2005年 09月 21日
◆1975年東映映画、深作欣ニ監督の実録やくざ路線もここまでくると、壮大なコメディとしかみえない。いやそうでも思わないと腹がたつだけである。ケーサツによる暴力団取締りの実態であるが、実際はどちらも暴力装置にしかみえない。モデルにされた広島県警はカンカンだろうが、この映画に近いはなしはいくらでもあったのではないか。暴力団上がりの地方議員が行政を牛耳るはなしは、なにも「倉島市」に限ったことではない。なんせやくざ上がりの国会議員もいたぐらいである。しかし、日本人の民度なんてこの程度であって、いまもたいして変わっていないような気もする。 ◆冒頭から、菅原文太のマル暴刑事がハチャメチャぶり発揮である。チンピラをつかまえて “おまえら、ひっくくってブタ箱ほりこんでも税金のムダ遣いじゃ” “やるだけやって死んでこい、そのほうがソージが早いわい。はようカチコミに行かんかい” おまけに自分の飲食代まで巻き上げているから、もう大笑いである。 川谷拓三のチンピラを取調室でハダカにひんむいて殴るけるの「取調べ」、はじめ突っ張っていた拓ボンもしまいに「おおきにおおきにありがとさん」とペコペコしている。もうどっちがやくざか分からん(笑)。 ◆文太刑事と対立するのは県警の準キャリア?らしい梅宮辰夫、大卒31歳で警部補だから相当に早い出世である。「キミ」「ボク」とか大真面目に芝居する、申し訳ないがみているほうは吹きだしそうになる。この梅宮エリートに刑事部屋の下積みデカはみんな反発する。試験成績だけで子供みたいな若い奴が上司になる。マル暴の仕事は暴力団に近づかないと出来るもんか、きれいごとじゃないんだ。 公務員の世界では、警察官がいちばん内部告発が多いという、やはり内部統制上の問題というか欠陥があるのだろう。それはいまでもたいして変わっていない。現場をろくに知りもしない30代前半のキャリアが刑事部長で着任するような県警本部もある。若殿さまである。そりゃ下の者はアホらしくてやってられないだろう。官僚機構の大きな欠陥は入り口のペーパーテストだけで職業人としての将来をかなりの部分固めてしまうことであるが、ケーサツがいちばん極端ではないか。 ◆だれひとりとして善人がでてこない物語。ケーサツも暴力団もワルばっかり。文太刑事と松方弘樹のヤクザがまあ純情なくちかもしれないが、それでもベタベタに癒着しているのはさすがにまずすぎる。さらに梅宮エリートとなるともっと上のワルとつるんでいる。 組員の室田日出男が中学同級生の山城新伍とバッタリ邂逅する。 “おお懐かしいのう、いまなにしとるんじゃ” “ケーサツやがな” “オマエがケーサツかいな、もう世の中狂っとるのう” よく云うよ、ホンマ(爆笑) ◆さえないマル暴デカの汐路章、口をひらけば、 “暴力団よりアカの連中のほうがタチが悪い” “アカの連中はひっくくって死刑にせなアカン” ばっかり云っている。思想刑事の残党もすっかりもてあまし者である。 田中邦衛がオカマやくざで登場、組長のムショ時代の「愛人」だったらしい。軟体生物みたいなけったいな芝居をみせる。「北の国から」以前の不遇時代、いろいろなんでも演じていたんだな。その他「こんにちは赤ちゃん」の唄をバックにした殺しのシーンとか、梅辰兄いが音頭とりするラジオ体操など名シーンがいっぱいで、深作監督実録路線のまさに集大成である。 そしてラストはかなりやるせない。
by chaotzu
| 2005-09-21 22:01
| 日本映画
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