2005年 09月 20日
◆まさかシリーズがこんな終わり方になるなんて思ってもいなかった。時系列でみてはじめて分かったことであるが、ラスト場面のお竜さんは満身創痍でボロボロ。シリーズの棹尾は大団円で決めるかと思いきや、凄惨なエンディングである。 片岡千恵蔵大親分率いる近松一家がずらり勢ぞろいして、提灯を掲げつつ黙礼。千恵蔵親分が嘆息して云う “お竜はん、思うようにはならんもんやなぁ” 雪が舞い落ちる夜道をお竜さんがよろめきながら去っていく、助っ人菅原文太の骸を抱えて先導するのは盟友の熊虎親分、万感胸に迫るラストだ。 ◆1971年東映映画、シリーズ8作目にして最終作。ふつうはダレてくるものだが、その気配は全くない。7作目もこの8作目もはなしはよくまとまっており、けっして悪い出来ではない。なにより藤純子の立居振舞いの美しさが際立ってくる。ファンの熱烈な支持と声援が傑作シリーズに仕立て上げたその代表例じゃなかろうか。 ◆舞台は大阪、お竜さんの後見人である清川虹子のおたか親分が危篤状態になって、駆けつけたお竜さんに遺言を託して大往生。ところが甲乙拮抗する跡目候補が2人いるので話がややこしくなる。舎弟頭の待田京介と分家を率いる松方弘樹、おたか親分が後継に指名したのは松方弘樹だったが、待田京介は面白くない。実はそれなりの事情が介在しており、実質的に本家を相続するのは待田京介だから、等分の跡目なのであるが、どうしても名目にこだわってしまう。そこに悪いやつがつけこんでくるという筋立てである。 いわば、組の跡目を巡る悲劇。待田京介は単細胞の不死身の富士松とは異なる複雑なキャラを好演、最期は泣かせてくれる。 ◆お竜さんの助っ人は菅原文太、なにせ日露戦争203高地の生き残りである。修羅場の経験では最高レベルだ、それでも戦友の松方弘樹にかたぎになれと口すっぱく云われている。 “カニに向かってタテに歩けと云ってるようなものです” “わたしなんかも……、カニの口ですね” “あなたはカニじゃありませんよ、間違ってヨコに歩いていなさるだけだ” ◆雪のちらつく安治川運河を舟で渡河する殴りこみ3人組、ここからは刮目シーン満載。 さてさて、お竜さんはいったいどこに行ってしまったんだろうか。 なになに、菊五郎のところに飛んでいったって、それはまた別のお話。
by chaotzu
| 2005-09-20 20:45
| 日本映画
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