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2005年 05月 31日

追悼 史上最高の名大関、先代貴ノ花

◆ガン闘病中であった二子山親方(元貴ノ花)がとうとう亡くなった。まだ55歳である。
この1月、貴ノ浪断髪式当時の姿をみてあまりのやつれように吃驚したが、あれからまだ4ヵ月ちょっとしか経っていない。うすうす予期していたこととはいえ、やはり寂しいものがある。b0036803_2238525.jpg
 二子山親方といっても、自分の年代ではどうもぴんとこない。二子山といえば実兄かつ師匠であった初代の若乃花である。大関貴ノ花のほうがよほどなじみ深い。まあ現役後半は衰えがめだったが、それでも歴代最高級の大関ではなかったか。横綱にこそなれなかったものの、まちがいなく1970年代の相撲界を支えたいちばんの功労者である。ついでに云うと二番目の功労者は高見山で、この2人の関取が登場すると横綱以上の歓声を浴びていたことを思い出す。人気では横綱をはるかにしのいでいた。
◆相撲界に入門する前は水泳選手で著名だった。だから相撲取りにはみえないスマートな体型の小兵力士である。それが正面から巨漢のアンコ型力士とぶつかるのだから、毎回ハラハラの熱戦相撲である。もう人気が出ないほうがおかしい。とくに横綱大鵬や北の湖との対戦は記憶に残るものがあった。空前絶後の座布団のとびようといえば、変な表現だが事実そうなのである。誤解をおそれずにいえば、横綱になった2人の息子を上回る名力士ではなかったか。謹んでご冥福をお祈りしたい。
◆しかし、その残された二人の息子、余計なお世話だろうが、なんだか心配だ。弟は実兄を花田勝氏と他人行儀によび、兄貴のほうは貴乃花親方とよんでいる。兄弟であるのにその仲はドライアイス状態だ、これでは父親が浮ばれない。

◆ガンついでのはなしだが、小説家の藤原伊織も食道ガンを告白している。4期まで進行しており、手術はできなかったらしい。5年生存率は20%だそうだ。この間は自分の知人も食道ガンで逝ってしまった。著名人も無名人も容赦なくいのちを奪っていく。ほんとにハラのたつ病気である。
 なんだか酒を呑みたくてしかたがない。
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by chaotzu | 2005-05-31 22:47 | 時事
2005年 05月 31日

