マイ・ラスト・ソング

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カテゴリ:外国映画( 98 )


2006年 02月 03日

【DVD】 「コーラス」 地の底に天使の歌声ひびく

◆教師もの映画といえば、音楽かスポーツものが多い。それだけ物語にしやすいということだろう。例外的に、「ビューチフル・マインド」なる数学もの映画があることはある。ただし、主役のラッセル・クロウが少しも世界的な数学者にみえてこないのである。熱演すればするほど粗暴な刑事や剣闘士のイメージが重なってしまう(苦笑)。その意味では、現在公開中の「博士の愛した数式」は稀有な例外になるかもしれない。
話を戻す。やはり、教師ものは音楽を扱えば半分ラクショーなんだろう。「ミュージック・オブ・ハート」「陽のあたる教室」「スクール・オブ・ロツク」……、話で泣かせて音楽で酔わせである。

b0036803_10455322.jpg◆2004年フランス映画、冒頭、ジャック・ペラン演じる世界的指揮者が登場、堂に入った指揮ぶりでさすが役者はちがうなあと感心する。その指揮者が旧友と再会して、過去を回想するというはじまり。
大戦直後、リヨン近くの寄宿学校が舞台である。寄宿学校といっても、金持ち子弟対象ではない、その逆で孤児とか寡婦などのビンボー人対象の学校である。金持ち貴族など篤志家の後援で費用を賄っている。この映画で描かれる寄宿学校は理念だけ立派であるが、内実はボロボロ、生徒はみんな学ぶ気がなく反抗的な悪童で、イジメやワルがはびこっている。ただ食事にありつくのが目的で在籍しているという、授業内容もお粗末レベルとしかみえない。
なんとか将軍はなんで亡くなった? 銃殺だよ。おいおいモノスゴイ授業だなあ。
そんなサイテー学校である。名前もすごい、「地の底」といわれている。

◆そんな学校の舎監兼教師に採用された中年の地味な音楽教師、これまで挫折の繰り返しの人生であり、もうひとつ精気もない。ただ生徒には誠実であろうとしている。そんな教師が音楽の天才児に巡りあって、おまけにその子の母親にも惹かれてしまって、がぜんやる気を出す。いってみれば音楽による人生の救済ばなしである。人生に疲れた中年男と不幸な境遇の母子が救われる。
コーラスの練習で悪ガキの素行が直ちに修まるとも思えず、ちょっとご都合すぎるきらい(予定調和)はあるが、いろんなエピソードがからんでくるので、それなりに面白い。

◆俗物精神を具現したみたいな校長=悪役の存在が映画をひきしめる。教育者とは名ばかりで実際は体罰信仰のサディストである。しかも、学校の経費をケチる、どうも着服しているらしいというとんでもない悪党ぶり。慈善学校を食い物にしてなお、勲章まで欲しがっている、悪童連顔負けの偽善者である。この校長がどうなるかももうひとつのお愉しみ。
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by chaotzu | 2006-02-03 23:55 | 外国映画
2006年 02月 02日

【DVD】 「バラキ」 マフィア版仁義なき戦い

◆子供のころ、テレビでチャールズ・ブロンソンの“う~んマンダム”なる男性整髪料のCMが大ヒットした。どれぐらい当たったかというと、マンダムなる整髪料が売れまくったこと、あっという間にバイタリスやMG5などの先発商品に肩を並べてしまった。これでさえない化粧品会社だった丹頂が社名もマンダムに変えたぐらいである。
そして、ブロンソン人気も沸騰した。これぞオトコのなかのオトコを体現する存在になった。それまでの脇役イメージを払拭して、「狼よさらば」とか「雨の訪問者」の主演作品もヒットした。みんな、あごをさすって、“う~んマンダム”とよくやったものであるが、いっちょ前に真似したつもりでも、ヒゲがないからなんともさまにならない。
そんなブロンソンの主演であるが、ヒゲがないとやっぱりもうひとつしまらない(苦笑)。

