カテゴリ:外国映画( 98 )


2005年 06月 20日

【DVD】 「デュエリスト-決闘者」 ストーカー映画巨匠の処女作

◆1978年イギリス映画。イギリス人のリドリー・スコット監督の第1作は、ハリウッド俳優によるフランスが舞台の物語である。皇帝ナポレオンの時代、決闘オタク(ハーヴェイ・カイテル)につけ狙われて、何度も決闘するはめになる気の毒な同僚将校(キース・キャラダイン)のはなし。b0036803_2211220.jpg
◆実はカイテルが同僚のキャラダインを好きだったという隠れ設定だったかもしれない。だけどキャラダインは鈍感というかいつまでたってもつれない。そこで、自分の存在をみつめてほしいというわけで、とうとう「決闘」をだしにしたストーカー行為に及んだというわけである。いわば究極の愛の表現だ(嘘)。
その結果、15年間で5回(たぶん)も決闘することになる。200年前の昔は、愛情のやりとりも命がけの行為だったのであろうか。現代人の感覚でみればキ○ガイ沙汰であり、とても理解できないだろう。

まあ、そんな映画である。ストーカー男も最後はさすがに虚しさというかバカバカしさに気づかざるを得ない(笑)。そして、観てるほうはもっとムナシくなる。映像が美しいのが救いである。
◆参考までに付記すると、R.スコット監督の2作目もストーカー映画である。こんどは未来世界でなんと宇宙船のなかという密室設定である。何にも考えていない人格障害的なストーカーが登場する。ただ女の子を追いかけ回す不気味な奴だ。そしてヒロインのショーツに指先がかかる寸前まではいく。しかし一部観客の応援もむなしく、ラストはあっけなく宇宙空間に放り出されてしまう。ストーカー映画の金字塔として評価する向きもある。
 さらに、同監督の3作目もストーカーを描いた映画である。こうなると監督の趣味というか病気かもしれない(笑)。おまけにストーカーの対象は人間ではなく人間型のロボットだ。これもけっこう名作評価が定着している。
 こうなると、柳の下にドジョウが三匹もいたということになる。

 ふーっ、あんまりアツいから無茶苦茶書いてしもた。
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by chaotzu | 2005-06-20 22:18 | 外国映画
2005年 06月 18日

【DVD】 「日曜日には鼠を殺せ」 ところでダレが鼠なんだ

◆1964年アメリカ映画、モノクロ。かなり印象的なタイトルであるが、実際は地味なつくりであって、ちとタイトル負けの感がある。配給会社の気張りすぎか。原題はヨハネ黙示録出典の「蒼ざめた馬をみよ」。
ハリウッド映画人の好きなスペイン内戦ものである。「ナバロンの要塞」で同志だったグレゴリー・ペックとアンソニー・クインがこんどは敵味方に別れる。ペックが元スペイン人民戦線の英雄、クインがフランコ政権下の警察署長で仇敵関係になる。クインはギリシア人をやって、とうとうこんどはスペイン人である。中国人の役でもやったかもしれない(笑)。
b0036803_10175963.jpg◆物語はスペイン内戦から20年後、フランスに亡命したペックの捕捉に執念を燃やすクイン署長が仕掛けた罠、それにどう立ち向かうかというサスペンスものである。
カトリックの若い神父(なんとオマー・シャリフ!この人も多国籍俳優だ)が悩んだ末、ペックを訪れて忠告するが、ペックがなかなか聞き入れようとしない。内戦のときに、カトリック教会がフランコ軍についたことへのこだわりもあるし、ペック自身も年老いて心中に屈折を抱えている。
ラストは「蒼ざめた馬」を承知で死地に赴くペック、そしてそれを不思議がるクイン署長の対比とあいなる。ハラハラドキドキ感はあまりなく、手に汗握るというほどではない、かといってつまらない作品というほどでもない。評論家の便利なことばでいえば“佳品”である。
 スペイン現代史に興味のある方はもっと面白いかもしれない。
◆冒頭、スペイン人少年がフランスに密入国する。山を登ったところに国境があるが、それも浅い川ひとつである。ものすごくカンタンにみえる密入国である。
そして、フランスでは空き地があれば子供たちがサッカーで遊んでいる。スペインから来た男の子もサッカーですぐ仲良しになっている。
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by chaotzu | 2005-06-18 23:59 | 外国映画
2005年 06月 07日

