マイ・ラスト・ソング

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2005年 08月 11日

【DVD】「大菩薩峠(雷蔵版3部作)」ドラゴン机、いまならサイコパスだよ

◆かつて文学少年に憧れたことがある。簡単に読めそうもないドストエフスキーとかトルストイの大河小説に挑戦しよう。そして、カバーを外した岩波文庫なんか持ち歩いて、“まるでラスコーリニコフ的世界だねえ”とか“スタヴローギンの告白だがね”なんて会話できたら、なにやらカッコよさそうだ。オンナのコにもてるかもしれんぞ、「若き飢えてる君の悩み」である(笑)。
いや我ながら底が浅すぎた。「戦争と平和」「カラマーゾフの兄弟」「チボー家の人々」……みんなギブアップの連続である。
仕方ないから、「戦争と平和」は映画で間に合わせたし、「罪と罰」は手塚治虫の漫画で代替したのである。返す返す取り返しのつかない人生をスゴしてしまったわけだが、今さらもう遅い(苦笑)。
その時はちゃんと言い訳も用意していた。
“ホンヤクものはダメだねえ、なんとかスキーとか、かんとかビッチだらけだもんな。登場人物の名前からして覚え難くて読者に親切じゃないよ”
じゃあ、日本語小説はどうなんだ?有名どころでは中里介山の「大菩薩峠」、かつて角川文庫だったか全30巻近くあったように思う。とにかくケタ外れギネス級の長さである。だけど、そんな旧くさい小説なんぞ若い頃に読む気なんかするものか。10代で「大菩薩峠」を読む奴なんていたら、それこそアブナいやつにちがいない。絶対フォースの暗黒面にとりつかれているぞ(笑)。
それでも、日本人たるもの、不朽の名作のホマレ高いいわば国民的小説を一生素通りしたままでいいものか。どんなはなしかぐらいは知っておくべきだ。よし、いっぺん介山世界にとびこむか。
もちろん映画でチャレンジである(笑)。

b0036803_22295453.jpg◆1960~1961年大映映画、市川雷蔵の主演版である。3部作であるが、1・2巻の監督は三隅研次、3巻目の監督は森一生である。なにがあったか知らないが、これってひどすぎるよなと悪い予感。案の定というか、まとまりのない作品でワタシの目からは破綻している。みていてサッパリ面白くない。3巻で5時間近くも付き合ったのになあ。み終った後漂う無常観たるや……。
ひと言でいっちゃうと、刀をもったアブナいひとがオンナを連れて、美しい日本を放浪するはなしである。ただし、写真はとてもいい。

◆ストーリーの説明は省略する。白状するとよく分からなかったのである。中村玉緒が1人3役を演じるが、みんな同じ芝居でお浜なのかお豊なのかそれともお銀なのか、混乱してますます分からなくなる。山本富士子に至っては3巻目、全然出てこんじゃないか(憤)。
さて、雷蔵竜之助、冒頭から大菩薩峠で旅の老巡礼をいきなり斬殺する。その後も奉納試合の対戦相手の妻(中村玉緒)を手ごめにする、もちろんその旦那も試合で叩き殺す、あげく中村玉緒と江戸に出奔するが、その玉緒も殺してしまうのだ。もちろんその後も殺人行為はやまない。
“人の命を奪って生きていくのだ”
“頼まれて斬るのではない、斬りたいから斬るのだ”
“死にたければ、勝手に死ね”
なんだ、机竜之助って、サイコ野郎のシリアル・キラーじゃないか。

◆3巻目の完結編になると、とうとう髪振り乱した中村玉緒の亡霊が出現して、なんだか四谷怪談みたいになる。しまいに勝手に棄ててきた息子の名前を絶叫しつつ、氾濫する濁流のなか家屋ともどもどこかに流されてしまうのである。長年竜之助を兄のカタキと追っていた本郷功次郎も脱力してしまい、しまいにあだ討ち意志をなくしてしまうほどだ。なんかスゴイ終わり方。仏教思想どこに流れているんだ、大乗仏教どこにあるんだと云いたい。あっそれも含めての無常観か(笑)。
しかし、この役は不健康そうな市川雷蔵でこそ適役かもしれない。健康な机竜之助なんてとても考えられない。大映同期の勝新太郎がやったりすると、座頭市もどきになってしまいそうだし(笑)。

◆雷蔵よりは中村玉緒が光る映画である。云うまでもなく二世中村鴈治郎.の娘、亡夫の借金返済のため、近年はバラエテイ番組やらCMで玉乗りするやら、仕事を選ばないので、すっかりオモシロおばさんになってしまったが、この時期は松たか子みたいな存在だったのである。
みんな同じ演技の1人3役であるから、メーキャップ等で区別しなければならない。1人目のお浜は眉毛を剃った“ヤンキー”玉緒、3人目のお銀は顔に大痣をこしらえた“お岩”玉緒である。全然似合わんぞという見方もあるが、大乗仏教に免じて甘めにみていただきたい。このときはまだ21歳だしね。いっぽう、祖父を殺された山本富士子のほう、その後主体性なくフラフラしてばかりで存在感薄すぎ、とうとう3巻目には出てこない。本郷巧次郎との恋の行方はどうなったんだと問い詰めたい。

◆第1部で新国劇の島田正吾が江戸の剣術道場主で登場、見事な剣戟をみせる。1人で新撰組の10何人かを打ち倒して、びしっときめる。
“剣は心なり、心正しからざれば剣も正からず、剣を学ばん者は心を学べ”
全編通していちばんの見せ場である。机竜之助よりはるかに強いのではと思わせるほどだ。
だいいち、当の竜之助が呆然と突っ立っているだけだもんなあ。
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by chaotzu | 2005-08-11 22:42 | 日本映画


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