談合を容認する社会は進歩しない

◆きのうはちょっとおちゃらけ記事になったが、本日は真面目に書く。談合防止対策である。
この20年来ずっと感じてきたことであるが、この談合問題、自分も含めて感覚がマヒしていたというか、ずっと必要悪だと錯覚してきたきらいがあったのではないか。役人までが平気な顔で云う、いつどこでどんなメンバーが集まって、どんな“話し合い”をしているか。つまるところ、発注者と入札業界の出来レースであることをみんな知っていた。だいたい予定価格とぴったり同額の入札が連発されてもすまし顔の世界なのである。
b0036803_22244797.jpg◆総務省の資料によれば平成13年度の行政投資実績は約38兆円、そして公取委の試算による入札談合等の不当利得は平均で売上高の16.5%。単純にあてはめれば約6兆円が談合でかすめとられている。巨額の詐取行為である。おまけにこれ以外に公団や特殊法人の事業もあるのだ。いったいどれだけ剽窃されているのか。もとより、談合で得た莫大な不当利得は、政治献金のほか天下り官僚へのあてがい扶持にもなっているだろう。わけの分からない「周辺対策費」に化けているかもしれない。
 検察ももちろん知っている。これまでいっぱい情報を溜め込む一方で動かなかったのが、経世会(旧橋本派)の凋落を見計らっての摘発であることがみえみえである。これはまあ、動かないよりはましであるが。
◆国民の大半もうすうす知っているかもしれない。和を以って貴しとなす、素性のしれないアウトサイダーは疎んじられる、それがムラ社会の知恵であり、談合社会ニッポンの基礎構造になっている。だけど、それではいつまでたっても社会は進歩しない。
談合防止策については、これまでも一般競争入札あるいは電子入札のさらなる拡大、ひいては予定価格の事前公開など、主に入札手続き面からアプローチがされている。しかし、小手先の対症療法だけでは、根本的な解決にならないだろう。工事の品質保持や不良業者の排除ひいては社会構造そのものの見直しも視野におかねばならない。経団連奥田会長の発言はかなり率直であるし、ある意味あたっていると思う。
◆第一は課徴金率の見直しである。現行は最高で10%であるが、前述の不当利得平均16.5%と対比すれば、バレてもまだお釣りがある。悪いことをすれば、会社が危殆に瀕するような金額にしないと意味がない。
◆役人や公団OBの関連業界への天下りも一切禁止するべきだ。なかには名目だけ関係のない会社に就職したカタチにしてごまかす手口もあるので、実質要件で厳しく取り締まらねばならない。そうなると、公務員の大半を定年まで抱え込むことになるので、総人件費の大幅な増加は避けられない。それでも談合によって不当に毟られた公共事業費がそれ以上に削減されればいいのである。もっとも、公共事業費が逓減すれば、政治家の口出しで投資効果のない無意味な公共事業が増える懸念もある。ここは有権者の覚悟如何だろう。
◆あと、公共事業の成果物に、工事関係者の記念銘版を設置する。発注側の責任者、受注企業の代表者のみならず、設計施工監理から現場の親方に至るまで、姓名を列記し永遠に「顕彰」するのである。トンネル一本、橋脚一本毎に名前が刻まれるとなれば、孫子の代まで自慢になる。「これをつくったのはとうちゃんなんだぞ」と子供に誇れるとなれば、現場のモチベーションはいやがおうでもたかまるだろう。うんとデラックスな銘板にすればよい。談合で毟られるお金に比べるとたかがしれている。
 以上はあくまで素人考えである、まだまだグッド・アイデアがあるはずだ。
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by chaotzu | 2005-05-31 22:36 | 時事
2005年 05月 30日

【DVD】 「喜劇・駅前茶釜」 ドンドンパッパでタヌキ汁、もうハチャメチャ

◆1963年東京映画、駅前シリーズ6作目。こんどは群馬県の館林市が舞台、分福茶釜の茂林寺がモデルである。ただし、映画では呑福寺にしている。
 それにしても、だんだん深みにはまっていくなあである。若い頃なら見向きもしなかったであろう映画だが、自分がうんと幼い頃の記憶に働きかけるものがあるのだろうか。駅前デジャヴ(笑)。
b0036803_7594714.jpg◆はなしそのものは毎度バカバカしいもので、骨董品屋の森繁と記念写真屋のフランキーが貪欲好色の伴淳狸和尚に狸汁を食わせて仕返しをしてやれが発端。大のおとなが、わざわざ仕掛けでタヌキを捕まえて、それをさばいて喰わせて、“やーいやーい共食いだい”と囃したてる算段、はっきり云ってまともな大人がすることではないが、それを大真面目にやっている(笑)。
毎度固い理屈はどうでもいい。何ごともドンドンパッパのドンパッパ、ドンドンプクプク、ドンパッパである(笑)。
 しかし、タヌキを水に沈めて殺そうとするところや、あっとオドロク、タヌキ汁の正体なんて、いまならば問題視されて、とうてい不可能だろう。もうメチャクチャでシュールすぎる(思い出し笑)。
◆見どころは、掛け軸の狸が飛び出してくる場面、三木のり平がなんとも薄汚いタヌキで出現する。森繁の女房役淡路恵子や本家の女主人役淡島千影にも化けるが、声はのり平のままという珍無類シーン。掛け軸の絵柄も三通りに変化してなかなか芸が細かいわいと笑わせる。
 もうひとつは、これも森繁、夢の中の“狸御殿”シーン、中尾みえが登場してタヌキ音頭でおおいに盛り上がる。こういうの大好きだなあ。とうとう駅前ミュージカルである。筋なんかどうでもいいわいだ。
◆まあいろいろあって、最後は伴淳和尚の呑福寺と、森繁・フランキーの新興“お狸神社”の対決、茶釜の本家争いであるが、要は金目当ての観光客の獲りあいだ。
 いまヤスクニ参拝がどうたらこうたら云われているが、日本人大多数の宗教観なんてこの程度のいい加減なもんであって、それは40年後の今も大して変っちゃいないのではないか。ぜひコ・キントウさんに観ていただきたい映画である、脱力するかもしれんな、こんな連中になに云うてもムダかって(笑)。
◆俳優メモ
・淡路恵子;珍しい森繁の奥さん役、ちょっとタカピーな役がこのひとの本線なんだろうけど、この映画ではものすごくだらしない悪妻を演じている。フランキーが早速足元からの寝姿を撮っている(笑)。
・ジャイアント馬場;お約束の有名人ゲスト出演、役名は大原庄平!ラストの乱闘シーンではこれもお約束の大活躍をする。王選手よりもセリフが多くて芝居していましたな。
・若林映子;和製の初代ボンド・ガールって、誰も知らんか(苦笑)。伴淳和尚の娘役だが、もうひとつでミスキャストの感があり。
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by chaotzu | 2005-05-30 22:23 | 日本映画
2005年 05月 30日

