2005年 05月 17日
◆1984年日本映画(白黒)、むかし観た記憶があるが、そのときの印象はなんちゅう暗い映画。 20年後に見直したら、こりゃすごいやで、たちまち人生のフェイバリットに昇格だ(笑)。 かつて目茶苦茶モーレツに働いたこともあったが、いまや口先だけの落伍兵に成り果てている。この映画の登場人物は見事なほど世間の役立たずばかりだ。きっとそこに共鳴したのだろう。 ◆ドサ健、上州虎、出目徳、女衒の達、そろいもそろってばくち常習者どころか、世間常識に照らせば性格破綻者である。いま風にいえば適応障害か。戦後の混乱期であるとはいえ、「お国の再建のため頑張ろう」なんて気持ちはさらさらない。まして「GHQ出ていけ」や「デモにいこう」なんかは慮外のはてだ。だいたいまともに働こうなんて気持ちははなから微塵もない。ヒロポン打ってまで麻雀する。虚無の極限。 努力といえるのはバクチの腕をみがくことだけだ。時間があればインチキ・プレー(積み込み)の練習に余念がない。いっそ清清しいというか(笑)。 ◆この映画の軸はもうひとつあって、実質の主人公であるドサ健(鹿賀丈史)とまゆみ(大竹しのぶ)の物語である。天涯孤独のまゆみは泥沼に咲いた百合の花みたいな女で、どこまでもドサ健についていく。父親の遺した家作の権利証まで健がバクチのカタに費ってしまう。あげくまゆみ本人が借金の質草にまでされてしまう。 それでもついていく 「だって、あたし健さんにたったひとつ残った持ち物じゃないの」 もう泣けてきますわ。 ◆決めゼリフのオン・パレード、和田誠は脚本も冴えている。 「俺たちゃこれで生きてるんだ。死ぬまでやるのさ。負けるってのは、つまり死ぬときのことなんだ。」 「手前っちは家つき食つき保険つきの一生を人生だと思っていやがるんだろう」 鹿賀丈史、とても四季出身にみえぬダボシャツ&腹巻ファションであるが、狂気じみた役柄のほうが絶対似合っている。ごたいそうな料理番組と引き換えに代表作を逸したような気がせぬでもない。
by chaotzu
| 2005-05-17 21:47
| 日本映画
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