b0036803_22285188.jpg◆1973年イタリア映画、1963年に米国上院小委員会の聴聞会で実際にあったマフィア幹部バラキの証言を元にしたセミ実録映画。マフィアの世界もたいへんである。トップになると必ず追い落としの目に遭う。暗殺されるか、チクられて国外追放されるかである。建前ではイタリア移民の互助組織といっても、その裏側には人間不信が渦巻いている。そんな裏社会でチャールズ・ブロンソナンはチンピラからボスの運転手に抜擢され、そこそこの幹部級になるのだが、やがて猜疑心の強いボスに疑われる。刑務所に入ってもなお命を狙われるという「賞金首」になってしまう。しまいにぶち切れて、全てを告白する覚悟を固める。

◆コッポラ監督の「ゴッドファーザー」のほうが1年先行するが、ネタは前からあったらしい。関係者が亡くなってやっと映画化に着手できたそうである。イタリア版の「ゴッドファーザー」ともいえるが、こちらはマフィア同士の殺し合いがやたら多くて、親子兄弟や夫婦の愛情物語のほうはかすんでしまった感がある。ドライ度が高すぎて、映画としてはウェット感のある「ゴッドファーザー」に負けてしまったみたいな、まァそんな映画。なにより、ブロンソンが、とてもイタリア系にはみえない。どうみても東欧系であるし、おまけにヒゲもない(苦笑)。
とはいえ、そこそこ面白い。とくに刑務所内部の安全確保でFBI係官と丁々発止のかけひきをする。安全な独房の要求はもちろんのこと、食事の安全性確保にも注文をつける。マフィアの手は刑務所内部にも及んでいる。冷蔵庫を要求して素材から確認しないと、とうてい安心できないという。
う~ん、塀の中が安心できなければ、いったいどこが安心できるのだろうか。「三界に家なし」とは、まさにマフィアの裏切り者にあてはまることばであるなあ。
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by chaotzu | 2006-02-02 22:33 | 外国映画
2006年 02月 01日

【NHKBS】 「馬上の二人」 フォード監督によるアメリカの拉致悲劇

◆アメリカ・ユタ州の映画祭で、横田めぐみさん拉致事件のドキュメント映画が評判になったそうだ。20世紀の後半に、なお野蛮な国家犯罪がまかりとおっていたことを知ったアメリカ人はびっくりしたことだろう。ただし、「拉致映画」については、ハリウッドにも先達があることはある。ジョン・フォード監督の「捜索者」(1956年)と「馬上の二人」(1961年)である。いずれも、西部劇であるがドンパチはあまりなく、インディアン(今は先住民というらしいが)による白人子女の拉致がテーマ。もっとも、アメリカ人にとっては、大昔の西部開拓時代におけるインディアンとの「不幸な歴史」のなかのヒトコマであり、インディアン迫害(虐殺)といっしょに葬り去りたい記憶だろう。日本人にとって北朝鮮による拉致は今なお進行中の事件である。

b0036803_22124342.jpg◆1961年アメリカ映画、「捜索者」が拉致された白人少女を取り返して家庭に戻すまでの救出者側の物語とすれば、この映画は取り戻して、さあそれがどうなったかという物語である。フォード監督にしてみれば、1作ではまだ語り尽くせないところがあったのかもしれない。
ジェームズ・スチュワート演じる保安官が騎兵隊の隊長から、コマンチに拉致された白人子女の救出を頼まれる。開拓民が砦まで陳情に大挙して押し寄せてくるが、いま騎兵隊のほうではコマンチとあまり事を構えたくないのだ。スチュアート保安官はあまり気が進まない。もう10何年もたっている。すっかりインディアンの文化に染まっているだろう。刺青をして獣の油脂を塗りたくって、おまけに子供までいたらどうするんだ。だけど開拓民の熱心な陳情と高額な報酬に承諾する。J・スチュアートは珍しくも金銭欲の強い保安官という設定である。