新プロジェクトX「経済成長を支えた談合戦士たち」(嘘)

◆最近叩かれっぱなしのNHK「プロジェクトX」、もう隠れ企業ヨイショ番組であることがバレバレなんだから、いっそ開き直って企業礼賛番組に改編したらどうだろうか。ちょうどうってつけのテーマがある。「談合の星」だ。
b0036803_2149274.jpgたまたまそのポジションにいたがため罪に問われたが、サラリーマンとして一生懸命会社のため尽くしてきたのである。同じことをやっても、昔なら重役になり悠々自適の人生が今や刑事被告人である。まさに“崖の上のジュピター”“水底のシリウス”みたいなものだ。志なかばで倒れた企業戦士を悼んで、なんの不都合がありましょうか(笑)。

◆(ナレーション)悲痛な叫びだった。このままでは業界が共倒れになってしまう。いや弱肉強食でいずれ大手の寡占状態になってしまう。なんとしても赤字入札はやめさせねばならない。
 ひとりの男が立ち上がった。話し合いが必要だ! 業界行脚がはじまった。
 業界の異端児といわれる八坂工業には名物オトコがいた。ヤサカのジンゴだ。何ごとも胸襟を開けば分かってくれるはずだ。
 「オール・フォー・ワン、ワン・フォー・オール。一社は業界のために、業界は一社のために。なにごとも共存共栄だ」 みんながその気持ちにうたれた。
◆ゲスト出演元××橋梁△△専務さんの述懐(落葉会の元代表幹事)
“私どもだけの努力じゃとてもとても、役所や公団のご担当の方のご理解ご協力を賜りましての業界秩序です”
“これまでも公取さんにはだいぶご理解いただきました、たまに行儀の悪いもんがおって課徴金もありましたけど、まあそれは一部のことでして”
“どこの世界でも不平分子の文句たれはおります、まあ検察さんが取り合わないでしょうけど。それだけに、こんどの(摘発の)件は意外ですねえ。経団連の偉い方も認めてるし、国民の多数も肯定してるんじゃないですかねえ。だいたいダンピングの不良業者に大事な工事任せられますか”
“いちばん難儀なんは政治家のセンセイの横ヤリですわ、献金出してそれ以上に無理云うてきますから”
“なんちゅうても和が大事ですね。聖徳太子さま以来の日本のよき文化ですから。これからも頑張って守りきってもらいたいですね”
◆(エンディングテーマ)
♪ヘッドライト・テールライト 談合はまだ終わらない
 ヘッドライト・テールライト 談合はまだ終わらない
 もう好きなだけやってくれ(笑)。
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by chaotzu | 2005-05-30 21:55 | 時事
2005年 05月 29日