【映画】 「ミリオンダラー・ベイビー」これは親娘の物語、「モ・クシュラ」にただ涙ボーダ

◆先週の週刊文春のシネマチャートは、採点者5人みんなそろって最高評価の五つ星だった。
これまでほとんど記憶にないことだ。
アカデミー賞作品はまだ観んぞと思っていたが、たちまち方針転換したよ。b0036803_21152646.jpg

 久々にノックアウトをくらった。テン・カウントどころか100カウント相当のダウンだ。見事にに打ちのめされた。
同じボクシング映画でも「ロッキー」が安っぽくみえる。

 エンド・ロールでサングラスをかけて、うつむいたままで家に帰る。
赤ワインの小瓶を呑む、サントネージュの酸化防止剤無添加有機ワイン、336円。
これぐらいいいじゃないか。

◆クリント・イーストウッドにはふたつ感謝しなければならないな。
ひとつめは、子供のとき、胸をときめかせてくれた“夕陽のガンマン”に。

ふたつめは、あらためて人生をそして孤独を直視する勇気をアシストしてくれたことに。
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by chaotzu | 2005-06-07 21:22 | 外国映画
2005年 06月 01日

【DVD】「キル・ビル」vol1&2  炸裂!おんな涙のうらみ節

◆2003、2004年アメリカ映画。vol1、vol2と分けられているが、実際は4時間超の長尺映画を分割したようなものである。しいて云えば、vol1はチャンバラ・アクション&日本アニメ、vol2はカンフー&マカロニウェスタンになるか。もう筋書きは省略する、実はまだよく分かっていない(汗)。b0036803_21424317.jpg
それにしても、クェンティン・タランティーノ監督のものすごい映画オタク発揮である。冒頭に故深作欣二監督への献辞があるが、深作作品のみならず、やくざ映画、チャンバラ映画。忍者映画、さらにはアニメなど日本映画をBC級まで相当観ているにちがいない。なにせ「子連れ狼」まで引用するほどだ。それに加えて中国カンフー、マカロニ・ウエスタンであるから、まさにオタク魂全開。
◆マンガと映画には共通点がある。映画の絵コンテなんて見ようによってはマンガそのもの。昔からアメコミ風の映画はスパイダーマンなどたくさんあった。日本の劇画もそのまま映画になるのではと思っていたが、vol1がまさに劇画ふう映画のつくりである。ごていねいにアニメまでくっつけている。先にやったタランティーノの勝ちである。既に韓国の「オールド・ボーイ」で実証されているが、日本の漫画、とくに劇画は映画ネタの宝庫である。このキル・ビルも日本の劇画からインスパイアされた気配ありありとみた。
◆喜ばせてくれるのは、エンリオ・モリコーネの懐かしのマカロニ・ウエスタンテーマ、「荒野の用心棒」(短いがほんとに名曲)ともう一曲(忘れた)、いや感涙ものである。
あとラストで梶芽衣子の「さそり」の主題歌まで流してくれる。いやはや、タランティーノもおもしろいおっさんやなあ(笑)。
◆逆に残念なのは、vol1がとにかく血しぶきだらけで、まるでスプラッター・ムーヴィーであることだ。かつての東映やくざ映画へのオマージュなんだろうけど、健さんやお竜さんの本家本元が上品な松竹映画にみえるほどの凄惨さである。歳のせいかもしれないが、こういうのはもう苦手である。
 栗山千明ちゃんも可愛い顔してなにもあそこまでやらんでもいいのになあ。役名「ゴーゴー・夕張」の夕張っていったいどこからきたんだろう?もしかして夕張メロンかな(笑)。
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by chaotzu | 2005-06-01 21:50 | 外国映画
2005年 05月 24日

【DVD】「トスカーナの休日」 傷心プラス観光=癒し??