◆コマンチ酋長(白人が演じている)との交渉は淡々と進み、武闘派コマンチ(スキンヘッドでものすごく強そう)の反対はあったが、ライフル銃との交換で決着する。拉致された白人は4人いたが、みんなそれなりに溶け込んでいる。結局、先の武闘派若頭格の妻になっている若い女エレナと少年の2人を砦に連れて帰る。途中その武闘派をあっけなく返り討ちにする。ほとんど闘うシーンのない西部劇である。
戻ってみると、はたして開拓民の反発しきりである。こんなの絶対うちの子じゃない。インディアンに抱かれた女なんて面汚しだ。
ジミーおじさんが、エレナをドレスアップさせてダンスパーティに連れていくなど気をつかうが、ただ好奇の目にさらされるだけである。いっぽう、少年のほうも溶け込めずに事件を起こしてしまう。結局のところ、なにひとついいところがないじゃんかと思っていたら、ラストにちょっとしたオチがあって、それでやっと救われる。

◆タイトルの「馬上の二人」、J・スチュアートと騎兵隊の友人R・ウィドマークだろうと、決めつけていたが、どうもそうじゃなさそうだ。はなしの展開からは、スチュアートと救出したエレナの二人とみたほうがしっくりくる。「馬車上の二人」である。
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by chaotzu | 2006-02-01 23:55 | 外国映画
2006年 01月 31日

【NHKBS】「さらば冬のかもめ」 真夜中の水兵さん

◆自民党による日本国憲法の改正試案のなかで、軍法会議の設置が盛り込まれている。自衛隊を名実ともに軍隊にしたいとなれば、なんとしても軍隊専用の裁判所も娑婆とは別につくりたいらしい。そして軍隊刑務所とか軍隊警察なんかもくっついてくるのだろうか。そうなったら、同じ国民であっても、法律の運用が軍隊に所属する者とそうでない一般人とで違ってくることになるわけだが、はたして二重基準がいいかどうか。
さて、アメリカ海軍の憲兵(SP)が、窃盗犯の水兵を海軍刑務所まで護送するという、70年代ロード・ムービーの異色作である。

b0036803_2244038.jpg◆1973年アメリカ映画、原題は「ラスト・デティール」であるが、邦題はなんとも意味不明というかいい加減なつけ方である。多分水兵からの連想でかもめにしたのだろうが(苦笑)、かもめの水兵さんとはまるで無縁の内容だ。だいいちくせ者ジャック・ニコルソンの水兵である。
ノーフォークの海軍基地でニコルソンともうひとりのSPが、若い水兵をポーツマスの海軍刑務所まで護送するよう命じられる。ワシントン→フィラデルフィア→ニューヨーク→ボストンの経路で期間は1週間もあるから、上官は楽な仕事だという。なに遊びみたいなもんだ、こちらが行きたいぐらいだよ。かくて、三人組のけったいな旅がはじまる。

◆護送対象の水兵はまだ18歳、大男だがみたところ大人しくとても悪さをするようにみえない。おまけに募金箱から40ドル盗んで禁固8年だという、SPの二人も、そらちょいと刑罰が重すぎるのではと思う。よく聞いてみると未遂犯だという、そりゃひどいなとSPがだんだん同情してきて、手錠も外してやるのである。それにしても、手錠の囚人を一般市民も乗り合わせるバスや電車で堂々護送するのにもまたビックリである。

◆退屈紛れに話しているうち、だんだん意気投合してくる3人(笑)、よしいっちょ、ム所入りの前に酒をたっぷり呑ませててやろうと、ワシントンでは缶ビール宴会にケンカの指南。もっと気概をもてとすっかり兄貴気分になったニコルソンが説教したりする。フィラデルフィアでは実母に会わせてやりたいと水兵の自宅まで道草する。そこで悲惨な家庭環境の一端をみてしまったSP、こんどは童貞のままじゃあまりに可哀想だとなり、ニューヨークではもっぱら女探しと、護送の旅はわき道に逸れっぱなしになる。

