マイ・ラスト・ソング

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2005年 11月 25日

【DVD】「深夜の告白」 終点まで降りられないふたり

◆レイモンド・チャンドラーといえば、日本でも人気高いアメリカのハードボイルド作家であるが、ハリウッドに呼ばれてお抱え脚本家をやった当初、半ノイローゼになってしまったという有名なエピソードがある。なにしろ、脚本化する原作がジェームズ・M・ケインの「倍額保険」、これがそもそもチャンドラーの作風とあわない。そして、脚本執筆の相方がオーストリア移民で監督のビリー・ワイルダー、チャンドラーほど物事にこだわりのない映画職人である。相性がいいとはとてもいえない。ところが、こんな修羅場で作られたシナリオの映画化がヒットする。そして、チャンドラーはその後小説世界に復帰する。ハリウッドで生き抜くほどタフでなかったのだろうか。

b0036803_22573674.jpg◆1944年アメリカ映画、いまやワイルダー監督による古典傑作の位置づけであるが、画質はもうひとつよくない。それにしても、日本と戦争している最中であるというのに、こんな犯罪映画を作ってしまうのだから、真に彼我の力の差の歴然たることを思い知る。
保険会社のやり手勧誘員である主人公(フレッド・マクマレイ)が深夜、自分の会社にやって来て、ディクタホン(口述録音機)に向かって、ひとり語りを始める。相手は管理担当の部長(エドワード・G・ロビンスン~好演)、題名どおり深夜の告白である。
ちなみに原題は「倍額補償」。


◆保険勧誘員をたらしこんで、夫殺しの保険金詐欺を仕組むのがバーバラ・スタンウィックの人妻、このとき30代半ばを過ぎているはずだが、こんな美女にお色気で迫られたら、そら断れんわなあと思ってしまう。いってみれば悪女の魅力!もういいわい、行けるところまで行ってしまおかという気になるかもしれない。
日頃から保険金の不正請求にうるさいロビンスンの部長曰く
“市電に乗ったふたりは終点まで降りられない、そしてそこは墓場だ”
そう、そのとおりにならざるを得ない。見方を変えれば、欲得と愛情が入り混じった男女の風変わりなラヴロマンスである。ゼニカネだけになったらやりきれない、そこが救いになっている。

◆ビリー・ワイルダー、コメディやってよし、サスペンスやってよしの達者な監督さんである。この映画でもこれでもかとばかり、ハラハラシーンを演出してくれる。
松葉杖の主人公が事故偽装のため列車の最後尾の展望車両に行くも、おしゃべりな親切男が居座っていてなかなか立ち去らない、またその男が後日保険会社に現れたりするのである。観客はいつのまにか主人公に感情移入してハラハラドキドキする仕掛け、その辺は憎たらしいぐらいである。
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by chaotzu | 2005-11-25 23:00 | 外国映画


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