2005年 08月 27日

【DVD】「社長千一夜」どっかの社長モン映画みたいや、もう飽きたわ

◆1967年松竹映画、社長シリーズもとうとう25作目である。森繁夫婦もすっかり倦怠期に入り、妻の久慈あさみは仕事仕事と言い募る森繁に不機嫌そのもので、おまけに浮気も疑っている。
b0036803_21385212.jpg事実、森繁も浮気の虫がうずうずしてしかたがない。本作では長年秘書課長を務めた小林桂樹がとうとう部長に昇格するが、意図的に後任を空席にしている。ひとりで身軽に遊びたいからだ。それを察知した妻が加東常務に手を回して秘書を配置させるなど、糟糠の夫婦といえども、火花がとびちるような丁々発止のやりとりがある(笑)。
そして九州観光編。別府、大分、湯布院、やまなみハイウェイ、熊本、天草、島原、いやうらやましいコースだ。だけどビジネスと観光だけにすりゃいいものを、懲りない社長さんは浮気まで仕組もうとするのである。いまならば内部告発で失脚間違いなし、経営者にとっては、まことに古きよき時代でありました。

◆森繁氏は会員制リゾート・マンション事業等で上昇基調の観光会社社長、大阪万博前のミニ・バブル的な世相を反映して、万事イケイケであり、慎重派の加東常務に“石橋は叩くものじゃなくて渡るものだ”とのたまっている。新任の小林桂樹開発部長企画の天草地区ホテル計画にも積極的である。そこへ大阪の直営ホテル支配人の三木のり平が耳寄りなはなしをもってきた。ブラジルの日系富豪(フランキー堺)が一族のルーツである天草にホテル建設を計画しており、日本側のパートナーを探しているという。ひと晩寝ずに考えた、パートナーとなればやっぱりうちの社長しかいない。加東常務が呆れて、そんなのひと晩かけて考えることかと突っ込む。
まあいろいろありまして、九州横断ツアーとあいなります。

◆新任秘書として黒沢年男が初登場、あいさつした途端、森繁社長がハンカチで顔を覆う。“君は昨夜なにを食べたんだね”
“はい、朝鮮焼肉を食ったんであります”
真面目だがまだ秘書として全然洗練されていない。小林先輩から“秘書は豆腐やこんにゃくを食うもんだ”と云われている。ホントカ?

◆日系ブラジル人のフランキー、役名はペゲロ・ドス・荒木、このひとは毎度変な名前ばっかりである。今回は日系人風「五木の子守歌」を唄うが、珍妙なテイストはとても文章化不可能(笑)。まだ独身であり、大分高崎山でばったり出会った別府の美人芸者にひと目ぼれ、ホテル計画そっちのけで追いかけ回す。それを苦り顔でみている森繁社長もちゃっかり女性を同伴しているのである。

◆新珠三千代が大阪のバーマダムで登場、同時期は「氷点」の怜悧な母親役を演じていたはずだが、本作ではうって変わったコメディエンヌぶりを発揮する。このひとのここまではじけたお笑いをみるのは、はじめてかもしれない。
森繁とセルフ・パロディをやっている。
“うちらの関係、どっかの社長モン映画とそっくりや、うちもうあんなん飽きたわ”
“わしも飽きたよ”
それで、今回は女性のほうが積極的なのである。森繁氏がいみじくも「イロノーゼじゃないか」というぐらいだ。
別府杉の井ホテルのモリシゲ氏、ゴキゲンのあまり、鼻歌までとびだす。
♪絶えて久しき据え膳の味~
 男子の本懐これに過ぐるはなし
ところが、黒沢秘書の勘違いでフランキー熱愛の芸者が飛び込んできておじゃん。
島原観光ホテルでは、新珠三千代のネグリジェ姿がスゴイ!
モリシゲ氏、こんどは別府の恨みを島原で晴らすと大張り切り。
しかしながら、急遽出張してきたのり平にジャマされるのである。のり平、偶然を装って妨害してるんじゃなかろうか。そんな気がしてきた。
つまるところ、旅先の情事は思惑どおりいかず、結局は長年連れ添った女房の元に戻るというはなしになる。なんだかんだいっても、このシリーズは道徳的なのである。

◆恒例の宴会芸は、島原観光ホテルで森繁演じる「落城の賦」。
♪天草灘に日は落ちて 岬の城に風寒く
 四郎の夢がうの鳥の 羽音悲しき古戦場
のり平がいないので 森繁堂々の朗唱と剣舞である。
カラオケとフィリピン・ショーが日本のお座敷文化を駆逐しちゃったなと、しみじみ痛感。
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by chaotzu | 2005-08-27 21:52 | 日本映画


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