マイ・ラスト・ソング

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2005年 10月 01日

【映画】「いつか読書する日」 カイターッ!50男女の美しき不器用愛

◆はじめは1日1回だけの上映で2週間ぐらいの予定だった。ところが、お客がどんどんおしかける。ほとんどがおじさんおばさんだ。休日なんかは満席で立ち見が出たらしい。映画館はとうとう続映を決定、しかもこんどは1日2回上映だ。これは行かずばなるまいとあいなる。期待を裏切らない秀作、ここ数年劇場でみた日本映画でのなかでは感動度バツグンである。
50代男女の恋愛となれば、昔なら「老いらくの恋」扱いされたかもしれない。だけどそんなことは全く感じない。そして50歳田中裕子の美しいこと、若い頃より素晴らしい。
おじさんおばさんのファンタジーかもしれない。だけどいいじゃない、あくまで独りでみにいって、独りで泣く映画である。

b0036803_1921205.jpg◆大場美奈子(田中裕子)50歳独身一人暮らし、牛乳配達とスーパーのレジ打ちをやっている。読書が唯一趣味で「カラマゾフの兄弟」のある一節を何度も読んではひとり嗚咽している。そして、スーパーのセクハラ店長(香川照之)からは「大場さんて、バ、バージン?」と訊かれたりする。世間的には無表情の暗い女だ。
だが、朝は別の顔をみせる。早朝坂の多い町を牛乳壜抱えて走る。階段を登るときは「よしっ」と気合を入れる。登った先はあの人の家だ。
“私には大切な人がいます。でも私の気持ちは絶対に知られてはならないのです。どんなことがあっても悟られないようにすることは難しいことです。しかし、その人の気持ちを確かめることが出来ないのはほんとうに辛いものです”

◆高梨槐多(岸部一徳)50歳、市役所の「みらいのおとな課」勤務、最近呑んだくれの母親に食事も与えられていない様子の子供が気にかかっている、この人もほとんど無表情。
“オレ若いころにさ、絶対平凡に生きてやるって決めたんだよ。必死になってそうしてきたんだ“
飲まない牛乳を2本ずっと配達してもらっている。配達しているのは美奈子である。寝ているふりをして、実は配達音にじっと耳をすませている。市電に乗っては自転車の美奈子を見る。スーパーで買い物しては背中合わせで美奈子をみている。

◆高梨容子(仁科亜季子)、槐多の妻であるも末期癌で寝たきり状態。食事もできず点滴で栄養を摂っている状態であり、余命いくばくもない。夫はこれ以上ないほどやさしい人である。だけど、実際はどういう人なのかずっと判じかねていたが、あることから、全てを理解する。

◆槐多と美奈子は高校の同級生で親しくしていたが、ある不幸な事件を契機に疎遠になってしまう。それから30年余り、ずっと秘密に育んでいた2人の愛のてん末である。
触媒になるのは容子であるが、真意は実際のところ分からない。美奈子は容子の頼みに「ずるいです」といったん拒否する。だけど認知症老人の捜索で遭遇してつい呼んでしまうのだ。
“高梨さん、高梨さん……、槐多ぁ!
30年間以上ずっと抑え込んできた感情がほとばしった瞬間だ。そう、ひとはこのときのためにこそ生きているのだろう。

◆最後の思わぬ結末まで、全く中だるみすることなく映画世界に引き込まれる。児童虐待や認知症老人のエピソードも描かれるが、無駄なエビソードはない。それらがみんな関連しあって結末に収束する。
ラストシーンは牛乳配達の途中で丘の上に立つ美奈子、朝日に照らされた町を見下ろして瞑目する。そう、いつか読書する日だ。
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by chaotzu | 2005-10-01 19:26 | 日本映画


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