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2006年 01月 03日

【NHKBS】「砲艦サンパブロ」混沌時代の中国描く大作

◆日中戦争以前の中国近代史、目まぐるしく変転するので、なかなかおぼえにくい。孫文率いる辛亥革命(1911年)で清朝が倒れたことは承知しているが、そのあとが何やら群雄割拠状態でワケワカメなのだ。
孫文や蒋介石の中華民国、毛沢東他の中国共産党、旧清朝の将軍であった袁世凱その他軍閥……、国中が実質分裂状態であって、おまけに西洋諸国や日本の権益も入り乱れている。要するにタ゜レが当時の中国を支配していたのかさっぱり分からない。国のかたちをなしていなかったそんな混沌状態の中国をやがてまとめていくのは、外国人排斥運動である。そういえば、日本の明治維新もはじめは攘夷思想が原動力になった。まあ、そんな時代の中国のはなし。

b0036803_22451646.jpg◆1966年アメリカ映画、「サウンド・オブ・ミュージック」のロバート・ワイズ監督による超大作であるが、がらりと趣向を変えてきたのでびっくり。職人監督の本領発揮というべきか。
この映画の主役というべきサンパブロ号はいまや死語となった「砲艦」、「軍艦」の一種であるがその小型版みたいなものか、この映画のなかではアメリカの既得権益を守るべく中国沿岸部や長江流域の巡視にあたっているから、巡視艇みたいでもある。もとは19世紀末の米西戦争による戦利品という想定であり、ポロ船であるが、ベテランの機関兵であるマックィーンは、こじんまりした砲艦のほうが戦艦より居心地がいいと考えている。
ところが、サンパブロ号に着任してびっくり、機関室にはたくさんの中国人が働いている。口出しすると中国人ボスがイヤがる。機関室だけではない、船中に中国人が住み着いている。コックに散髪屋、洗濯夫、甲板掃除……。別にアメリカ軍が雇用しているわけではない、雑用手伝いと食糧の交換でいつのまにかたくさん入り込んでいるのだ。だから、砲艦内部は二重権力状態になっていて、船長も機関室には入ってこない。

◆誠実な水兵であるマックィーンには他の米兵のような中国人蔑視の考えはない。なんとかして、中国人の負け犬根性を払拭したいと思っている。とくにマコ岩松演じる中国人青年に蒸気機関の説明をしたり、ボクシングのセコンドについて応援したりするエビソードは感動的である。だけど、中国民衆の完全独立運動は激しくなるいっぽうで、「ゴーホーム・外国の悪魔」がスローガンになり、アメリカ人と仲良くする中国人は見せしめにあったりする。マコ岩松も裏切り者として公開処刑のような目にあい、マックィーンは悲痛な決断をしなければならない。サンパブロ号にいた中国人もやがていなくなる。そして、中国人の小船が砲艦の周囲を取り囲むなど、一触即発の緊張関係に発展していく。

◆いったいどこで撮影したのだろうか、中国本土ではないはずだが、見事なまでに当時の中国らしい雰囲気を再現している。そして、アメリカ人も中国人もステレオタイプに描いていない。悪い中国人もおれば、狡いアメリカ人もいるといった具合。とりわけ、アメリカ人伝道師は呑気というか、せっかく救出に来た米兵に、国籍を離脱したからもう安全だ、帰れというありさま、かくてマックイーンたちは局地的な戦禍のなかに巻き込まれていく。
歴史映画であり、戦争映画であり、異文化が衝突する映画でもある。3時間を超える大作だが飽きさせない、それにしても、スティーヴ・マックィーンって、いい俳優だったんだなあ。
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by chaotzu | 2006-01-03 22:55 | 外国映画


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