◆ボストンの売春宿で、水兵さんの「筆おろし」は無事完了(これがラスト・デティールか?)、ところが皮肉なことに、酒も喧嘩も女も教えてもらったがために、自立心が芽生えてきた若い水兵が脱走を企図、そこは2人にあっさり捕まるのだが、顔面血だらけで刑務所に引き渡したため、囚人虐待だと係官に注意されてしまう。やれやれこんな任務は二度とごめんだとぼやく2人、なるほど、アメリカ軍隊の官僚主義を皮肉った映画だったのか。

◆一夜の彼女を求めてニューヨークの街をさまようとき、3人は新興宗教らしき集会にまぎれこんでしまう。これがなんと日蓮宗、「南無妙法蓮華経」と白人の信徒が一心に唱えている。もしかしたら、創価学会かもしれないが、アメリカ映画のなかで、これだけ日本の宗教をみるのははじめて。
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by chaotzu | 2006-01-31 22:06 | 外国映画
2006年 01月 30日

【DVD】 「大列車強盗」 ジョンおじさんのまったり西部劇

◆マイクル・クライトンの原作そして監督による「大列車強盗」(1979年)を借りたつもりだったのである。ところが、実際に目にしたのはジョン・ウェインおじさんの同名映画(1973年)だった(泣)。片やビクトリア朝ロンドンの金塊強盗、片や強奪された金塊を回収する西部劇と内容は全然違うのに同名なのである。
ただでさえ、物覚えが悪くなっているから、まぎらわしい邦題は避けてほしいものだと日頃から思っている。同名ではないが、「愛と哀しみの旅路」「愛と哀しみの果て」「愛と哀しみのボレロ」「愛と喝采の日々」、これらの映画の区別つきますか? 今となれば、こちらの記憶もこんがらがってしまって、さっぱり憶えちゃいない。まして同名となればなおさらである。
それでも、もったいないからとみる、トホホ……。

b0036803_2222775.jpg◆1973年アメリカ映画、そんなわけでブツブツと複雑な思いを内包しつつみる。ジョンおじさんもご老体のうえすっかり太ってしまって、もうアクションが無理なことは一目まる分かりである。ただただ、男気だけである。「ジョン・ウェインの魁 男塾!」といってもいいぐらいだ。そして、拳銃やライフルが乱射されても絶対にあたらない、おまけに敵方の弱いこと、だからみてるほうの緊張感もあまり要らない。実にのんびり安心してみていられる(笑)。まあ、それがいいのかもしれない。
それより、この映画の眼目は、とにかく景色がいいことである。どこでロケしたか知らぬが、雄大な風景がすばらしくワンダホーである。あるいは「環境ビデオ」で使えるかもしれない。そりゃありませんか。

◆最後にちよっと小粋なおちがあって、思わず笑ってしまう。あるいはジョンおじさんのセルフギャグかもしれない。まァ気楽にみられるまったり西部劇でありました。
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by chaotzu | 2006-01-30 22:23 | 外国映画
2006年 01月 27日

【DVD】「影なき狙撃者」 ダイヤのクィーンにご用心

◆米ソ冷戦が続いた20世紀の後半は、万事猜疑心がはびこる時代であった。お互いに相手陣営の策謀を批難するやりとりの応酬があって、さらにそれぞれの国の内部でも国際的な謀略論が大流行りした。ソ連や中共の場合は粛清、そしてアメリカでは赤狩りである。ケネデイ大統領暗殺の背景にも共産陣営の魔手が取り沙汰されたりしている、まあなんでもあり。さて実際に両陣営が直接戦火を交えた朝鮮戦争、捕虜になったアメリカ人は帰国してからも相当洗脳工作を疑われたことだろう。そんなことを彷彿させる映画である。

