2006年 02月 01日

【NHKBS】 「馬上の二人」 フォード監督によるアメリカの拉致悲劇

◆アメリカ・ユタ州の映画祭で、横田めぐみさん拉致事件のドキュメント映画が評判になったそうだ。20世紀の後半に、なお野蛮な国家犯罪がまかりとおっていたことを知ったアメリカ人はびっくりしたことだろう。ただし、「拉致映画」については、ハリウッドにも先達があることはある。ジョン・フォード監督の「捜索者」(1956年)と「馬上の二人」(1961年)である。いずれも、西部劇であるがドンパチはあまりなく、インディアン(今は先住民というらしいが)による白人子女の拉致がテーマ。もっとも、アメリカ人にとっては、大昔の西部開拓時代におけるインディアンとの「不幸な歴史」のなかのヒトコマであり、インディアン迫害(虐殺)といっしょに葬り去りたい記憶だろう。日本人にとって北朝鮮による拉致は今なお進行中の事件である。

b0036803_22124342.jpg◆1961年アメリカ映画、「捜索者」が拉致された白人少女を取り返して家庭に戻すまでの救出者側の物語とすれば、この映画は取り戻して、さあそれがどうなったかという物語である。フォード監督にしてみれば、1作ではまだ語り尽くせないところがあったのかもしれない。
ジェームズ・スチュワート演じる保安官が騎兵隊の隊長から、コマンチに拉致された白人子女の救出を頼まれる。開拓民が砦まで陳情に大挙して押し寄せてくるが、いま騎兵隊のほうではコマンチとあまり事を構えたくないのだ。スチュアート保安官はあまり気が進まない。もう10何年もたっている。すっかりインディアンの文化に染まっているだろう。刺青をして獣の油脂を塗りたくって、おまけに子供までいたらどうするんだ。だけど開拓民の熱心な陳情と高額な報酬に承諾する。J・スチュアートは珍しくも金銭欲の強い保安官という設定である。

◆コマンチ酋長(白人が演じている)との交渉は淡々と進み、武闘派コマンチ(スキンヘッドでものすごく強そう)の反対はあったが、ライフル銃との交換で決着する。拉致された白人は4人いたが、みんなそれなりに溶け込んでいる。結局、先の武闘派若頭格の妻になっている若い女エレナと少年の2人を砦に連れて帰る。途中その武闘派をあっけなく返り討ちにする。ほとんど闘うシーンのない西部劇である。
戻ってみると、はたして開拓民の反発しきりである。こんなの絶対うちの子じゃない。インディアンに抱かれた女なんて面汚しだ。
ジミーおじさんが、エレナをドレスアップさせてダンスパーティに連れていくなど気をつかうが、ただ好奇の目にさらされるだけである。いっぽう、少年のほうも溶け込めずに事件を起こしてしまう。結局のところ、なにひとついいところがないじゃんかと思っていたら、ラストにちょっとしたオチがあって、それでやっと救われる。

◆タイトルの「馬上の二人」、J・スチュアートと騎兵隊の友人R・ウィドマークだろうと、決めつけていたが、どうもそうじゃなさそうだ。はなしの展開からは、スチュアートと救出したエレナの二人とみたほうがしっくりくる。「馬車上の二人」である。
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by chaotzu | 2006-02-01 23:55 | 外国映画


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