マイ・ラスト・ソング

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2005年 08月 30日

【ビデオ】 「忍びの者」 これぞ忍びウォーズ

◆1962年大映映画、モノクロ。村山知義の代表作「忍びの者」の映画化である。もとはアカハタ日曜版に連載されていたらしい。いまはどうか知らないが、かつてのアカハタ日曜版は芸能娯楽を重視したなかなかユニークな紙面だった。たしか手塚治虫もマンガを連載したことがあるはずだ。
原作小説は忍者の世界にはじめて階級史観を取り入れたものであり、この映画でも非情きわまりない上忍と、弊履のごとく扱われる下忍の哀しさが描かれる。いわゆるリアル忍者の先鞭をつけた作品である。

b0036803_23512278.jpg◆市川雷蔵演じるは石川五右衛門、大盗賊として著名であるが、この映画では伊賀百地党随一の忍者という設定である。とはいっても下忍であって半分は百姓みたい存在である。火薬を開発している父親は、忍者という存在に懐疑的な発言を洩らすまでになっている。
さて、頭領の百地三太夫(伊藤雄之助)の不安は浅井・朝倉連合軍を討伐して日の出の勢いにある織田信長の存在である。伊賀忍者のルーツは空海の真言密教だ、坊主を目の敵にする信長は仏敵であり、一刻も早く暗殺しなければならないとアジ演説をぶっている。
一方もうひとつの伊賀忍者集団である藤林党も信長の命をつけ狙っている。

◆三太夫が信長暗殺者の本命として目をつけたのは五右衛門、ただし、ストレートに暗殺指令を発しない、実にこみいった手をつかう。
まず、五右衛門を会計の帳簿付け係に指名して、頭領宅に日参させる。そこにはなぜか三太夫が一指もふれない妻の岸田今日子がおり、欲求不満状態が募っている。おまけに三太夫はなぜか留守ばかりしている。こうなると、頭領の妻が五右衛門を誘惑するのは時間の問題(笑)。あとはおきまりコースとあいなり、
頭領妻との情事→情事露見危機→頭領妻の不可解な死→五右衛門に殺人容疑
と進行する。実はこれがみんな三太夫の罠なのである。

◆こうなると、どうしても連想せずにはいられない。そう、スターウォーズでパルパティーン議長がアナキン・スカイウォーカーをフォースの暗黒面に引っ張り込んだ手口である。絶対的な忠誠を得んがために、ものすごくこみいった仕掛けと時間をかけているというところは、同じである。おまけに、三太夫はもっと大仕掛けのトリックを仕組んでいる(ほとんど周知のことだろうし、ちょんバレという声もあるが)。
だけど、そこまでして五右衛門を屈伏させるための手間と情熱があれば、それだけでもう信長を打倒できるんじゃないかと思ってしまうほどだ。なにより、頭領が直接、信長暗殺にかかわったほうがよほど間違いがないし、すっきりしている、まあいいですが(笑)。

◆一方の藤林党が送りこんだ暗殺者は西村晃、この時はまだまだ若い、雷蔵の五右衛門と暗殺競争である。ただし、五右衛門はなぜかドロボウ指令を受ける。百地党の資金工作だろうか、これで忍者というよりも盗賊五右衛門のイメージが出来てしまう。
さて、信長暗殺編、いろいろありまして、とうとう新築の安土城に侵入した五右衛門、信長(若山富三郎=全然信長っぽくない)の寝所の天井裏に穴を開けて、糸をたらす。この映画中白眉のシーンである。映画は忘れていてもこのシーンだけは憶えているひとがかなりいるのじゃなかろうか。三太夫伝授の猛毒がタラーリタラリと糸を伝わって、信長の口に入り込むという仕掛けである。さて、いかがあいなるか。

◆ラスト・シーン、妻(藤村志保)の元に戻る雷蔵が歓喜を爆発させるかのように走っている。これだけ喜びの表情あらわな雷蔵はめずらしい。
笑顔満開の雷蔵もなかなかいいものです。
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by chaotzu | 2005-08-30 23:56 | 日本映画


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