b0036803_22272577.jpg◆1962年アメリカ映画、モノクロ。フランク・シナトラの俳優としてのキャリアのなかでは後期に属する作品、共産陣営の洗脳工作をテーマとした異色作である。1952年朝鮮戦争の最中、シナトラの小隊が不意打ちにあってヘリコプターでどこかに拉致される。気がつけばニュージャージーのホテルで開かれている園芸クラブの会合に顔を出している。ところが、園芸クラブのおばちゃん連が途中で東洋人に入れ替わるという不思議な出だし。実際は満州にある中共軍の洗脳施設、ところが米軍捕虜には園芸クラブの会合にみえるという洗脳工作のありさまを、うまく映像化している。

◆実質的な主役はシナトラの部下であるローレンス・ハーベイ演じる軍曹、徹底した無表情のまま、洗脳医師の命ずるままに同僚兵を絞殺したり射殺する。それが帰国したときは戦場の英雄として迎えられる。義理の父親はマッカーシーを連想させる反共議員であるし、母親(なんと息子役のハーベイより3歳だけ年長だったそうな)は口うるさい。政治に利用されるワシントンを嫌ってニューヨークに勤める。ところが、あるモノを見せられた途端、たちまち面前の人間の支配下に置かれるという潜在催眠下におかれていたのである。究極の時限兵器、すなわち影なき狙撃者であるが、よくよく考えたらそんなのありかいという設定なんである。それでもなんとなく納得させられてしまう(笑)。役者の力もあるかもしれない。

◆ここから先はミステリ趣向である。ではいったいダレがハーベイを操るのか? 意外性はあるし、ラストのおちもなかなかやるわいである。また、共産陣営の非情な洗脳工作を採りあげるいっぽうで、アメリカにはびこった赤狩りの風潮も批判している。眼目は赤狩り批判にあって、洗脳云々はそのカムフラージュかもしれない。だとしたらうまく考えたものだ。
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by chaotzu | 2006-01-27 23:55 | 外国映画
2006年 01月 25日

【DVD】「グリフターズ 詐欺師たち」 ドリフターズじゃないってば

◆ジム・トンプソンといえば、日本でも再評価が定着したアメリカの犯罪小説作家である。半世紀ほど昔にもう実もふたもない犯罪小説をたくさん書いており、なかにはペーパーバック・ライター界のドストエフスキーに喩えるぐらいの絶賛意見もある。まあ、それはちょっと大げさじゃないかと思うが、アタマのいかれた人間を描いたらサイコーというか、それは現在でも十分に通じるものがある。全然古びていない。ひと言で云うととても変わった作家である。
そのトンプソンの原作をかのドナルド・ウエストレイクがシナリオ化した映画というから、ひとつ見ておくべしと思ったのである。やっぱりというか案の定というか、なんのカタルシスもない、何じゃこりゃ!という終わり方でありました(苦笑)。

b0036803_2246241.jpg◆1990年アメリカ映画、タイトルからはコンゲーム映画を想像するが、それは全然なし。3人の男女~みんな詐欺師みたいなもんである、による愛情と金欲の入り混じったなんともドロドロした話である。しかも、うち2人は実の母子という設定だ。
せこい詐欺師が3人登場する。手品師崩れのジョン・キューザックは酒場で20ドル札と誤認させてつり銭をしこしこ稼いでいる。詐欺師というよりはいかさま師が近いかもしれない。その恋人のアネット・ベニングはインチキ宝飾品の売付け、武器は色仕掛けである。そして、キューザックを14歳で産んだという設定のアンジェリカ・ヒューストンは、ノミ屋の手下で大穴馬券を実際に競馬場で保険買いするのが仕事である。

