2006年 01月 09日

【DVD】「アンドロメダ……」 アメリカ版手塚治虫のSF世界

◆現在1700点ほど刊行中のハヤカワ・ポケミス、その記念すべき1000点目が出たのは今から35年も前の1970年4月、そして注目の作品はアメリカ探偵作家クラブ賞受賞作とはいえ、なんと無名の26歳医学生が書いたものだった。
ジェフリー・ハドソン「緊急の場合は」。
よほど将来を嘱望されていたのだろう。その眼に狂いはなく、たしかに大ベストセラー作家になった。ところが、好奇心旺盛なのか作品はどんどんミステリの枠からはみ出していく、SF、冒険、企業、災害、そして原作の多くが映画化されていく。そのうちに作家本人が監督を手がけたりもする。医者出身で多芸多才なひと、そしてあらゆる分野に際限なく枝葉を広げていく、こうみると、なんだか日本の手塚治虫によく似ているのである。
現在はマイクル・クライトンで著名、大当たりした「ジュラシック・パーク」に先立つSFミステリの映画化作品をみる。巨大怪獣こそ出てこないが、サスペンスフルなSF佳作である。

b0036803_2243356.jpg◆1971年アメリカ映画、ニューメキシコの小さな村に人工衛星が落下し、村民の大半と回収に出向いた兵士が絶命するという発端。人類と地球外生命体のファースト・コンタクトのはなしであるが、その相手は2ミクロンほどの微細な結晶体、まあバイキンみたいなもので、接触した生物の血液をたちまち粉末に変えてしまうという極悪病原体である、名づけてアンドロメダ病原体。排泄はなくただ貪るのみ、原爆で焼き尽くしてもそのエネルギーを吸収して増殖するというから、究極無敵の生命体である。ところが、村民がことごとく絶命したなかで、酒飲みのじいさんと泣き叫ぶ赤ちゃんの二人だけはなんともなくぴんぴんしている。それはなぜか?

◆砂漠の地下深くに建設された秘密の研究所で4人の科学者チームによる不眠の研究がはじまる。まず回収した人工衛星にラットを接触させるとたちまちコロリ、サルも同様だ。空気感染にちがいない、次にフィルターを介在して「病原体」のサイズを探る……、この辺りの実験シーンが延々と続くがあまり退屈しない。科学的な説明の段取りがうまいのだろう。
また、この研究所自体の設定も面白い、地下深く5層構造になっており、深く潜るほど、無菌状態が徹底される。科学者も一段階下りるつど、裸になって洗浄され消毒される。表面の老化した皮膚が白い灰になるほど放射線で灼かれたりする。許容される食べ物も各レベル毎に変わってくるなど、この辺りの細密描写が凝っている。ときどきアナログ風の機器が登場するのも、またご愛嬌である。

◆この映画では、仄めかす程度にとどめているが、もともとは国防省が生物兵器を研究するために設置した研究所である。あるいは人工衛星も異種生命体の採取が目的であったかもしれない。しかし、研究どころか、地球外生命との「戦場」になってしまう。おまけに研究所各層のシールドが破れたら5分以内に核で自爆するという設定である。アンドロメダの弱点を突きとめねばならんし、自爆設定を強制終了させにゃならんはで、ラストはてんわやんわで、ハラハラドキドキになる、というか無理やりそんな展開にもっていく(笑)。
それにしても、人類滅亡の危機であるというのに、バタバタしているのはたった4人の学者だけである。政府の役人や軍部はけっこう呑気にかまえていたりする。み終ってから、ハラハラさせやがって損したなと思ってしまうのは、いったいなんだ(苦笑)。
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by chaotzu | 2006-01-09 22:09 | 外国映画


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