マイ・ラスト・ソング

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2005年 08月 15日

政治家のワン・フレーズ考

◆権力者なり為政者が好む短いコトバづかいには注意したほうがいい。くれぐれも鵜呑みにしないことだ。
たとえば、60年以上昔「東亜新秩序建設」とか「大東亜共栄圏」というコトバに多くの国民が熱狂したがその実態はどうであったか。美しいコトバの裏側をのぞいてみれば死屍累々ではなかったか。
戦後政治においても、同じことが繰り返される。田中角栄が総理大臣になってぶち上げた「列島改造」、流行語になるぐらいのブームで沸いたが、裏側の実態はとなると選挙区への公共事業誘導とその公共事業費が政治献金で還流することであった。
◆かつてバブル前の昭和60年前後、中曽根内閣時代に「民間活力の活用」というコトバが大流行りした。いわゆる中曽根民活であるが、あけてもくれてもミンカツの大合唱は今のミンエイカ万能論と全くオンナジだった。これもコトバ本来の意味だけとらえれば、美しくて誤りがないはずであったが、実際はどんな結果を招いたか。
・バブル経済を推進加速する燃料になり、やがて地価高騰から銀行の不良債権問題に発展
・関西空港株式会社や東京湾横断道路株式会社を代表格とする三セクの惨状あるいは破綻
・リゾート・ブームの誘引とその頓挫による全国あちこちの虫食い乱開発
要するに政治主導の「民間活力」でいいことなんかひとつもなかったのである。今では政治家や役人のダレもミンカツなんて云わない、みんな口を拭って素知らぬ顔をしている。

◆そして今は民営化というコトバが大流行りである。たとえば郵政を民営化すれば小さな政府になって、役人天国もなくなって、お金の回りもよくなって……、となにやら良いことづくめみたいに喧伝される。もとよりコトバ本来としてはごもっともで文句のつけようがない。まことにワン・フレーズ・ポリティクスはポロが出ないから重宝である。いまやコイズミさんが選挙に勝つための万能呪文になっているみたいだ。
しかし、中味がよく分からぬまま、短いフレーズが浮遊しているだけじゃないのか。

◆民営化で先行した道路公団はいまどうか、わざわざ法律で設置した民営化推進委員会が途中で空中分解、7人の委員のうち5人まで辞めてしまったので、委員会が機能しなくなって委員懇談会になっている有様である。まだ推進委員会の使命は残っているというのに委員の補充等すっかり放置されてしまった。株式会社化へのカッコさえつけば、コイズミさんの興味もすっかり薄れたみたいだ。だけど、先ほどの関空や東京湾横断道路(アクアライン)も株式会社なのであって、その同類会社を増やすだけになりはしないのか。ただ株式会社にすればいいってもんではないでしょう。
虫食いみたいな民営化ならなにも変わらない。いや役人の出向やら天下り先が間違いなく増えるはずである。中途半端な民営化は新たな役人天国を生み出しかねない。
おまけに、公取の告発なかりせば、談合構造がそのまま新会社でも温存される手はずになっていたことだろう。

b0036803_20484688.jpg◆さて、構造改革の本丸とされた郵政は如何、なにしろ郵便事業と貯金保険事業のふたつをいっしょくたにした「ドンブリ民営化」だから、ややこしいことである。それゆえタケナカ大臣が説く民営化=バラ色の将来なんて美辞に簡単に折伏されるわけにはいかないのである。
それぞれのビジネス毎に民営化の成算を見積もるべきであるのに、「民営化」すれば340兆円のお金がすぐさま民間に出回るような錯覚誘導発言をしている。さらに全国津々浦々の郵便局はコンビニみたいになって、住民利便が向上するかもしれないというご託宣である。
前にも記事にしたが、貯金保険事業の「民営化」にはずっと懐疑心があって、それは今でも変わらない。現状の「公営金融」を肯定しているのではない、もうこれだけ異常なまでに肥大化した郵貯の民営化そのものが無理ではないかということである。ついこの間まで民間金融機関の多くが不良債権でバタバタ討ち死にした。あの長銀ですら破綻して外国資本に買収されたのである。そんなところに240兆円の新銀行がのりこんで、莫大なシステム開発までして店舗を改装して、そして資産を毀損せずにやっていけるのかどうかということだ。もとより、個人の金融資産は証券投資にシフトさせていくのが本筋だという思いもある。
だから、数10年かけてでも、徐々に資産規模を縮小していく方策をとるほうが現実的ではないのか。損失が発生すれば取り返しがつかないのである。あえてきわどい表現を使うとすれば「安楽死」である。しかし、いったん銀行免許を付与してしまえば、コントロールしづらくなるだろうことは目にみえている。だいたい新設される郵貯銀行が金融業としていったいどこまでリスクを許容できるのか、その辺の情報すらさっぱり分からないのである。
また、小さな政府というが、郵貯銀行が出来れば、検査要員等で金融庁の人間が今の倍近くになるのではないか。

◆もうひとつの郵便事業のほう、もともと明治以来このかたずっと半官半民みたいな事業だった。「民」の部分はいわずとしれた特定郵便局長である。いまどき世襲制であったり、仕事をほりだして永田町界隈を駆け回れるような局長さんは明らかに公務員の範疇じゃないだろう。現行の公社制度のなかで、この歪んだ特定郵便局制度をどこまで是正できるのか、まずはこの辺りの検討状況を知りたいのだが、寝た子を起したくないのか、この辺の情報もさっぱり教えてもらえない。
だからこそ、冒頭に戻るのである。政治家の短いコトバを鵜呑みにするなと。
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by chaotzu | 2005-08-15 21:16 | 時事


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