2005年 10月 10日

国勢調査は統計役人の自慰仕事にあらず

◆国会で法律案が議決されたときには思いもよらなかった事態が、施行されてから発生することがある。いろいろすったもんだのすえ2003年5月に制定され、今年の4月から施行された「個人情報保護法」、国会議決時点では「メディア規制法」あるいは「政治家スキャンダル隠蔽法」などとさんざん叩かれていた。おかげでわが愛読雑誌であった「噂の真相」なんかは廃刊になってしまったぐらいである。
ところが、いまその法律が為政者側に厄介ゴトをもたらしている。プライバシー意識の昂りによる国勢調査への非協力である。

b0036803_13243470.jpg◆国勢調査票、結局は調査員の方にお渡しさせていただいた。ただし、当方のセレヴぶりをひけらかすのも申しわけないので、のり付け提出である(笑)。とくだん、調査員の方に他意があるわけではない。ただ、各地で委嘱された調査員が大量に辞めてしまったり、あるいは調査票の用紙を焼却してしまうなどのニュースを見聞きするにつけ、市役所に直接提出したほうがよかったかなとも思ってしまう。こういうことは、機会をとらえて小さくてもなんらかのアピールをしておくべきであった。

◆第18回目の国勢調査、おそらく調査開始以来史上最低の回収率になるだろう。総務省の役人は誰か責任をとるのだろうか。
個人情報保護法の制定後に「振り込め詐欺」や「リフォーム詐欺」が大発生したことなどで、個人情報の秘匿意識が格段に高まるなど社会事情の変化もあっただろう。しかし、指定統計であることにあぐらをかいて、時代の変化を無視した旧弊な統計を漫然と続けようとした役人さん、その考えは甘すぎたのではないか。しかも、650億円もの巨大事業である。不断の見直しはあってしかるべきだった。
実際のところ、かつて個人情報への関心がいまほどなかった時代においては、調査員さんにとってけっこうな小遣い稼ぎの仕事であった一面はある。おまけに住民の情報も把握できるという「余禄」もあった。こんなこと云ってはなんだが、これまで地方公務員にしてみれば選挙事務とならぶおいしい仕事だったのではないか。それが長年月つづくと、業務そのものが既得権みたいになる。だけど時代環境が様変わりしているというのに、これまでのやり方のまま踏襲しょうとしたことは、ハッキリ云って役人の怠慢である。しかも、5年前の調査時点においてもプライバシー問題がかなり指摘されていたのである。最低限、法令に則した調査項目にとどめておくべきなのに、それさえも怠っている。もう何をかいわんやである。

◆逆に、個人の過剰なまでのプライバシー意識による弊害を危惧する意見もある。国家的事業の支障になるようでは、行き過ぎではないかということである。
いやいや、これまでがあまりに杜撰すぎというか無神経すぎたのである。なにしろ、詐欺犯罪のネタに使われて、現実に広範囲で具体的な被害が発生しているのである。そうでなくても、夜間の無神経なセールス電話にどれだけ悩まされていることか。
たとえば、10年ちよっと前ぐらいまでは、学校の父兄名簿に職業の記載を求められていた。片親家庭あるいは低所得者層の子供はさぞや肩身のせまい思いをしたことだろう。親の職業地位が子供にとってなんの関係があるというのだろうか。だけどたいていの教師は平然たるものである。ご丁寧にも全校版の冊子をつくってばらまいたりする。父兄の氏名住所から勤務先まで丸分かりである。なかには、企業の寮らしき一室を住所にしている子供もいる。夫を亡くした母親が住み込みの管理人で懸命に子供を育てているのだろうが、そんなことまで、あからさまにする必要があったのかどうか。実際、子供というのは残酷なところがある。
だから、こんなもんにまで真面目に書く必要なんぞないという、ところが変わり者の親がいると子供が変な目でみられるから、かえって可哀相だといわれる。それほど、個人情報の取扱がぞんざいきわまる時代がついこの間まであった。

◆メディアの被害者報道もけったいなものであった。最近に至ってようやく改善されてきたものの、これまでは何も悪いことはしていない、一方的な被害者なのに、世間に氏名住所、それに職業年齢までがさらされてきた。真に泣きっ面にハチというか二重の災厄である。いっぽう加害者のほうの個人情報はなんだかんだで守られることがある。こういった本末転倒がずっとまかりとおってきたのだ。
長年溜まりこんできた不満が爆発したとしても、少しも不思議ではないだろう。

◆個人情報は守秘義務によって、万全に秘匿されるという、建前的にはそのとおりだろう。だけど思いもよらぬ事故というものがあって、情報の流出事故なんぞいくらでも起きている。こういう個人情報の塊りみたいな調査の実施にあたっては、情報が漏れる場合も想定して実施すべきじゃないのか。もう精神論だけでは無理である。そういう意味では、氏名の記入をせずに済む方法(番号制など)を検討してほしいものだ。そうすれば、だいぶ風向きが変わるだろうと思う。
それと「小さな政府」を本気で志向するのならば、余計な調査項目はやめてほしい。あるいは国勢調査の具体的な成果、そういうものがあるとするならば、それが国民にもたらした果実を具体的に還元説明してほしい。たとえば「直近一週間の就労時間」などの統計データが立法あるいは行政の施策にどう反映したかということである。
少なくとも、ただ回答内容の信ぴょう性を確認したいがためだけで集計もできない、おまけに法令に定めのないような調査項目なんぞは、大きなおせっかいそのものである。
指定統計といえど、役人のオナニー調査にまでつきあう義務はない。
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by chaotzu | 2005-10-10 13:36 | 時事


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