2005年 08月 14日

【DVD】 「いいかげん馬鹿」 ハナ肇版フーテンの安

◆1993年に63歳で亡くなったハナ肇、あまりに唐突な死に驚くとともに、ああこれでクレージー・キャッツが完全に終わったなと思った。スターは植木等であるが、クレージーの顔となれば、自分的にはハナ肇である。
そんなハナ肇、もしかしたら「男はつらいよ」シリーズの主役になっていたかもしれない。ほとんど寅さんの原型みたいなテキヤの役までやっているのである。
寅さんになりそこねた男といえるかもしれない。寅さんシリーズの大ヒットを横目にいったいどう感じていただろうか。山田洋次と先に仕事をしたのは自分のほうだという矜持は間違いなくあったはずである。
ただし、それはそれでよかったかもしれない。渥美清のタンカ売の口上の見事さに比べると、やはり寅さん役としては一枚落ちると思うし、なにより、キャラが若干暑苦しいのである。だから個性的な脇役で奔放にやったほうが活きたように思う。「遥かなる山の呼び声」の好演は、今でも印象深いものがある。
いっぽう、渥美清は国民的な人気者になってしまったがために、幅広い芸域を封印してしまい、死ぬまで寅さんに殉じてしまうことになる。
そして、このふたり、どちらも肝臓ガンに罹り、60代で亡くなってしまうのである。

b0036803_2212876.jpg◆1964年松竹映画、馬鹿3部作(スゴい云い方だ)の2作目。前作「馬鹿まるだし」が無法松のオマージュであったとすれば、こちらはぐっと後年の寅さんに近づいてくる。いわばプレ寅さん映画である。この時期から山田洋次監督のなかに寅さん構想があったことがはっきりと分かる。
しかし、物語として前作ほどのパンチはみあたらない。

◆瀬戸内海の小島が舞台。昭和19年、東京から疎開でやってきた女の子(のち岩下志麻)が、汚いなりの男の子(のちハナ肇)と出会う。独り者の漁師(花沢徳衛)が育て上げた捨て子である。都会からやってきた垢抜けた女の子に声をかけられた男の子は、その瞬間から「お嬢さん」に仕える忠僕になる。
“お嬢さんは外国人やろな、そばによるとなんやええにおいがしたがの”
ハナ肇の行動原理はふたつあって、ひたすらお嬢さんに喜んでもらうことと、もうひとつは島の役に立ちたいことである。いつも“ふるさと”の唄を口ずさんでいる。
ところが、善意のつもりの行動が毎度うまく運ばず、島に波乱を巻き起こしてしまう、その都度島に居たたまれなくなって出て行き、何年かたって帰ってくる。あれ。ほとんど寅さんとそっくりパターンじゃないか。そう、さくらやおばちゃんはまだおらずフル・メンバーではないが、マドンナとおいちゃんと寅さんならぬ安さんの3人によるまぎれもない「男はつらいよ」の前哨作なのである。

◆ハナ肇のスタンスはなにひとつ変わらないのに、周りの思惑で浮き沈みするのは、前作と同じ。松村達雄の人気作家をそれとは知らずに島に案内する。気がついた周囲が大騒ぎして芸者を呼んでドンちゃん騒ぎになる。ところがどうも偽者くさいぞとなるとハナ肇が槍玉にあげられ、ホンモノだと分かると、今度は一転、島の功労者だともちあげられる。人気ラジオ番組「めぐりあう君」(マンマ「君の名は」)で紹介されて、漁業しかない島がいちやく全国に知れ渡るのである。
地方の活性化問題については、むかしもいまもほとんど変わっていないようだ。

◆前作より落ちると評したが、ひとつだけセールスポイントがある。
岩下志麻のセーラー服姿である。
おシマ姐さんのセーラー服なんて、お宝映像の価値おおありだと思いますがいかがでしょうか。
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by chaotzu | 2005-08-14 22:22 | 日本映画


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