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マイ・ラスト・ソング

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2005年 11月 29日

【DVD】 「「ふくろう」 恐れ入りました91歳監督の実験作

◆舞台劇の映画化あるいは映画の舞台化という例は多々あるが、舞台劇の様式そのまんまを映画にもってきたという、これまで例のない実験的作品である。場面はある開拓農家の囲炉裏端でほとんど固定しており、登場人物も前半はずっと2~3人である。舞台と違うのは、俳優のアップがあることぐらいか。低予算を逆手にとったやり方といえるかもしれない。
その点では近代映画協会の起死回生作品「裸の島」に通じるものがある。

【DVD】 「「ふくろう」 恐れ入りました91歳監督の実験作_b0036803_23281674.jpg◆2003年日本映画(近代映画協会)、今年93歳になる新藤兼人監督による、現時点での最新作である。脚本も書いているが、なにより、その若々しい感性に驚いてしまう、歳をとるとともに、大胆かつ過激になっていくようだ。本作品では、伊藤歩のオール・ヌード、しかも無修正~が突然出てきてギョッとしたりする。90歳を超えてエロスの極致にも挑戦しているみたいだ(笑)。つくづく人間は年齢ではないんだと思い知る。
新藤監督自身の人生も波乱万丈であるが、経済的成功を度外視して、独立プロで好きな作品づくりに打ち込んできたことがストレスの発散になって、長生きをもたらしているのだろうか。そして、女性への興味が旺盛なことも元気の秘密なんだろうな、そう思わずにはいられない(笑)。

◆東北地方のある辺鄙な開拓村、廃村寸前で住んでいるのは大竹しのぶと伊藤歩母娘の二人だけ。最初に登場する風体がすごい、汚れきった身体にボロボロの服、おまけに腹ペコで息も絶え絶えの有様である。唇も干からびている。木の根っこをかじって生きのびるのも嫌になったふたりの生存計画、それがなんとも凄まじい。
葬式の黒白幕と開拓団の赤い旗を裁断して、古ミシンで衣装づくりをはじめる。そして行水で体の汚れを落とし、絵の具で間に合わせの化粧をして、さあ作戦開始……。

◆♪泣きなさい~、笑いなさい~
作戦が「順調」に進むとともに、食事がランクアップしていく様子がなんとも可笑しい。
うな丼+カレーライス+コカコーラ→まぐろさしみ+ビール→手巻き寿司→すきやき(笑)
そして、電気が復活、水道も復活する。シャワーにありつく母娘は嬉しそうであるが、たった一軒のためにどれだけの手間ひまかけて送電や送水をしているか、係員から言われたりしている。
これは、お国の政策で満州に新天地を求めた農民が夢敗れて命からがら引揚したものの、今度は国内で棄民扱いされる悲劇に、その子孫が復讐するはなしである。民話調かつユーモラスに展開して合間合間にふくろうが登場、ポーポーッと鳴く。

◆なんといっても、大竹しのぶである。撮影時45歳、目じりや口元のシワは隠せないが、よほどの自信がないと出来ないだろう。手作りの黒白ワンピースにはちゃんとスリットがあって、ときどき下着をみせたりする。きわどいセリフもズバズバ、それでも艶かしい。
こちらも恐れ入って、「二代目杉村春子!」決定というしかない。

by chaotzu | 2005-11-29 23:33 | 日本映画


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