2005年 08月 31日
◆中公新書ラクレ2005年4月刊行、吉田茂の「バカヤロー」以来、戦後60年間の政治家による放言失言とその背景をまとめたもの。 戦後まもない時代の「暴言」は、池田勇人の「中小企業が倒産してもやむを得ない」「所得の少ない人は麦を食う」など、政治信念に拠るもので、どちらかといえば、ひっかけられたゆえの「失言」もあるが、時代が近づくにつれ、だんだん発言の品位が下がってくる。 はじめのうちは微笑ましく読んでいたが、しまいにむかついてくる(苦笑)。 ◆著者の指摘として、いちばんたちの悪い「暴言」で突出しているのは、ほかならぬ現コイズミ首相である。 コイズミ暴言例(一部) 「この程度の約束を守らないことはたいしたことではない」 「人生いろいろ、会社もいろいろ……」 「自衛隊が行っているところが非戦闘地域」 著者はこれらコイズミ暴言を戦後最大の失言とみており、戦時下帝国議会における東條英機首相の答弁との共通性を指摘する。 ◆昭和16年12月臨時帝国議会における鶴見議員の質問 “(言論出版集会結社等臨時取締)法案でいうところの戦時下ではない状況とは具体的にどういうときをさすのか” 東條首相の答弁 “平和回復、それが戦争の終わりである” 法律上はどういうことか質問しているのに、子供だましみたいなすり替え答弁で終始している。たしかにコイズミさんとそっくりだ(苦笑)。著者は質問の意味がよく理解できていなかったのではないかと推察しているが、それにしてもである。 ◆暴言王のコイズミさんであるが、なぜか国民の支持率は高い。同じことを森前首相がしゃべったとしたら、袋叩きにあっていただろうに、コイズミさんであればたいして騒がれない。逆に漫才みたいな不真面目な答え方が喝采を浴びている節がある。 政治を遊戯化して、テレビ・ゲーム感覚で論じる、そんなやり方に国民も馴れきってしまっているのではないか、そうだとしたら危険なことだと著者は指摘する。 ◆いずれにしても、有権者がどう受け止めているかは、10日ちょっと先に判明する。 とにかく投票率が高いことを願うのみである。
by chaotzu
| 2005-08-31 21:39
| 読書
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