マイ・ラスト・ソング

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2005年 08月 24日

【NHK・BS】「運が良けりゃ」 ハイ、並焼き一丁上がりぃ~

◆1966年松竹映画、ビデオ録画の消化。落語に造詣の深い山田洋次監督ならではの古典落語の映画化である。
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時代設定は江戸時代の裏長屋、主役は熊さん(ハナ肇)、八つぁん(犬塚弘)になる。けっこう面白い。
落語をもとにしたネタは5つほど盛り込まれているらしいが、気がついたのは次の3つ、映画としての脚色があるので、はなしの展開は古典落語そのままではない。


◆「さんま火事」
大家の横暴に腹を立てた長屋の住人、熊さんが秋刀魚をいっせいに焼こうという。たちまちもうもうたるけむり、そのなかで“このサンマどこで買った” “(大声で)河岸だあ”のやりとり。
つい火事だと勘違いした大家のところはたいへんな騒ぎになる。

◆「黄金餅」
長屋の住人である高利貸婆さん(武智豊子)、死期を悟ってハナ肇妹役の倍賞千恵子に餅を買ってきてくれと頼む。いったい餅をどうするんだろうとのぞいていると、なんと貯めこんだ金子を餅に包み込んで腹におさめている。せっかくのカネをダレにも渡すもんか、冥土にもっていくぞ。

◆「らくだ」
高利貸婆さんが亡くなったのを知った大家が、これ幸いと住民に立ち退き要求をする。怒った熊さん、大家といえば親も同然、店子が死んだとあればそりゃ気の毒だと酒の三升、煮しめの一皿ぐらいは届けるのが当然じゃないか。さもなけりゃ、死体を大家宅まで届けてついでにカッポレでも踊らせるぞ。

◆落語というと長屋庶民の人情噺をまず思い浮かべるが、実際はけっこうグロテスクなはなしもある。SFもどきのホラ話もあれば、ブラック・ユーモアもありで、それこそなんでもござれである。
「黄金餅」では焼き場で隠亡に「お腹だけ生焼きにしてくれ」と頼んで、腹から金子を取り出すが、死者に対する敬虔な気持ちなんかさらさらない。「らくだ」にいたっては白塗りのホトケにカッポレを踊らせるなんて死者に対する冒涜そのものでもある。
落語家が語りだけでやれば、そのあたりがはぐらかされるのだろうが、映像の場合、あまりくどくやると観ているほうがひいてしまうので塩梅が難しい。さすが山田監督、その辺はぎりぎりのところで抑えている。

◆ハナ肇と倍賞千恵子の愚兄賢妹パターンは、寅さんと同じであるが、この映画のハナ肇は全然懲りない兄貴で、最後まであっけらかんとしている。ハナ肇はこういうペーソスのない「アッと驚く為五郎!」的な役柄のほうがずっといいかもしれない。
“まるで便所の月見じゃねえか”
“ウンのツキってことよ、ワッハッハッ”

この時期の若々しい倍賞千恵子はほんとうに魅力的である。歴代美人女優の枠に入ってしかるべきだと心底思う。
ところがそれなのに、長屋住民の糞尿を収集している百姓倅の田辺靖男と恋仲になったりするのである。安田伸の若殿の愛妾になるはなしもあったのに、肥え取り百姓とくっついてしまうのだ。おまけによりによって、糞尿の色から住民の栄養状態が分かるなんて会話をしたりしている。もうちょっとましな会話をさせんかい(苦笑)。

◆渥美清が焼き場の隠亡役で特別出演、
“それで、ホトケの焼き具合は並焼きかい、上焼きかい”
“ハイ、並焼きいっちょうアガリー”
寅さんシリーズではみたこともないような怪演ぶり。
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by chaotzu | 2005-08-24 22:22 | 日本映画


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