【DVD]】 「喜劇・駅前飯店」 いまだからこそ必見、日中友好の金字塔映画

◆1963年東京映画、駅前シリーズの5作目。クレージー・キャッツの「日本無責任野郎」との2本立てで公開されたらしいが、垂涎の豪華さである。今ならば「スター・ウォーズ」と「宇宙戦争」の二本立てみたいなものではないか(笑)。
 こんどの駅前トリオはみんな在日華僑の役である。全員が珍妙な日本語をしゃべっているのはご愛嬌か。“バカも休憩休憩云え” “それは誤解も違いの問題だよ”“愛のソークツ(巣窟)”(笑)b0036803_18571793.jpg
 そして奥さんや恋人は日本人で、子供はほとんど日本社会に同化している。森繁演じる華僑に至っては日本の文物が好きで、小唄や大衆演劇~股旅もののファン、要するに日本社会になんの違和感もなく溶け込んでいる。日本人も中国の人には親近感をもっていた。ふりかえってみれば、40年前はたしかにそういう時代だったのではないか。いま現在の日本にみなぎっている嫌中意識あるいはあちらの反日感情を思うと隔世の思いがある。両国の政治家が政治的思惑や保身意識でもって、ここまでメチャクチャにしてしまったような気がせぬでもない。とかく理屈が入りすぎなのである。その点、この映画はなんの理屈もない。ただ観て愉しい映画であって、それがなによりいちばん、なんの不都合があろうかである。
 だからこそいまこそ、一家に一枚必携のオススメDVDなのである(笑)。
◆(森繁)アイヤー、こんどは横浜の中華街が舞台あるね。わたし大飯店のコック長さんね。名前は徳清波、ド・チンポー、自己紹介すると日本人みんな笑うね、淡路恵子さんまで笑う、みんな下品のことあるよ。だけどニポンのこと大好きよ、詩吟も小唄もやるよ。奥さん(淡島千影)も日本人よ、横浜で別の店やてもらってるね。ちなみにうちのラーメン一杯70円よ。
◆(伴淳)ラーメン屋の孫五林よ、ニポン一のラーメン店あるよ、しっかり者の奥さん(乙羽信子)もついてるよ。徳さんとは昔の修行仲間ね。みんなで大きな店もつ、駅前飯店それが夢ある。たけど年頃の娘(大空真弓)は彼氏連れてくる、息子(高橋元太郎)は巨人の入団試験落ちてから学校サボるでタイヘンあるよ。ありゃー、ホムラン王の王選手ほんとに店に来たあるよ。
◆(フランキー)ブタブタ子豚~、チキンラーメン大好きなブローカーやってる周四方ね。カキ油要らんかね、まだ独身でボロ車乗り回して愉しんてるよ。徳さん孫さんオヤジの弟子さんね。3人で中華飯店やるの夢ね。たけど占い師から共同でやるのよくないといわれた。あたま痛いね~。亡くなったオヤジ秘伝の酒レシピ探してるね。ニポンのオカーサンにも会いたかたよ。
◆(のり平)散髪屋のチン・トンシャン(陳屯謝)ね。アタマ刈ってやろかー、ああ刈りたい刈りたいー。
◆俳優メモ
・高橋元太郎;黄門様のうっかり八兵衛がすっかり固定してしまったが、もともとはバリバリのアイドルだったのである。フォー・リーブスやジャニーズの先駆け的存在といったら、さすがに旧いかなあ(汗)。
・森光子;珍妙な占い女で登場、名前はなんと紅生姜(笑)、コメディエンヌの才能大ありだったんですな。
・王貞治;この人も日中のハーフだった。ホームラン王でやっとブレイクした年でしたか、まだまだ初々しい。演技はご愛嬌です。
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by chaotzu | 2005-05-29 19:04 | 日本映画
2005年 05月 28日

I My Me? 個人情報は曖昧ミー!

