マイ・ラスト・ソング

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2005年 11月 30日

【DVD】「ベッカムに恋して」 英国のインド人社会

◆かつて七つの海を越えた大英帝国の遺産ゆえか、国際都市ロンドンではさまざまな人種が街をかっ歩している。とりわけインド系のひとが多い、スーパーや八百屋ではインド人の経営者が目立っている。ところが、そういったインド系の人が実際にイギリスでどんな暮らしをしているのか、これまでほとんど知らなかった。
そんなインド系イギリス人のコミュニティを描いた映画をみる。インド系でも比較的金持ち層の家庭の設定であるかもしれないが、なにかと初物づくしで珍しいことはたしか。

b0036803_22213626.jpg◆2002年イギリス他映画、インド人がつくったイギリスの映画である。タイトルからみる前はちゃらちゃらした子供っぽい内容を想像していたが、なかなかどうしてよく出来た映画で思わぬひろい物だった。しかし、これほどタイトルとギャップのある映画も珍しい(笑)。
イギリスではインド系の人々が独特の地歩を固めているが、この映画のなかの男性はターバンやヒゲにこだわる人とそうでないひとに二極化しているようだし、女性も民族衣装派と西洋衣装派に別れている。そして、若者は公園でサッカー遊びに興じたり、あるいはカーセックスに興味を抱いたりしている、要するに白人の若者とあまり変わらない。なんとなく、これからの多民族社会のあり方について考えさせられる。娯楽性もしっかりあって、幅広い年齢層で愉しめるノリのいい映画である。

◆映画の舞台はロンドンの西部郊外ハウンズロウ、ヒースロー空港の近くである。インド系住民のコミュニテイがあるのだろうか。
主人公はサッカーの上手な少女ジェスミンダ、略してジェス。自分の部屋にデビッド・ベッカムの坊主頭写真を飾っており、ベッカムといっしょにプレーしてゴールを決めることを夢想している。ところが、両親はインド人の慣習伝統を守ることにうるさい。女の子が肌をさらすような格好などとんでもない。いい大学に入って弁護士になってほしい。もちろん結婚相手はインド人だ。白人黒人の相手はだめ、ましてイスラムなんかとんでもない。おまけに、かつてケニアでクリケットの名投手だった父親はイギリス人のチームに受け入れてもらえなかった。娘には同じ轍を踏ませたくない。まあ、そんな状況あれやこれやがあって、両親には内緒でサッカーチームに入っているのである。

◆試合中、相手選手から「パキ」と云われて激昂する。ラフ・プレーよりもパキスタン人呼ばわりされたほうが悔しいのだ。それほどイスラムへの反発はものすごいものがある。そのいっぽうで、ジェスが恋心を寄せるのはアイルランド人の青年監督である。女子チームの監督就任にあたって、契約で選手との恋愛禁止条項があるらしく普段はそっけないが、インド人のジェスには時々優しいときがある。これもアイルランド人という設定がミソなんだろう。
このほか、ジェスの幼なじみの男の子はホモで、ベッカムを本気で好きだと告白したりする。インド系の若者社会もずいぶん変わりつつあるようだ。

◆ふつうのイギリス人家庭も登場する。ジェスのチームメイトであるジュールズ一家、母親は娘が男の子に興味をもたない様子が気になってならない。もしかしてレスビアンだろうかと勝手に悩んだりしている(笑)。いろいろ男の気をひくファッションをアドバイスしたり、胸を大きくみせる小道具を指南したりするが、娘はサッカーに夢中で聞く耳もたない。たまりかねて云う。
“スパイスガールズで男がいないのは、スポーティ・スパイスだけだよ”
こんなことまで云う母親ってありか(笑)。

◆ラストはお約束の決勝戦、ところがあいにく姉の結婚式とぶつかってしまった。さあどうする。インド人社会の結婚式の大いなる盛り上がりとサッカー試合のクライマックス・シーンが、交互にリンクしつつ映し出される。いやなかなか達者なもんでありました。
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by chaotzu | 2005-11-30 22:34 | 外国映画


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