◆J.キューザックはこのときまだ23歳、もともと童顔だからもっと若くみえる。とても大物詐欺師の風格はない、あるいはそれが狙いかもしれない。それなのに、A・ベニングはチーム詐欺に引っ張り込もうとする。こちらは、すぐに服を脱ぎたがるといった今では考えられない全裸体当たり演技である。もともとコンビは合わないし、なにより男のほうは単独プレーにこだわっている。しかし、そのためA・ベニングのほうは嫉妬心から近親相姦の疑惑まで抱いてしまうという、なんともものすごい展開になる。アトはもうドロドロ、なんともやりきれない結末まで一直線である。

◆Aアンジェリカ・ヒューストン・ヒューストン、これまで馬面がやたら目立って、ゲテモノ女優の印象があったが(失礼)、この映画で見直す。難しい役柄をさらっとこなしている。たいした貫禄発揮である。それにしても、父親のJ・ヒューストンにもたしか近親相姦の役どころがあったはずだ。親の因果が子に報い……、いや、そりゃありませんか。
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by chaotzu | 2006-01-25 22:49 | 外国映画
2006年 01月 16日

【DVD】「カサンドラ・クロス」 ありえないけど面白い物語

◆「将軍様」を除く一般大衆にとって、海外旅行といえば飛行機が常識の時代であるが、それでもオリエント急行など複数国家を通過する国際鉄道の旅はなにやらロマンをかりたてるものだ。
さて、ジュネーヴを始発としてストックホルムまでいくヨーロッパ大陸縦断列車、途中通過するのはバーゼル、パリ、アムステルダム、コペンハーゲンときた。うわあ、すごいな、鉄道ファンなら垂涎ものだろう。もう走っていないだろうが、なにやら家畜運搬を連想するジャンボ機エコノミーツアーよりも、昔の鉄道旅行のほうがはるかに豪華に思えてしまう。
そんな国際列車をテーマにした映画であるが、思わぬ成り行きから、パリ方面に行くどころか、ドイツを通ってポーランドの強制収容所のあったヤノフに行き先を変えられてしまう。おまけに途中のカサンドラ鉄橋はもう30年間近く使われておらず、老朽化してボロボロである。つまるところ、地獄行き特急になってしまった、さあこの危地をいかに脱するかというはなし。

b0036803_22264437.jpg◆1976年イタリア・イギリス合作映画、冒頭ヨーロッパ・アルプスが映り、そしてスイスはレマン湖のほとりジュネーヴの街の鳥瞰となり、やがてそこにある世界保健機構に急病人が担ぎこまれるところからはじまる。
映像はキレイ、加えてパニックもの、そして鉄道アクションもありと思わぬ拾い物である。ソフィア・ローレン、バート・ランカスターなど大スターが共演しており、けっしてB級ということではなくA級としての作品づくりを意図したのだろうが、あれこれ欲張りすぎてしまって、結果としてB級映画としての愉しみ方だけ残ったような作品。あれ、ほめコトバのつもりなんだけどなんかヘンなような。まあストーリー的にも突っ込みどころはたくさんあるが、そこは大らかな気持ちでみたい映画である(笑)。

◆1970年代らしく、いちばんのワルはアメリカ陸軍である。外国の領土で秘密裏に細菌兵器の研究を進めたあげく、それがテロリストに破壊され感染者が出現したとなると、多数の乗客もろともひとつの国際列車を抹殺にかかる。もう目茶苦茶であるが、冷戦時代でCIAが暗躍し、加えてベトナム戦争の影響もあった。米軍ワルモノ映画が作られてもおかしくない時代であった。しかし、今現在でも実際何しているのか分からない部分はある。