◆以前、勤務先にかかりつけ医院からの電話があった。席をはずしていたので別の人間が代わりにとったが、なんのことはない休診の連絡である。それぐらい携帯のほうにかけてよと思うもあとの祭りである。実のところ、周囲に病院歴をあまりばらまきたくない。いちいち説明が面倒だし、病気の内容によってはかなり切実なひともいるだろう。たとえば△△整形あるいは□□神経科とか○○肛門病院から電話があったなんて、それだけでもろに個人情報である。それもあまり他人に知られたくない情報だ。
だけど、その辺の患者心理に無頓着というか無神経な病院事務員がときにいたりするのである。
で、それ以来、勤務先の電話番号はウソ八百で通している。善意に依存したシステムを信じきってあげく不愉快な思いをするのはイヤだから。
◆病院にかぎらず、何かに申し込むあるいは会員登録、応募するとかいった場合、氏名、住所、電話番号どころか、職業(勤務先)、生年月日、メールアドレスなどいっぱい書かされることがある。借金やクレジットカードを申し込んでいるわけでないのに、もう腹がたつほど書かされる。だからこれも、氏名と住所以外、すなわち免許証に書かかれていないことはたいていテキトーに書いている、ありていに云うとウソばっかり(笑)。ちなみに職業はたいてい自営業だ。自営業がいちばん便利なコトバである。仕事のことを聞かれたら“いやあボチボチですわ”といっておけばオッケーだし(笑)。
 有名人であれば、個人情報の切り売りが金儲けや権威権力の源泉になるだろうが、一般庶民はなんの益にもならない、逆に迷惑電話やインチキセールスにさらされるだけである。まあ、ささやかな自衛策のつもり。
◆戻ってふたたび病院のはなし、この4月から個人情報保護法が施行されて、いまはどこの病院でも個人情報の保護基準を策定して公表している。JR福知山線の脱線事故で、死傷者が入院した病院、マスコミ対応でたいへんだったらしい。うかつに患者情報を公開できなくなったのである。そりゃそうだ、これまでが無神経すぎたんだろう。個人的には、被害者報道で実名をさらされるなんてまっぴらごめんである。事故で痛い目にあったその傷口に塩をすりこまれるようなものであって、メディアによるセカンド・レイプ同然である。
 医療機関は個人情報の宝庫である。だからとりわけしっかりしてほしいと思う。だけどいまでも案外ぞんざいなところがある。患者本位の理念がことば先行で、未だ地に足をつけるに至っていないのだろう。
 館内放送による患者の呼び出しがしょっちゅうある。「○○病棟の△□さん」とか「××さん、○番受付にお越しください」、患者を何時間も待たせるのは平気なくせに、ちょっとトイレに行って席をはずしただけで全館放送である(泣)。それだけでなんの病気であるか容易に推測できてしまう。それどころか待合室や会計窓口でも大声で患者名を連呼している。入院患者の問い合わせなんかはもう一切対応すべきではないと思うが、それもまちまちのようだ。病室の名札も本来は患者の同意が必要であるべきと思う。
こんなことを書くと神経質すぎるように思われるかもしれない。だけど地域の病院なんかはかなり狭い世界なのである。
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by chaotzu | 2005-05-28 23:54 | 身辺雑記
2005年 05月 27日

【読書】 北村薫「夜の蝉」 梅雨の英訳って“プラム・レイン”?

