マイ・ラスト・ソング

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2006年 01月 27日

【DVD】「影なき狙撃者」 ダイヤのクィーンにご用心

◆米ソ冷戦が続いた20世紀の後半は、万事猜疑心がはびこる時代であった。お互いに相手陣営の策謀を批難するやりとりの応酬があって、さらにそれぞれの国の内部でも国際的な謀略論が大流行りした。ソ連や中共の場合は粛清、そしてアメリカでは赤狩りである。ケネデイ大統領暗殺の背景にも共産陣営の魔手が取り沙汰されたりしている、まあなんでもあり。さて実際に両陣営が直接戦火を交えた朝鮮戦争、捕虜になったアメリカ人は帰国してからも相当洗脳工作を疑われたことだろう。そんなことを彷彿させる映画である。

b0036803_22272577.jpg◆1962年アメリカ映画、モノクロ。フランク・シナトラの俳優としてのキャリアのなかでは後期に属する作品、共産陣営の洗脳工作をテーマとした異色作である。1952年朝鮮戦争の最中、シナトラの小隊が不意打ちにあってヘリコプターでどこかに拉致される。気がつけばニュージャージーのホテルで開かれている園芸クラブの会合に顔を出している。ところが、園芸クラブのおばちゃん連が途中で東洋人に入れ替わるという不思議な出だし。実際は満州にある中共軍の洗脳施設、ところが米軍捕虜には園芸クラブの会合にみえるという洗脳工作のありさまを、うまく映像化している。

◆実質的な主役はシナトラの部下であるローレンス・ハーベイ演じる軍曹、徹底した無表情のまま、洗脳医師の命ずるままに同僚兵を絞殺したり射殺する。それが帰国したときは戦場の英雄として迎えられる。義理の父親はマッカーシーを連想させる反共議員であるし、母親(なんと息子役のハーベイより3歳だけ年長だったそうな)は口うるさい。政治に利用されるワシントンを嫌ってニューヨークに勤める。ところが、あるモノを見せられた途端、たちまち面前の人間の支配下に置かれるという潜在催眠下におかれていたのである。究極の時限兵器、すなわち影なき狙撃者であるが、よくよく考えたらそんなのありかいという設定なんである。それでもなんとなく納得させられてしまう(笑)。役者の力もあるかもしれない。

◆ここから先はミステリ趣向である。ではいったいダレがハーベイを操るのか? 意外性はあるし、ラストのおちもなかなかやるわいである。また、共産陣営の非情な洗脳工作を採りあげるいっぽうで、アメリカにはびこった赤狩りの風潮も批判している。眼目は赤狩り批判にあって、洗脳云々はそのカムフラージュかもしれない。だとしたらうまく考えたものだ。
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by chaotzu | 2006-01-27 23:55 | 外国映画


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