マイ・ラスト・ソング

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2005年 11月 15日

【DVD】「悪名」「続悪名」 戦争って国のナワバリ争いちゃうか

◆いまどきの映画は1本だいたい120分ぐらいであるが、昭和30年代の日本映画(プログラム・ビクチャー)は90分前後が主流だった。だから、長尺ものは正続2本に分割されてしまう。2本みて実質一作品の完結であり、みる順番を間違えると目もあてられない。まあそんな正続映画であるが、これがすこぶるオモシロ哀しい。

b0036803_2212345.jpg◆1961年大映映画、カツシンの出世作である。河内の住職でもあった今東光が週刊朝日に連載して大人気を得た小説の映画化、それゆえヤクザものというよりは、文芸映画のテイストがある。むしろ反やくざ映画であって、やくざの狡猾なところや金に汚いところをよく活写しており、後年の「仁義なき戦い」に通じる一面がある。また、昭和初期の風俗映画としても面白い。造船の島、広島・因島の戦前の活況なんて全然知らなかった。

◆カツシン、このアトの「兵隊やくざ」ではむさくるしいヒゲもじゃ男に変貌するが、このシリーズで演じる八尾の朝吉はまだ最初の白塗り2枚目イメージをとどめている。
さて、カツシンの役どころは河内の百姓の倅で暴れん坊、ガキ大将がそのまま大きくなったようなものである。とはいえ楠木正成~楠公さんの末裔を自認しており、強きをくじき弱きを助ける正義感あふれる青年で、かつ素朴な正直者である。そしてやくざを毛嫌いしている。しかし、ヤクザのほうが一枚上手で人のいいカツシンはまるめこまれて、取り込まれてしまう。
カツシンの相棒が田宮二郎演じるモートルの貞、この田宮二郎がものすごくいい。河内弁もなかなか達者で、とても学習院大卒にみえないほど(笑)。後年のタイムショックの名司会や「白い巨塔」の力演を想うにつけ。43歳で逝った名優を惜しまずにはいられない。

◆物語はこのコンビの破天荒な青春記である。朝吉がモートルの貞と「兄弟分」になるいきさつや、松島遊郭の女(水谷良恵)を足抜けさせたり、くいだおれの女給(中村玉緒)に結婚を誓約させられるてん末、さらには広島・因島の女親分(浪花千栄子)とのからみなど、腕力では負け知らずの悪名コンビの快進撃は快調かつ痛快である。
ところが後半に至って暗転、子分を養うカネの工面に苦労したり、大親分の薄情さに嫌気がさしたりする。
“やくざの世界も所詮カネやなあ”
そして暴力の世界でも上には上がいた、国家権力である。カツシンは召集されて「国どうしの出入り」でとうとう満州の地でぬかるみ行軍となる。
“こんなゴツイ出入りでは虫ケラ同然や”
そして、残されたモートルの貞、ラストの雨中のサイレント・シーンが哀しい。

◆手堅い脇役陣も魅力である。日本映画黄金期の量産は助演俳優の層の厚さにも支えられたのだろう。先述女優陣のほか、大親分である中村鴈治郎(二代目)のタヌキぶり、上田吉二郎や山茶花究の情けない親分、その他シルクハットの親分や新世界のカポネなど多士済々のやくざが登場する。顔がふっくら丸顔していた当時の南都雄二も懐かしい。
それにしても、玉緒の父親にまで助演されては、カツシンもやりづらかったろうな(笑)。
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by chaotzu | 2005-11-15 22:16 | 日本映画


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