◆創元推理文庫、単行本初刊は1990年1月。b0036803_21461932.jpg
「円紫師匠と私」シリーズの二作目、ミステリに分類されているが、解明されるのは日常生活のなかのささやかな謎である。まだ2作しか読んでいないけど、よくも着眼するものだと感心。探偵役に落語家を充てるのもアイデアである。たしかに人間の日常心理を深く掘り下げる商売であることでは共通している。
◆・同い年の親友が誕生日の星座を教えてくれないのはなぜ?
 ・本屋さんの平台で本の向きを変える「イタズラ」はなんのため?
 はなしの結末は単なる謎解きにとどまらず、人間心理の機微を抉っている。ぎょっつとするような酷薄さもある。高野文子の可愛らしい表紙絵に騙されてはいけません(笑)。
 「朧夜の 底を行くなり 雁の声」
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by chaotzu | 2005-05-27 23:59 | 読書
2005年 05月 26日

【読書】 井上ひさし「不忠臣蔵」 かくも長き呪縛の不思議

◆集英社文庫、単行本初刊1985年12月。
 松坂といえば西武の松坂だけではない、本所松坂町、いわずとしれた忠臣蔵の被害者、吉良上野介屋敷跡がある。一度行ってみたが、公園みたいなただの空き地だった。高輪の泉岳寺にも行ったことがある。だからといって、別段赤穂浪士のファンということではない。だいいち、47義士ともて囃されているが集団強殺犯そのものである。いまならカルト団体で破防法適用だ(笑)。浅野の殿様も経営者とみれば無能かつ無責任きわまりない。一時の勘気による不始末のあげく部下を路頭に放り出した。まあ同情の余地なし。
 だけど、忠臣蔵はいまでも。日本エンターティメント史上最高の傑作とされている。なぜ、かくも奇天烈な倒錯話が、元禄以降の日本人にやんやの喝采だったのか。そこに興味がある。だから両国にも高輪にも行ったが、実のところいまだに理解できないままだ。
b0036803_0121569.jpg◆井上ひさしによる本小説、主人公は討ち入りに参加しなかった赤穂浪士たちである。だから不忠臣蔵。もともと松の廊下事件のとき、赤穂藩の家臣は300人ほどいたらしい。だから討ち入りに参加したのは六分の一もいない少数派である。なぜそんな少数派のレアケースが、日本人の行動の手本みたいに語られるのか、特殊な例をもって一般論を言っているようなところに危険さはないのか、それが執筆動機らしい。なるほど、たしかにそれに類した事例は他にもある。われわれ日本人はどうも忠臣蔵に洗脳されすぎているんじゃないだろうか。
◆作者が小説中で綴る、不義士の言い訳は、「万一失敗の場合に備えた第二陣で残ったのだ」「吉良屋敷偵察の目くらましのための放火実行部隊だった」「必死の外交努力を無にするバカ殿に愛想が尽きたのだ」……などいろいろ。もちろんほんとうかどうかは分からない。なにより作り事であって、それこそ虚実皮膜の間である。だけど47義士のドラマと同様、討ち入りに参加しなかった浪士についても、それぞれのドラマはたしかにあったのだろう。そしてそちらのほうこそ、日本人多数の物語なのである。
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by chaotzu | 2005-05-26 23:59 | 読書
2005年 05月 26日