◆主役のリチャード・ハリスがどうにもしょぼくみえてしまう。これがB級化したいちばんの要因だろう。ものすごいスーパーマンなのにちっともそうみえてこない。そして、「ガラスの部屋」レイモンド・ラブロックも出てくるが、なんだかヒロシがかぶってしまうのである(笑)。かのO.J.シンプソンも登場する、はじめは胡散臭い正体不明の役どころであったが、なんと○○役である。モノスゴイ皮肉というしかないが、意外とまともな芝居をしている、いったいどこで道を誤ったのだろうか。
そして、ラストのカサンドラ陸橋のシーンはかなりの迫力、というか鉄道模型ファンにしてみれば堪らないだろうことうけおい。
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by chaotzu | 2006-01-16 22:30 | 外国映画
2006年 01月 09日

【DVD】「アンドロメダ……」 アメリカ版手塚治虫のSF世界

◆現在1700点ほど刊行中のハヤカワ・ポケミス、その記念すべき1000点目が出たのは今から35年も前の1970年4月、そして注目の作品はアメリカ探偵作家クラブ賞受賞作とはいえ、なんと無名の26歳医学生が書いたものだった。
ジェフリー・ハドソン「緊急の場合は」。
よほど将来を嘱望されていたのだろう。その眼に狂いはなく、たしかに大ベストセラー作家になった。ところが、好奇心旺盛なのか作品はどんどんミステリの枠からはみ出していく、SF、冒険、企業、災害、そして原作の多くが映画化されていく。そのうちに作家本人が監督を手がけたりもする。医者出身で多芸多才なひと、そしてあらゆる分野に際限なく枝葉を広げていく、こうみると、なんだか日本の手塚治虫によく似ているのである。
現在はマイクル・クライトンで著名、大当たりした「ジュラシック・パーク」に先立つSFミステリの映画化作品をみる。巨大怪獣こそ出てこないが、サスペンスフルなSF佳作である。

b0036803_2243356.jpg◆1971年アメリカ映画、ニューメキシコの小さな村に人工衛星が落下し、村民の大半と回収に出向いた兵士が絶命するという発端。人類と地球外生命体のファースト・コンタクトのはなしであるが、その相手は2ミクロンほどの微細な結晶体、まあバイキンみたいなもので、接触した生物の血液をたちまち粉末に変えてしまうという極悪病原体である、名づけてアンドロメダ病原体。排泄はなくただ貪るのみ、原爆で焼き尽くしてもそのエネルギーを吸収して増殖するというから、究極無敵の生命体である。ところが、村民がことごとく絶命したなかで、酒飲みのじいさんと泣き叫ぶ赤ちゃんの二人だけはなんともなくぴんぴんしている。それはなぜか?

◆砂漠の地下深くに建設された秘密の研究所で4人の科学者チームによる不眠の研究がはじまる。まず回収した人工衛星にラットを接触させるとたちまちコロリ、サルも同様だ。空気感染にちがいない、次にフィルターを介在して「病原体」のサイズを探る……、この辺りの実験シーンが延々と続くがあまり退屈しない。科学的な説明の段取りがうまいのだろう。
また、この研究所自体の設定も面白い、地下深く5層構造になっており、深く潜るほど、無菌状態が徹底される。科学者も一段階下りるつど、裸になって洗浄され消毒される。表面の老化した皮膚が白い灰になるほど放射線で灼かれたりする。許容される食べ物も各レベル毎に変わってくるなど、この辺りの細密描写が凝っている。ときどきアナログ風の機器が登場するのも、またご愛嬌である。

◆この映画では、仄めかす程度にとどめているが、もともとは国防省が生物兵器を研究するために設置した研究所である。あるいは人工衛星も異種生命体の採取が目的であったかもしれない。しかし、研究どころか、地球外生命との「戦場」になってしまう。おまけに研究所各層のシールドが破れたら5分以内に核で自爆するという設定である。アンドロメダの弱点を突きとめねばならんし、自爆設定を強制終了させにゃならんはで、ラストはてんわやんわで、ハラハラドキドキになる、というか無理やりそんな展開にもっていく(笑)。
それにしても、人類滅亡の危機であるというのに、バタバタしているのはたった4人の学者だけである。政府の役人や軍部はけっこう呑気にかまえていたりする。み終ってから、ハラハラさせやがって損したなと思ってしまうのは、いったいなんだ(苦笑)。
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by chaotzu | 2006-01-09 22:09 | 外国映画
2006年 01月 03日

