2005年 08月 19日

【DVD】 「馬鹿が戦車でやって来る」 全部船頭さんのつくりばなし?

◆1964年松竹映画、山田洋次監督の馬鹿3部作のラスト。公開当時、映画館にベニヤ板製?の大きな戦車模型が宣伝展示されていたような記憶がある。それにつられたのか、子供心にだいぶみたかった映画であり、いわば40年ぶりのご対面である。
ハナ肇が戦車に乗って暴れまくる単純なオモシロ映画のように思いこんでいたのであるが、実際はそうじゃなかったし、もちろん、お子様向け映画でもない。
閉鎖的なムラ社会の差別体質をコメデイ仕立で告発したものであって、筋立ては悲劇に近い、山田洋次監督の系列のなかでもひときわシュールな異色作である。

b0036803_1573950.jpg◆「変わり者が多い」と云われるムラが舞台になるが、そのなかでもいちばん貧乏で「汚れの家」と陰口をたたかれ差別される一家の「悲劇」である。差別のルーツについて説明されないが、いまなら微妙な「問題」ありすぎで映画化どころではないかもしれない。おまけに「キチ○イ」とか「カナツ○ポ」など、いまどきの放送禁止用語が山盛りである。なるほど、テレビで放送されないはずである。


◆少年戦車兵あがりのハナ肇は耳の悪い老母(飯田蝶子)とチエ遅れの弟(犬塚弘)との3人暮らしである。役名はハナがサブ(三郎?)で犬塚がロク(兵六)であり、亡くなった複数の兄弟がいることをほのめかしている。村人はこの一家を内心馬鹿にしきっており、唯一の理解者は地主の娘(岩下志麻)だけである。
ずっと病床にあった岩下志麻から床上げの宴に招待されたのが発端、散髪ポマードアタマに一張羅のセビロで出かけるも「身分をわきまえろ」と咎められる。おまけに勝手に随いてきた弟まで笑いものにされる。村人はみんな面白がるだけである。同情するふりをしつつ腹のなかでは笑いをかみ殺している。ハナ肇が酒を呑んで泣きじゃくるが、安物のポマードで顔が汚れていくのが痛々しい。
そのうち農地解放で手に入れた田畑まで母親をダマして奪い取る輩もでてくる。とことんムラ八分にされたハナ肇の怒りが大爆発。納屋に偽装して隠していた戦車愛国98号を整備して村中突撃とあいなる。警察は駐在の訴えをとりあわないし、急遽掘った戦車壕にはまるのは村人のほうである。この辺りのドタバタはかなり面白い。地主の家も村会議員の家も床屋も雑貨屋もタンクでぶっ壊す。ところが、その最中に悲劇が起きてしまう。
ほとんど救いようのないはなしである。ラスト、海辺に消えたキャタピラ痕がもの哀しい。

◆共演の犬塚弘がすばらしい。ずっと脇役専門でけっして主役のジャマをしないため目立たないが、この映画ではダブル主役といってもいいくらいだ。まだ現役なんだけど、日本映画はもっとこのひとを活用してもよかったのではないか。
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by chaotzu | 2005-08-19 23:55 | 日本映画


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