【読書】 中島らも「今夜、すべてのバーで」 壮絶アル中ばなし

◆講談社文庫、単行本初刊は1991年3月。
 題名からグッドテイストな都会小説集かと思っていたが、とんでもない。壮絶なアル中オトコのはなしだった(苦笑)。b0036803_21414695.jpg
 おそらく作者自身の体験が投影されているのだろう。連日9時間もの飲酒、黄疸症状で入院前の半月に摂取したのはウイスキーとはちみつとミルクの「流動食」だけ、固形物は喉をとおらない。それでも入院当日にワンカップ2杯ひっかける。おしっこの色はもうコーラ色といった惨状である。よほどもともとの内臓が頑丈だったんだろう、たいていの人間ならば、とっくにパンクしている。
あの「明るい悩み相談室」の室長さん、実際は地獄絵図だったんだな。
◆それでも、この人の真骨頂は過剰なまでのサービス精神だろう。どんな悲惨な状態になってもギャグを繰り出さずにはいられない。トイレの蓄尿袋に水道水を流し込んでおしっこのみかけをごまかす、体温計を炙って
41度の体温で看護婦を驚かせる。いちおう小説であるが、この作者の場合、ほんとうにやりかねないなと思わせるものがある。だけど結局は、その過剰なサービス精神ゆえにアル中になって、あげく寿命を縮めてしまったんだろうな(涙)。
◆らもギャグ
「小学生のとき給食のおばさんがおれに嘘を教えたんだ。白い牛は白いミルクを出す、黒牛はコーヒーを出す、まだらの牛が出すのがコーヒー牛乳だってな。じゃあフルーツ牛乳はどんな牛が出してるんだ。」
◆オススメは巻末の山田風太郎との対談。「荒唐無稽に命かけます!」
 元祖アル中ハイマーとその後継者の対談であるが、そのご両名、いまは故人である、合掌。
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by chaotzu | 2005-05-26 23:59 | 読書
2005年 05月 24日

【DVD】「トスカーナの休日」 傷心プラス観光=癒し??

◆2003年アメリカ映画。イタリアを舞台にしたアメリカ映画はけっこうある。「ローマの休日」「終着駅」「旅情」……、もっとあるかもしれない。とにかくハリウッドはイタリア大好きだ、あるいはアメリカ人の歴史コンプレックスゆえかもしれない。
 本作は離婚により傷心のアメリカ人中年女性が、イタリア・トスカーナ地方に暮らすうちに、心が癒されていくというはなし。
はっきり云ってキャサリン・ヘプバーン「旅情」の二番煎じみたいなもので、骨董品を買い求めて、イタリアのオトコにひっかけられるところまで同じである(笑)。青年は荒野をめざす、そして、中年はひたすら陽光とワインをめざすのか。
 あと、フェリーニの有名な噴水シーンまでそっくり真似しているが、なんだかね。b0036803_1850978.jpg
◆ヒロインのダイアン・レイン、このときはまだ30代後半のはずであるが、はげしくオバサン化が進行している、ちよっとショック。もっともそういう役作りなのかもしれない。
それにしても「リトル・ロマンス」(これもイタリア・ベニスが舞台だ)の10代美少女、いまいずこである(泣)。なにしろ、ダイアン・レインといえば、かつて日本でいえば後藤久美子みたいな存在だったのである。それが、イタリア語で結婚体験の有無を訊かれて、性体験のことと勘違いして「最近はご無沙汰なの」なんて返事をしている、まことにあっけらかん(笑)。
 もっともフランス人と結婚して女優をリタイアしたゴクミとちがって、役者根性のほうはアッパレというべきか。
◆見どころはトスカーナの風景、ひまわり畑、田園風景のなかに散在する絵本に出てくるような民家、思わずみとれる風景である。また、トスカーナから離れるがナポリの南方、海辺のリゾート地ポジターノの景観もすばらしい。まあいってみれば観光映画である。こんなお日様いっぱいのところに住んでおいしいワインを呑んでりや、そりゃ癒しになるでしょうよってところ。
 大阪の天下茶屋あたりで安物の焼酎呑むのとは大違いである。あたりまえだよ、そりゃ。
◆映画の本筋とはあまり関係ないが
・浮気した夫が離婚を申立てしているのに、財産を分捕られるという不条理さ、そしてゲイ専用の団体ツアー、毎度思うがアメリカというかくも不思議な国。
・ヒロインが購入した“ブラマソーレ”なる貴族の邸宅、築後300年のしろものであって、住むには大補修が必要。で、その職人さんがみんなポーランドからの出稼ぎ組なんである。ポーランドで大学教授だった人が電気工であったり、サッカーのラモス・瑠偉のそっくりさんもいる。EUの拡大とそれに伴うボーダーレス化を感じさせられる。
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by chaotzu | 2005-05-24 23:59 | 外国映画