◆2003年アメリカ映画。イタリアを舞台にしたアメリカ映画はけっこうある。「ローマの休日」「終着駅」「旅情」……、もっとあるかもしれない。とにかくハリウッドはイタリア大好きだ、あるいはアメリカ人の歴史コンプレックスゆえかもしれない。
 本作は離婚により傷心のアメリカ人中年女性が、イタリア・トスカーナ地方に暮らすうちに、心が癒されていくというはなし。
はっきり云ってキャサリン・ヘプバーン「旅情」の二番煎じみたいなもので、骨董品を買い求めて、イタリアのオトコにひっかけられるところまで同じである(笑)。青年は荒野をめざす、そして、中年はひたすら陽光とワインをめざすのか。
 あと、フェリーニの有名な噴水シーンまでそっくり真似しているが、なんだかね。b0036803_1850978.jpg
◆ヒロインのダイアン・レイン、このときはまだ30代後半のはずであるが、はげしくオバサン化が進行している、ちよっとショック。もっともそういう役作りなのかもしれない。
それにしても「リトル・ロマンス」(これもイタリア・ベニスが舞台だ)の10代美少女、いまいずこである(泣)。なにしろ、ダイアン・レインといえば、かつて日本でいえば後藤久美子みたいな存在だったのである。それが、イタリア語で結婚体験の有無を訊かれて、性体験のことと勘違いして「最近はご無沙汰なの」なんて返事をしている、まことにあっけらかん(笑)。
 もっともフランス人と結婚して女優をリタイアしたゴクミとちがって、役者根性のほうはアッパレというべきか。
◆見どころはトスカーナの風景、ひまわり畑、田園風景のなかに散在する絵本に出てくるような民家、思わずみとれる風景である。また、トスカーナから離れるがナポリの南方、海辺のリゾート地ポジターノの景観もすばらしい。まあいってみれば観光映画である。こんなお日様いっぱいのところに住んでおいしいワインを呑んでりや、そりゃ癒しになるでしょうよってところ。
 大阪の天下茶屋あたりで安物の焼酎呑むのとは大違いである。あたりまえだよ、そりゃ。
◆映画の本筋とはあまり関係ないが
・浮気した夫が離婚を申立てしているのに、財産を分捕られるという不条理さ、そしてゲイ専用の団体ツアー、毎度思うがアメリカというかくも不思議な国。
・ヒロインが購入した“ブラマソーレ”なる貴族の邸宅、築後300年のしろものであって、住むには大補修が必要。で、その職人さんがみんなポーランドからの出稼ぎ組なんである。ポーランドで大学教授だった人が電気工であったり、サッカーのラモス・瑠偉のそっくりさんもいる。EUの拡大とそれに伴うボーダーレス化を感じさせられる。
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by chaotzu | 2005-05-24 23:59 | 外国映画
2005年 05月 24日

