マイ・ラスト・ソング

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2005年 11月 28日

【DVD】「毒薬と老嬢」 寒くなればキャプラ

◆日本人からみて西洋人の顔はなかなか区別がつきにくいというが、ついこの前までワタシも、ケーリー・グラントとグレゴリー・ペックをよく混同していたのである。どうも、オードリ・ヘブバーンとの共演つながりでごっちゃになっているらしく、「シャレード」がケーリー・グラント、「ローマの休日」はグレゴリー・ペックなんであるが、これがなかなか覚えられない。真面目な固い役はペック、軽妙な方はグラントと憶えておけばよいのだろうが、グラントの役柄が実に幅広くて、なんでもありなのだ。
本日はそんなケーリー・グラントのドタバタコメディをみる。

b0036803_23145642.jpg◆1944年アメリカ映画、F・キャプラ監督にしては珍しいドタバタ喜劇であるが、さすがに達者なものである。
もともとはブロードウェー大ヒット劇の翻案らしい。日本でも淡島千景と淡路恵子のコンビによる舞台化があったらしいがよく知らない。かつての駅前ヒロインが老嬢役とは歳月のうつろいを感じるが、それはそれとして、いま見直してみるとけっこうヤバイ映画でもある。


◆ニューヨーク・ブルックリンに住むブルースター姉妹、といってもかなりのばあさんであるが、この二人は孤独な老人を天国に送ることを功徳と思いこんでおり、既に12人もあの世に送りだして地下室に埋めている。はっきり云って毒殺魔である。とはいっても、日本のタリウム娘とはちがって、ひたすら陽気で罪の意識なんぞまるでない。甥っ子のケーリー・グラントに得々と毒薬の調合を説明したりする。
“4リットルのワインにヒ素をスプーン一杯、ストリキニーネを半匙、それにひとつまみの青酸カリ”
“ひとりはおいしいと云っていたわよ”
要するに二人とも狂っている。
ブルースター家にはもうひとりおかしいのがいて、自分のことをルーズベルト大統領だと思い込んでいる。始終、突撃!とわめいて階段を駆け上ったりラッパを吹き鳴らしたりで、ご近所の迷惑になっている。そのため老姉妹の異常さが隠されてしまい、それどころか極めつけの善人で通っている。

◆つまるところ、ブルースター家という精神異常者を輩出する一家の物語でもある。まるでヴァン・ダインのなんとか家殺人事件みたいである。結婚届直前のグラントは両伯母の秘密を知ったことから、ブルースター家の特異な血統の秘密を察知し、婚約の履行を逡巡してしまう。気を取り直して、まずは近所迷惑のいとこから精神病院に送りだすことだ……。婚約者を放り出して作業にとりかかるが、そこにもうひとりキ○ガイが戻ってくる。グラントの実兄で、これが整形してフランケンみたいな顔つきの殺人鬼なんである。ここから、はなしがドタバタしっちゃかめっちゃかになっていく。

◆おそらく、現在であればあちこち禁忌だらけでとても製作できないキ○ガイだらけの物語であるのに、それが大笑いのコメディになってしまう。
両伯母の殺人記録12人にフランケン甥が対抗心をメラメラ燃やすところや、巡回の巡査が芝居マニアでさるぐつわをかまされたグラントにえんえんと創作を語ったり、新婚旅行で呼んだタクシーの運転手がずっと待ちぼうけされたり、間をおかないギャグが連続する。もうとても収拾がつかないのではと心配になるぐらい、ドタバタするが、ラストはお見事、鮮やかにきちんと着地を決めてくれる。さすが、F・キャプラ監督だ。
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by chaotzu | 2005-11-28 23:21 | 外国映画


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