マイ・ラスト・ソング

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2006年 01月 28日

【DVD】 「続拝啓天皇陛下様」 陛下、こんな赤子もおりました

◆亡くなった名優、長谷川一夫の軍隊時代のエピソードを同僚兵であったひとから聞いたことがある。ずっと昔のことである。昔の軍隊であり、とくに有名人だからといって特別待遇があったわけではないが、とにかく評判がべらぽうによかったそうな。裏表なくかいがいしく働く、ひとが嫌がることは率先して手を上げる。それで本人はケロッとしていたという。
“なあに、この程度の苦労なんて芸事の修練にくらべれば、苦労のうちに入りませんよ”
う~ん、すごいなあ。マンダム(意味不明)。

b0036803_22341190.jpg◆1964年松竹映画、続と銘打たれているが、前作に続くものではない。
今度の渥美清演じる山口善助は、貧困ゆえに拾った魚で家族が全滅、天涯孤独になるというものスゴイ設定。勉強の世話をやいてくれたオナゴ先生(岩下志麻)に花を捧げるつもりがはずみで抱きついてしまい、少年院送りになるという運のなさ。出所後は汚わい屋稼業で、悪童たちからは「ウンコ善助」と呼ばれている。口をきく友人といえば、周りから排斥されている中国人散髪屋の王万林夫婦(小沢昭一&南田洋子)だけ。まあ誰からも無視される悲惨な青春期であったが、そんなオトコでも、軍隊は別世界だった。叱られるにしろとにかく平等に扱ってくれる。みんな陛下の赤子だ。

◆支那事変で召集された渥美清は北京にある軍犬育成部隊に配属される。ここでシェパードの友春号に出遭う。この犬が可愛い、とことん主人に忠実を尽くす。渥美清が営倉に入れられたら、じっと建物のそばで待っている。ウンコ善助は感激の涙である。敗戦によってやむなくこの友春号と別離する場面もなかなか感動ものであるし、軍用犬の教官役藤山寛もなかなかいい味を出している。

◆とはいっても、軍隊場面は全体の三分の一ほどで済んでしまう。あとは敗戦後の荒廃した日本で必死に生きる人間たちの群像劇である。雇われ仕事で出向いた先は闇市にある三国人食堂の打ちこわし、そこでばったり王万林と再会する。その縁でカツギやになり、友春号の元飼主を京都南禅寺まで訪ねてみれば、財産税で息も絶え絶えの旧家、シベリアに抑留された夫の留守をひとり守る夫人(久我美子)は栄養失調でふらふらしている。ダレも他人のことなどかまっていられない時代であったが、渥美清はせっせと京都に出かけて支援する。ヤミで手に入れたラックス石鹸を米軍MPに咎められて、沖縄送り?にされたりと、敗戦直後の人物ドラマが点描される。なかでは、中国人を演じた小沢昭一が抜群の存在感である。

◆脚本に山田洋次が参加している。もしも寅さんが結婚していたら、いったいどうなっていただろう。もしかして、その解のひとつが提示されたかもしれない。大阪城近くのバタヤ部落で昔馴染みの宮城まり子に邂逅する。米軍兵に暴行された宮城まり子は娼婦になっていたが、渥美清はこだわらない。やがて二人は結婚する。そこから誤解等いろいろあって、女の赤ちゃんを遺して妻は逝ってしまう。
ラストは赤い夕日に照らされたなか、ねんねこ半てんで赤ちゃんを背負った渥美清が子犬を連れて、どこかに去っていく。う~ん、寅さん映画がこんな最後になっていたとしたら、ファンはとうてい承知しないでしょうな。
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by chaotzu | 2006-01-28 22:38 | 日本映画


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