【DVD】 「キッチン・ストーリー」 うらやましいかぎりの隣国関係

◆2003年ノルウェー/スウェーデン合作映画。
1950年代、スウェーデンの家事なんたら研究所が機能的な台所設計のため、台所内の動線を調査をしている。主婦の動線は調査した、こんどは独身オトコの調査だ、というわけでスウェーデン人の中年調査員がノルウェーの独居老人宅に張り付くというはなし。
b0036803_2218959.jpgところが、その調査方法なるものが、調査員が審判台みたいなところに座って、四六時中、住人の動線をメモするという、マンガチックというかあるいは傍迷惑きわまりないしろものなのである(笑)。おまけに会話を交わしてはいけないというルールもある。さあ、密室のノルウェー人とスウェーデン人だ、調査はいかがあいなりますかとなればシチュエーション・コメデイであるが、全然そうはならない。そこが、いかにも北欧の映画らしいところか。
◆それにしても、ハート・ウォーミングあるいはスロー・ライフとはうまい惹句をつけたものだ。ありていに云えば、ぬる燗仕立てのほのぼの話であって、なんちゅうことはない(笑)。だいいち、同じ部屋に2人きりでいて、口もきかないほうが異常である。まして冬の夜はとてつもなく長い。
 この映画の眼目は「兄弟国」といわれるノルウェー人とスウェーデン人の微妙でありかつ成熟した関係ではないのか。映画中でもさりげなく言及される。
“スウェーデン人の前では芋を煮たくないよ”
“嫌いなスウェーデンのタバコを持ってるじゃないか”
“(ノルウエーの友人は)強制収容所で人形の修理をおぼえたんだ”(ナチスに占領されたノルウエー人が抱く中立国スウェーデン人へのこだわり)
◆だからといって、両国民の仲が険悪ということではない。おそらく両国の人がこの映画をみれば、くすくす笑いが途切れないだろう。悪口も云うし、ジョークのたねにもするが、根っこのところでは理解しあっている。なんともうらやましい隣国関係である。
◆同じシチュエーションのまま、登場人物を日本人と韓国人あるいは日本人と中国人におきかえたら、どうなるだろうかとつい考えてしまう。うーん、アタマが痛くなる。
 副首相が訪問国首相との会談をドタキャンして帰ってしまう。どうみても異常な関係だ。キッチン・ストーリーならぬチキン・ストーリー、とてもハート・ウォーミングな映画どころではない。
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by chaotzu | 2005-05-24 22:21 | 外国映画
2005年 05月 22日

【映画】「キングダム・オブ・ヘヴン」 天の王国は人々の胸中にあり

◆2005年アメリカ映画、12世紀の十字軍遠征を描いた一大スペクタクル。歴史劇とエンターティメントのバランスをよくとっており、けっこう面白い。
 21世紀に至っても、なおキリスト教文明とイスラム教文明の衝突=「十字軍」はつづいている。
第2次イラク戦争である。ただ、立場はすっかり逆転している。むかしの十字軍当時はイスラムのほうが先進国であって、攻め入ったキリスト教兵士は野蛮人の集団だったようだ。エルサレム王国を建設するさなかでも十字軍が随分無茶苦茶なことをしたらしい。イスラム側の史書では、十字軍兵士による人肉食の記録もある。b0036803_20433014.jpg
 この映画のなかでも、イスラムの指導者サラディンのほうが紳士的に描かれる。いっぽう、十字軍側のテンプル騎士団などはなんでも「神のご意志」で好戦性を隠蔽しようとするし、ローマ・カトリックの大司教に至っては身勝手もいいところである。ただし、癩王ボードワン4世(なんとエドワード・ノートンの目玉演技)の如く英明な指導者も登場する。
 要するに十字軍のプロパガンダ映画にはしていない、イスラムも含めて公平に扱っている。そこはまず感心する(ユダヤ教徒がみえてこないが、それは仕方がないか)。
 製作も兼ねているリドリー・スコット監督がいま、この時期に十字軍を採りあげた意図はなんだろうか。
 日本でも十字軍と近似型の史実がある。豊臣秀吉の朝鮮出兵である。アタマの狂った支配者の妄想で駆りだされる日本兵、諸侯の思惑そして異国で死屍累々の悲惨さ、朝鮮人陶工の流転……、十分映画ネタになると思うが、無理かな「キングダム・オブ・スキッツォイド・マン」(苦笑)
◆ストーリイの主軸は、妻子を喪った村の鍛冶屋が突然現れた十字軍騎士の父親(=エルサレム国王の股肱の臣)の導きでエルサレムに行って、あれよあれよの間にサラセンの英雄サラディンを苦しめるヒーローになる、おまけに彼女もゲットするという、はっきり云って、ほとんどあり得ないはなしだ(笑)。森で父親から刀の使い方を教わっていたのが、瞬く間に剛勇無双の勇士で卓越した戦術指揮者になるのだから、まるで将軍さまである……と、突っ込みどころはあるものの、まあ商業映画である以上やむを得ないのか(オーリー・ファンのみなさまには申しわけなし)。
 影の主役はサラディンと銀仮面のボードワン4世である。とくにサラディンは決めゼリフいっぱいで、存在感バツグンの役回り。
 「約束?このサラディンが云っているんだぞ」
 「偉大な指導者のそばにいて、何も学ばなかったのか」
 「エルサレムには何もない-nothing、だけどすべて-everythigだ」
◆たまたま字幕版と吹替版の両方を併映しており、上映時間の早い吹替版を選択したが、目線がふらつかなくていいというかなかなかよかった。ビデオやDVDとちがって、劇場でみる映画は吹替版でもいいかもしれない。
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by chaotzu | 2005-05-22 20:49 | 外国映画
2005年 05月 21日

