2006年 02月 02日

いまそこにある危機

◆名古屋で起きた認知症の妻(74歳)を殺した夫(68歳)の飛び降り自殺事件、執行猶予判決の僅か4日後である。なんとも痛ましくてやりきれない。ずっと自責の念にかられていたのが、現実に拘置所から釈放され自宅に戻ってから、とうとう耐え切れなくなったのだろうか。なんといっても、30年以上連れ添った夫婦である。子供もおらず孤独も身にしみたとすれば、あまりにも哀しい。

◆配偶者が目の前でだんだん人間らしさを失っていく、異常な行動をとり、目を離すと徘徊する、となればすぐ傍にいる人間は堪らないだろう。なんとかして、記憶の一端でも取り戻してほしい、そう願うはずだ。あの手この手必死の思いで尽くす、それが好物のカレーライスをみせてもなんの反応もしなくなる。やがて絶望感にとらわれて疲れ果てるだけである。そんな老老介護ゆえの悲劇が、現実にいくらでも起きている。
これから高齢化社会がどんどん進むにつれて、介護殺人の悲劇はさらに増えるだろう。誰にも迷惑かけたくないと社会の片隅で生真面目に生きているひとほど、そういう目にあうだろう。楢山節の姥捨てや、安楽死が平然と語られる時代がくるかもしれない。老人でおまけに病気そして経済的富者でもないとなれば、社会から真っ先に切り捨てられる弱者である。いっそ早目にポックリ逝きたいと念じる社会なんて、どうみても不健康である。

◆防衛庁の省への昇格、国連常任理事国入り、皇室典範の改正問題、そして某国が脅威云々、そんなことはちっとも焦眉の急ではないし、喫緊の課題でもない。本当の脅威は弱者を平然と排除していく社会の出現ではないのか。それは弱肉強食の物騒なジャングル社会でもある。
「格差は問題ない」「格差は必要だ」という考えもあるかもしれない、しかし、それがいき過ぎると、やがて社会は崩壊するだろう。その前兆であるように思われてならない。
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by chaotzu | 2006-02-02 22:39 | 時事


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