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マイ・ラスト・ソング

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2005年 07月 23日

遠藤周作の松竹助監督試験

◆小説家の故遠藤周作、これまで慶応大学を卒業後、松竹の助監督試験を受けるも不合格と伝えられている。実際のところ、試験そのものは合格していたのであるが、健康上の理由(胸部疾患)で不採用を余儀なくされたのである。入社していれば、どんな映画をつくっていたことだろう。後年の創作活動を思えば、脚本家としても大を成していたことはまちがいない。
ちなみにこの時の助監督試験に合格したのは以下の8人。志願者1千数百人中の8人である。
松山善三、井上和男、斎藤武市、鈴木清太郎(清順)、中平康、有本正、生駒千里、今井雄五郎
なお、後年、松山善三がネスカフェCMで「チガいが分かる男」になったとき、遠藤周作がはげしく妬いたという話があるそうだ。もちろん松竹試験の因縁を踏まえてのセルフ・ギャグである。遠藤周作の松竹助監督試験_b0036803_233973.jpg
◆「思ひ出55話 松竹大船撮影所」 集英社新書 2004年8月刊
松竹大船撮影所の閉鎖後、神奈川新聞に連載された記事の単行本化、撮影所で働いていたひと55人の大船回想である。そのなかで西河克己監督が戦後第1回目の助監督公募試験の様子を述懐している。
フランス語の試験でたまたまカンニングの現場を目撃してしまうのである。
“カンニングをしたと思われる者がいるんですが、どう扱うべきでしょうか” 
大庭秀雄監督
“それなら教えた方を入れて教わった奴は落とすべきだよ”
吉村公三郎監督
“他人に教えるということは自分が落ちる確率を高めるかもしれないんだから、たいしたもんだ。入れるべきだよ”
この教えたほうの受験者が遠藤周作である。狐狸庵先生、なかなかやるじゃないですか。
◆遠藤周作の小説といえば、「沈黙」とか「海と毒薬」などいわゆる純文学系のシリアスものが取り上げられるが、実際は、青春小説やユーモア小説も数多く書いている。精神面の均衡を保つ意図があったのかもしれない。北杜夫もそんなところがある。
「彼の生き方」「わたしが・棄てた・女」「楽天大将」「協奏曲」……、もういまどき流行らない青春小説かもしれない。事実、文庫でも絶版が多い。もしも遠藤周作が監督になっておれば、これらの小説もカタチを変えて映画で提示されていたかもしれないなと思ったりする。
果たしていずれが良かったのだろうか。

by chaotzu | 2005-07-23 23:43 | 映画周辺


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