【DVD】 「みなさん、さようなら」 なんとも贅沢な死に方

◆2003年カナダ=フランス合作映画、カナダ・ケベック州のモントリオールが舞台である。フランス語のカナダ映画をみるのはおそらくはじめて。
原題は「蛮族の侵入」、なんともすごいタイトルだが、9.11.同時テロに見舞われたアメリカ「帝国」の行く末、そして歴史学教授を侵すガン細胞のダブル・ミーニングだろうか。
◆アカデミー外国語映画賞は、ここ2年連続で安楽死(尊厳死)を取り上げた作品が受賞している。直近の2004年度がスペインの「海を飛ぶ夢」、そして2003年が本作である。ただし、切り口はだいぶ違う。本作品のほう、あまり暗いイメージはない。それどころかコメデイに分類されるぐらいである。以下ネタバレ注
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◆不遜な表現だが、もうサイコーの死に方である。息子の金力で最上級の病室が用意される(患者が廊下にまで溢れているモントリオールの病院のひどさ!)。ヤミで入手したヘロインで末期ガンの痛みはない。そして献身的に尽くす本妻と息子のみならず、学者仲間の友人やかつての愛人2人まで、最期の日々を付き合ってくれるのだ。はっきり云ってオトコの本懐ではないか(汗)。
最期は湖畔の別荘でひとりづつお別れの言葉を交わす、遠く洋上の娘からもお別れのメッセージが届くといった具合である。もう女性といっぱい愛し合って、たくさんのワインを呑んで、そして好き放題なことを云って、「みなさん、さようなら」である。なんだかむかつくなあ、いやほんま(笑)。
 ボケ老人になって、妻や子の見分けがつかなくなる。排泄物はたれ流し、ちょっと目をはなすと近所を徘徊、それでも食欲だけは旺盛で、家族全員から疎まれている、とうとう奥さんが先に逝っちゃったなんて悲惨な生き方に比べると、よほど恵まれているのではなかろうか。
◆脚本も書いた監督さんの意図がよく分からない。9.11.同時テロ事件を踏まえた文明論もトッピングしたのが新味だったのだろうか。あるいはフランス人の視点によるアメリカ文明の批判なのか。だけど、病人の至れり尽くせりの終末をお膳立てしたのは息子の札束のおかげなのだ。このほかキリスト教との係りもあるが、宗教批判かどうかよく分からない。
 救いは息子に雇われて病人に付き添いする麻薬中毒の娘の存在。大量のヘロインを病人に投与する役回りになるが、ラストは人生の再生に向けて歩みはじめている。息子の婚約者よりはるかに魅力的な存在でありました。
◆印象に残るセリフ〰作中、病人の演説であるが、実はこれが云いたかったのかもしれない。
  「恐ろしいもんか、みんなが思うほど20世紀は血なまぐさくない。
  戦争で1億人死んだだけだ。
  ロシアの収容所で1000万人、中国の収容所ではおそらく2000万人。
  あわせて、わずか1億3000万人だ。
  16世紀のスペインとポルトガルは、ガス室も爆弾も使わずに
  1億5000万人の先住民を消滅させた
  1億5000万人をオノで叩き殺したんだ。
  教会が支援したとはいえ、よくやるもんだ。
  北米では、オランダ、イギリス、フランス、アメリカが
  それぞれ5000万人の先住民を殺している。合計で2億人だ。
  人類史上最大の殺戮がこの大陸で行われた。
  だが、ホロコースト記念館ひとつない。」
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by chaotzu | 2005-05-21 20:58 | 外国映画
2005年 05月 14日

