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マイ・ラスト・ソング

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2005年 12月 27日

被害者を捜せ!

◆アメリカの女流ミステリ作家パット・マガーの処女作「被害者を捜せ!」、もうだいぶ昔の古い推理小説であるが、発想がなによりユニークだった。
第二次大戦末期、アリューシャン列島駐屯の海兵隊員が故郷からの慰問品を包んでいた地元紙をみると、以前に勤務していたなんとか協会の会長が殺人を自白している。被害者はどうも自分の知人らしいが、名前のところがちょうどちぎれている、ということで、暇にまかせてあれこれ推理していく。ふつうミステリといえば、犯人捜しであるが、逆に被害者のほうを捜すという、意表をついた設定である。
まあパズル趣向の小説だから許せるけど、現実にはちょっとありえないよなあというはなしである。ところが小説が書かれてから60年ほど経った後、それが現実になりかけている。

◆本日閣議決定された「犯罪被害者等基本計画」、マスコミによれば、事件や事故の被害者を実名・匿名のどちらで発表するか、その判断を警察に委ねるそうだ。
内閣府が公表した同計画をちょいとのぞいてみる。該当は以下のくだりらしい。
「警察による被害者の実名発表、匿名発表については、犯罪被害者等の匿名発表を望む意見と、マスコミによる報道の自由、国民の知る権利を理由とする実名発表に
対する要望を踏まえ、プライバシーの保護、発表することの公益性等の事情を総合的勘案しつつ、個別具体的な案件ごとに適切な発表内容となるよう配慮していく。【警察庁】」
なるほど、警察が「適切に配慮していく」ということか。この便利な役所用語をホンヤクすれば「警察の好きにさせてもらう」ということである。

◆ふつうの事件・事故ならば、それでいいんだろう。警察がインチキ発表をしても被害者側から異議申立てができる。だけど、ほんとに「被害者を捜せ」状態になったらどうなるか。もっとはっきり云うと、被害者が不在の事件すなわち警察のでっちあげである。そんなことありっこないよと思われる向きもあるかもしれないが、桶川ストーカー事件のように、警察が目茶苦茶なデタラメやった実例もあるし、最近の「プチ逮捕」の横行などみると、とうてい警察を100%信用することはできない。とくに公安がらみの事件ではなおさらである。匿名発表をたてにして「被害者」を隠しとおせば、事件なんかいくらでも「偽装」も出来る。そうなれば恣意的な拘留が好き放題に出来るわけで、それこそ昔の特高警察が復活したようなもんである。
もっとも、マスコミもさっぱり信用されていない、いまになって被害者本位を云い立てているが、これまでの報道スタンスがあまりに無責任すぎたのだ。
しかし、嘆いていても仕方ない、いよいよ自分の身は自分が守るしかない、そんな時代なんだとハラ括るしかないか。息苦しい社会がじわりじわり忍び寄ってくる。

by chaotzu | 2005-12-27 23:10 | 時事


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