【NHKBS】「砲艦サンパブロ」混沌時代の中国描く大作

◆日中戦争以前の中国近代史、目まぐるしく変転するので、なかなかおぼえにくい。孫文率いる辛亥革命(1911年)で清朝が倒れたことは承知しているが、そのあとが何やら群雄割拠状態でワケワカメなのだ。
孫文や蒋介石の中華民国、毛沢東他の中国共産党、旧清朝の将軍であった袁世凱その他軍閥……、国中が実質分裂状態であって、おまけに西洋諸国や日本の権益も入り乱れている。要するにタ゜レが当時の中国を支配していたのかさっぱり分からない。国のかたちをなしていなかったそんな混沌状態の中国をやがてまとめていくのは、外国人排斥運動である。そういえば、日本の明治維新もはじめは攘夷思想が原動力になった。まあ、そんな時代の中国のはなし。

b0036803_22451646.jpg◆1966年アメリカ映画、「サウンド・オブ・ミュージック」のロバート・ワイズ監督による超大作であるが、がらりと趣向を変えてきたのでびっくり。職人監督の本領発揮というべきか。
この映画の主役というべきサンパブロ号はいまや死語となった「砲艦」、「軍艦」の一種であるがその小型版みたいなものか、この映画のなかではアメリカの既得権益を守るべく中国沿岸部や長江流域の巡視にあたっているから、巡視艇みたいでもある。もとは19世紀末の米西戦争による戦利品という想定であり、ポロ船であるが、ベテランの機関兵であるマックィーンは、こじんまりした砲艦のほうが戦艦より居心地がいいと考えている。
ところが、サンパブロ号に着任してびっくり、機関室にはたくさんの中国人が働いている。口出しすると中国人ボスがイヤがる。機関室だけではない、船中に中国人が住み着いている。コックに散髪屋、洗濯夫、甲板掃除……。別にアメリカ軍が雇用しているわけではない、雑用手伝いと食糧の交換でいつのまにかたくさん入り込んでいるのだ。だから、砲艦内部は二重権力状態になっていて、船長も機関室には入ってこない。

◆誠実な水兵であるマックィーンには他の米兵のような中国人蔑視の考えはない。なんとかして、中国人の負け犬根性を払拭したいと思っている。とくにマコ岩松演じる中国人青年に蒸気機関の説明をしたり、ボクシングのセコンドについて応援したりするエビソードは感動的である。だけど、中国民衆の完全独立運動は激しくなるいっぽうで、「ゴーホーム・外国の悪魔」がスローガンになり、アメリカ人と仲良くする中国人は見せしめにあったりする。マコ岩松も裏切り者として公開処刑のような目にあい、マックィーンは悲痛な決断をしなければならない。サンパブロ号にいた中国人もやがていなくなる。そして、中国人の小船が砲艦の周囲を取り囲むなど、一触即発の緊張関係に発展していく。

◆いったいどこで撮影したのだろうか、中国本土ではないはずだが、見事なまでに当時の中国らしい雰囲気を再現している。そして、アメリカ人も中国人もステレオタイプに描いていない。悪い中国人もおれば、狡いアメリカ人もいるといった具合。とりわけ、アメリカ人伝道師は呑気というか、せっかく救出に来た米兵に、国籍を離脱したからもう安全だ、帰れというありさま、かくてマックイーンたちは局地的な戦禍のなかに巻き込まれていく。
歴史映画であり、戦争映画であり、異文化が衝突する映画でもある。3時間を超える大作だが飽きさせない、それにしても、スティーヴ・マックィーンって、いい俳優だったんだなあ。
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by chaotzu | 2006-01-03 22:55 | 外国映画