マイ・ラスト・ソング

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2005年 11月 27日

【DVD】「ロング・エンゲージメント」 犬のオナラは幸運の前兆なの

◆2年前に亡くなったフランス・ミステリの大家セバスチャン・ジャプリゾの小説「シンデレラの罠」がはじめて日本で翻訳されたときの紹介惹句。
“私は事件の探偵であり、証人であり、被害者であり、そのうえ犯人です。いったい私は何者でしょうか?”
たぶん、これまでのミステリ出版史上、いちばんド派手なコピー(笑)。
そのジャプリゾ原作の映画をみる。先述のコピーにちなむと、
“この映画は戦争映画であり、ミステリ映画でありかつファンタジー映画であり、そのうえ恋愛映画です”となる。
一風変わった映画であることは間違いない、はなしはややこしいがよく出来ている。

b0036803_22105227.jpg◆2004年フランス映画。タイトルを直訳すれば「長い婚約期間」、第一次世界大戦に出征し戦死とされた婚約者は必ず生きていると、己の直感をひたすら信じて突き進む女性の物語である。
技巧派ジャプリゾの原作に監督が「アメリ」のジャン・ビエール・ジュネとなれば、一筋縄ではいかない。もう内容てんこもりで凝りまくっている。お腹いっぱいになりそうだ。
セピア調の独特な画像も美しい。


◆戦争映画としてだけでも相当な迫力である。乱れとぶ銃器の火線、咆哮する大砲、ドイツ軍の戦闘機アルバトロス、そしてじめついた塹壕。第一次大戦はものすごい人命の消耗戦でもあったらしいが、それを彷彿させる。
最前線のビンゴ・クレプスキュール(黄昏のビンゴ)、ここでは兵隊の生命なんか虫けらみたいなものである。厭戦気分が充満する兵士と無責任な将校、手を自傷して戦場を離脱しようとする兵士5人が敵前逃亡で死刑宣告されたうえ、塹壕から放り出されドイツ軍の銃火にさらされる。はじめこの5人の区別がなかなかつきにくいのである(苦笑)。
ともかく、そのなかに、ヒロインの婚約者がいたわけだ……。

◆ヒロインを演じるのは「アメリ」のオドレィ・トトゥ、
“夕食の前に、犬が部屋に飛び込んできたら、(婚約者の)マネクは生きている”
など縁起をしょっちゅうかついでいるのが微笑ましい。ヒロインを取り巻く人たちも善人ぞろいである。叔父さんが常連のドミニク・ピノン、毎度自転車で駆け込んでくる郵便屋さんとのやりとりが笑わせる。そして「イタチより悪賢い」が売りの私立探偵、車椅子にひっかかる弁護士さんなど、犬やネコまで実に可愛らしい。ヒロインの周辺は残虐な戦争場面ととことん対照的である。甘いかもしれないがそれで救われている。

◆基本はミステリ映画である。伏線もちゃんと張っており、アンフェアなところはない。ただし、はなしが錯綜しており、いっぺんみただけでは分かりづらいかもしれない。トリックの核心はジャプリゾの得意手であると種明かしすればそれまでだが、ミステリ映画としても一級品に仕上がっている。
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by chaotzu | 2005-11-27 22:14 | 外国映画


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