2005年 12月 06日

【DVD】「下町の太陽」 青山ミチと石川進とツイストの時代

◆昨年公開「ハウルの動く城」でヒロインの声を演じた倍賞千恵子、いまさらこんなこと書くのも照れくさいが、こどものころ憧れの女優さんだった。今でこそ病気等あってかだいぶ老けてしまったが、俳優としてほとんどパーフェクトだったように思う。芝居も踊りもそして歌もみんなうまい、この前NHKBSで「男はつらいよ・寅次郎頑張れ」をみたが、さくら役として油ののりきった時期である、いや実に懐かしいこと。
東京は北区滝野川の育ち、父親は都電の運転手、姉弟はたしか4人?いて、妹の美津子は有名であるが、弟も東京六大学野球のスター選手で、かの江川から本塁打を打ったことがあるはず。
当時既に日活の大スターであった吉永小百合に対抗するべく「下町の太陽」として売り出された。その同名映画をみる。

b0036803_234179.jpg◆1963年松竹映画、モノクロ。前の年に倍賞千恵子が歌った「下町の太陽」が大ヒットしたので、そのおこぼれを狙った企画である。
日本映画界得意のいわゆる歌謡映画であり、たいていはクズ映画と決まっているが、監督が新進気鋭(当時)の山田洋次とくればそうはならない。東京下町の若年労働者の姿を描いて、ちょっとひねった青春映画として仕上げている。なにより、映画デビュー間もない頃の倍賞千恵子にお目にかかれるのである。


◆倍賞千恵子は石鹸工場の女工さん、荒川そばの日当たりの悪い住宅密集地すなわち下町(墨田区?)に住んでいる、住民はみなハートウォーミングなひとばかりだ。なかには子どもを亡くして気のふれた老人(東野英治郎)もいるが、みな暖かく見守っている。はっきり云って「警察日記」のパクリであるが、同じ役者というのがミソ(笑)。
家族は5人、祖母と父親そして弟2人だ。母親は病死している。運送会社に勤めているらしい父親の月収は28000円ぐらい、玉子酒が唯一の愉しみである。大学受験を控えた弟だけは食事なども特別待遇である。いい大学に入りさえすれば下町を脱出できる、そういう信仰が根強く生きていた。そのため家族総出で応援しており、勉強の邪魔にならぬよう、みんな声をたてずに静かに暮らしている。末弟はいつも二段ベッドにいる、そんな時代だった。

◆同じ工場の庶務課男性(早川保)と恋仲である。彼氏は内部登用試験に合格して丸の内の本社に勤めるのが夢だ。早く下町を脱出したくてならない。この点、下町が好きだというヒロインと対照的である。
“隅田川を越えると景色が変わるね、ああ早く団地に住みたいなあ、郊外の団地に”
なにしろ、同僚の結婚式で
“倍率200分の1の光ヶ丘団地に当選というご幸運”
という祝辞があったりする時代である。
庶務課長が父親の軍隊時代の部下であるので、そのコネ情報もつかって懸命に勉強しているが、常務にコネがあるライバル同僚(待田京介)もいたりと、けっこうはなしは生臭い。上昇志向といえば聞こえはいいが、実際はかなり俗物根性もあったりする。この辺り、同じ松竹の巨匠監督である小津安二郎に対する当てつけみたいなものも見え隠れするように感じてしまう(笑)。

◆石鹸工場の女工さんはみなブルーカラーの男性工員なんぞは不良視している。サラリーマンと結婚するのが夢である。その夢を適えてマンモス団地に住むかつての同僚宅を訪問するが、新婚生活があまり面白くなさそうである。夫は帰ってくるなりバタンキューの毎日でろくに会話もないらしい。それでも化粧して夫の帰りを待つという旧友のことばに考え込んでしまうヒロイン……。
いっぽう、たまたま同じ京成電車で通勤している鉄工所工員の勝呂誉は、倍賞千恵子が気になってならない。こちらは熱い溶けた鉄が流れるところが好きだという、根っからのブルーカラー。それにしても、勝呂誉の演技は大根すぎと思うしかない(苦笑)。
こうなると、なんなく結末が予想できてしまいそうだ。山田洋次的といえばよいのだろうか、生硬すぎるといえぱそうかもしれない。
そう、あのさくらと博の結婚話に至るその予行演習みたいなものをやっているのである。

♪下町の空に輝く太陽は
 喜びも悲しみも映すガラス窓
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by chaotzu | 2005-12-06 23:17 | 日本映画


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