【DVD】「グッバイ、レーニン」 東西ドイツ統一の光と影

◆2003年製作、ドイツの映画となるとあまり記憶にない。封切時から前評判が高く、かねて観たかった映画である。
 1989年11月のベルリンの壁崩壊、群衆の歓呼が沸きかえるブランデンブルグ門の映像を衛星中継で目の当たりにして、かなりハイな気分になった。日本人でさえそうだから、当事者たるドイツ人は東西問わずもっと高揚したはずである。だけど、その幸せムードもあまり長続きしない。b0036803_23182671.jpg
 主人公の東ベルリン青年、壁崩壊前はデモに参加するような非共産青年であったが、東西統一をひかえて急速に浸透する資本主義に馴染めぬものを感じる一方である。人をかりたてる競争主義、そして物質万能主義、もっとゆったりしたテンポの社会であってもいいのではないか。そんな気持ちが母親に対する献身的な介護に向かわせる。東独のピクルス瓶を探す姿に思わず目頭が熱くなる。
◆1990年10月の東西ドイツ統合、いま現在に至って、おそらく多くのドイツ人が統一の大義こそ否定しないものの、それで得た果実については釈然としないものを感じているはずだ。主人公とその友人(映画狂の西ドイツ青年!)が母親のため偽のTVニュースまででっちあげる。やがて、つじつまあわせのため、どんどん現実と乖離してとんでもない展開になっていく。西と東あべこべになったブラック・ユーモアが、ドイツ国内で大受けするが、これはドイツ人の諧謔なのだろうか。
◆ただし、物語はコメデイにとどまらない。そこからセカンド・ストーリーさらにサード・ストーリーが派生する。はたして母親は息子の偽計を知っていたのか。そこは観た人の想像に委ねられる。また、母親がずっと別れていた夫と再会するシーン、2人の間にどんな会話が交わされたのか。それはまた別の話ということで省略される。これも観た人それぞれのドラマになるだろう。
さらに、永年にわたる東西ドイツ分断の悲劇そして統合の労苦など、ドイツ人がずっと背負い続けている負担のたいへんさ。物語の奥行きの深さを意識させられる。
◆名シーン、まずヘリコプターで運び去られる巨大なレーニン像。本作の象徴的なシーンであって、フェリーニ映画のキリスト像運搬シーンを思わず連想する。意識していること間違いない。そして、真っ赤なコカコーラの広告幕、共産主義がなくなっても赤い旗が依然君臨するという皮肉。
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by chaotzu | 2005-05-14 23:35 | 外国映画
2005年 05月 13日

【DVD】 「人生は、ときどき晴れ」 しんみりタイトルの妙

◆2002年イギリス=フランス合作。イギリス映画お得意の底辺大衆もの。
とにかく邦題がすばらしい。いつもけちつけてばかりの映画タイトルであるが、本作は日本人の感性に訴えるグッド・ネーミングである。なお原題はオール・オア・ナッシング。
◆白タク運転手の父親はぐうたら、スーパーレジ係の母親はやつれきっている、老人介護施設雑役の娘は無口、ニートの息子は反抗してばかりと、どうみても明るい展望がみられない4人家族、おまけに母親以外の3人はでっぷり肥えている。住んでいる下町の団地は落書きだらけ、そこに住む若者も生気がない。
なんというか、どーにもこーにもやりきれんよという環境設定である。
これでドラマになるのかなあ。それがちゃんとなっている。
◆淡々かつ地味なはなしの進行であるが不思議に飽きさせない。白タク業界とかカラオケ・バーなど、あまり目にすることがないロンドンの一面を混じえながら、夫婦の再生そして家族の再生を描いた佳品である。
 人生は、ときどき晴れか、そうそう晴れの日もないとね。
 主人公の父親役、どこかでみた人だなと思っていたら、なんとハリポタのねずみ男だった。しょぼい役が似合うもしんみり巧いひと、日本ならば田中邦衛みたいな役者かな。
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by chaotzu | 2005-05-13 23:55 | 外国映画