マイ・ラスト・ソング

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2005年 09月 02日

【DVD】 「仁義の墓場」 大笑い30年の馬鹿騒ぎ

◆NHKの大河ドラマで主役が途中交代したことが1回だけある。1974(昭和49)年の「勝海舟」、1ヵ月も経たないうちに渡哲也から松方弘樹に交代した。病気(膠原病?)で降板した渡哲也は無念だったろう。あたら国民的人気俳優になれるチャンスを棒にふってしまった。おまけに急遽代役の松方弘樹の評判は上々で、共演の仁科明子まで略奪GETするという果報者ぶりである。その時点では明暗くっきりだった。
だけど、渡哲也も吹っ切れたのだろう。仕事復帰後の1作目はとんでもない作品だ、日本映画史上最悪最凶といわれるキャラを演じて、目を瞠る凄絶演技をみせる。そして、その後は再三の病魔にも屈せず、今なお現役の俳優としてたしかな存在感を示している。大河ドラマにも何回か登場した。
そして、松方弘樹のほう、浮気性がたたったのか今や俳優業はサッパリ、ショボイ通信販売の広告キャラなんかやったりしている。ホントに先のことは分からない。

b0036803_22241811.jpg◆1975年東映映画、「仁義なき戦い」の深作欣ニ監督がとうとう「仁義」まで墓場に突き落としてしまった、そんな感じのする作品である。こんなみもふたもない映画をみて、元気がでるわけじゃない、カタルシスを得るどころか気持ちが落ち込むかもしれない。
唯一効用があるとしたら、ああまだ、ここまでは落ちぶれちゃいないぞといった、微々たる安心感かもしれない。

◆もはやヤクザ映画の域をとびこえてしまった、なにせハナ肇や梅宮辰夫の暴力団組長がまっとうな常識の健全社会人にみえるぐらい、主人公の非常識悪逆非道が際立つのである。そして、こんな目茶苦茶人物石川力夫が実在したのである。
渡哲也が潜伏するドヤを警官やヤクザが包囲する。もういきなり拳銃を乱射して反撃である。やくざ連中はへっぴり腰の投石で対抗している、そして弾丸尽きた渡哲也が突撃してくると、途端に背中を向けてみんな逃げ惑う。
やくざ社会に叛旗をふったということで、一時は命を狙われるが、とことん非常識が突き抜けてしまうと、やくざも避けて通るようになる。キチガイのタマを殺っても、なんの利益にもならない、相手にしないのが無難、そんな存在になっていく。

◆渡哲也の情婦が多岐川由美、身勝手きわまりない男なのに保釈金の工面までして尽くすが、結核が悪化して絶望の果てにとうとう自殺してしまう。その10日前に婚姻届がされており、正式な夫婦になっている。いずれの発意かは不明。
吐血したオンナの顔一面の血だらけを拭ってやる渡哲也、そして火葬場で骨上げするとき、サングラスの端に滴る涙、もうやりきれません。
きわめつけは、かつて半死半生にあわせた元親分(ハナ肇)の組事務所にノコノコ顔を出して、亡妻のホネをポリポリ齧りながら無心する。やくざ連中みんなひいてしまって気押されている。そして、墓石の字を刻む石工を見守る渡哲也の表情はもう涅槃にいっている。

◆渡哲也のヒロポン仲間が田中邦衛、青白い顔でいかれきった役を演じる。ずっとあと、テレビドラマ「北の国から」の黒板五郎でブレイクする。うんちくつづきで恐縮だが、「北の国…」の倉本聡も「勝海舟」の脚本を途中降板している。
そうか、大河ドラマのアクシデントが異色ヒーローを二人生んだのか。
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by chaotzu | 2005-09-02 22:34 | 日本映画


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