がきて嬉しかかもしれんとばってん、そいでも勝手に涙が出てしまうとよ”
◆二女の看護婦友だちが映画館で観ているのは、小津安二郎監督の「父ありき」、佐野周二と水戸光子のシーンだ。もうひとりの友達は妊娠3ヵ月で恋人を待ちわびているが、その母親には邪険にされている。
その他、カブトムシ採りの男の子たち、まちのチャンバラおじさん、捕虜収容所の軍属青年、路面電車の運転士夫婦、写真屋夫婦、そして徴用された朝鮮人、捕虜収容所の英米兵、みんな明日があることを信じて懸命に生きている。
その日の朝、坂道で無邪気にけんけんする少女たち、
そして、三姉妹の母親馬渕晴子は洗濯物を干して
“あー、よか天気たい”
孫も無事に生れた、二女はいいひとに嫁いだようだ。
ハイビスカス、ひまわりは咲き誇り、セミはミンミンないている。
その瞬間にドカーンである。
◆登場人物全員死亡、そして誰もいなくなった、これ以上の悲惨さはない。阿鼻叫喚のシーンはないし、残酷場面もない、それなのに悲痛きわまりない。長崎の映画でありながら、大半のロケは佐世保でしたらしい。原爆で街を根こそぎ破壊されたからだ。
反戦そして反原爆について寡黙でありながら、雄弁に強烈に訴えること
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by chaotzu | 2005-07-15 23:08 | 日本映画


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