2005年 05月 09日
◆数学はダメなくせに数学読み物が好きである。この点、お茶の水女大の藤原教授はかねてより数学者の必要条件として美意識や文系の素養を挙げている。数学オンチにとってなんとなく有難いお言葉であるが、それで著書を毎度買わされている(苦笑)。 本書は数学に関する対談本、2005年4月刊ちくまプリマー新書。藤原先生は文章も巧いが喋りも達者なので、通勤の往復であっという間に読了。かねてからの自説開陳であり、とくに目新しいネタはないが、小川洋子とのキャッチボールという新機軸で、小難しくないお気楽読み物に仕上げている。 ◆なんといってもインドの天才数学者ラマヌジャンの紹介である。朝起きる都度新しい数学の定理を5つも6つも見出してくる。常人には思いもよらない思考回路(ナーマギリ女神のお告げだそう?)で着想した定理、当時はなんの役にも立たないと思われていたものが、何十年か後に脚光を浴びる。 イギリスに渡ったものの、戒律ゆえフイッシュ&チップスなどの英国料理になじめず、栄養不良がたたって32歳で死んでしまう。時代のはるか先を走り抜けて夭折した大天才である。 また、東大助教授となって来月結婚というときに自殺した31歳の谷山豊、後年フェルマーの定理の証明に寄与した「谷山=志村予想」の発想者である。婚約者も1ヵ月後に後追い自殺するという悲劇、いったい何があったのだろう。 数式以上に数学者の人間ドラマには惹かれるものがある。 ◆親戚の子弟に数学の大学院生がいるが、藤原先生曰く「当面何の役にもたたないのが数学」である。学問としての非有用性ゆえに偉いのだそうだ。それだけに院生の将来は茨の道じゃないが、なんだかたいへんそうである。なにせ、「たいていの数学の問題なら見た瞬間にぱっと解いちゃう超スピード回転アタマの持ち主はいっぱいいてさして驚かない」世界である。博士崩れになるとまともな社会復帰は最早望めそうもないから、はやく真人間に更生してほしいと周囲は気を揉むことしきり(笑)。
by chaotzu
| 2005-05-09 22:04
| 読書
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